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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第三部
49/51

リセット

 

 空飛ぶ白い流線形の乗り物らしき物体は案茂とシーラ、そしてトウの頭上20メートル近くまで降りてきた。物体は遠くから見るよりもずっと大きく、まるでジャンボジェットを彷彿させる。案茂とシーラが口をあんぐりさせていると、トウが手に浮かべた宝玉を空の物体に向けて掲げた。宝玉は物体に吸い込まれるように浮かび上がり、やがて消えていった。そしてトウもまたゆっくりと浮かび上がる。



「ではお二人さん、さらばじゃ」


「えっ??」


「ちょ、ちょっと待てジジイ!!」



 我に返ったシーラが浮かび上がろうとするトウの足を掴んだ。シーラの行動に驚いたトウが慌てて着地する。



「何をする?もうワシの目的は…果たし…いや、肝心なものを忘れておった」



 トウは何かを思い出したのか、時が止まって固まっている那夜朗と直哉の元へと歩を進めた。そして二人の前に着いて手をかざすと、二人の手元から『覇羅素面刀ハラスメント』と『法保化鏡ホウホケキョウ』が飛び出してきた。二つの神器はトウの手に収まると、先の宝玉と同じように空の物体へと吸い込まれていく。



「コイツらを持っていくのを忘れておった。仁沢賀瀬家に与えたものは全て回収しておかねばならぬ」


「…待ってください。まだ納得してません」


「何をだの?」


「何から何までだ。これで解決しようと思ったら大間違いだぞジジイ!!」



 シーラがトウに銃口を向けると、トウはやれやれといった感じで右手の人差し指を上空へと向けた。するとシーラの両手がトウの指した方向に動く。これにはシーラも驚愕する。



「な、なに!?何をする!」


「すまんの、お嬢さん。無用な争いは避けたい。一つだけ教えておく。先の倉庫でワシが銃撃されたとき、お前さんが無意識で割って入ったのはワシが操ったからじゃ」


「な!?…なるほど、道理でおかしいと思った。私も何であんな行動に出たのか訳が分からなかったからな」


「それにお前さんは…仁沢賀瀬家の力の影響を受けてなかったからの。他の奴等と違い、生身だったから操れる余地があって助かった。お前さんは…どうやら他に目的があって此処に来たようだからの」


「…何故分かった」


「一瞬だが、心を読んだからの」



 トウの言葉にシーラが銃口を下ろす。その表情は驚きとも諦めとも付かない微妙なものだ。案茂はシーラの目的について首を捻る。



「ジジイの言う通りだ。本来の目的はボスを…T・レックスを監視する為に別組織から遣わされたスパイだ」


「へ!?じゃ、じゃあ…最初からT・レックスを裏切るつもりだったってことか…?」


「合衆国は奴の情報を鵜呑みにしてた訳じゃない。何かしらの裏があると推察して私をスパイとして潜り込ませた。人間兵器たちを制御する名目でな。奴が暴走するのであれば迷わず排除する。これが私の本当の任務だ」



 シーラの語る真実に案茂は固まる。だが、シーラは案茂を安心させようと手を握った。



「安心しろ、アンモナイト。お前を消すつもりはない。もう…な」


「…もう、ってことは途中まで消すつもりだったんだ」


「過ぎたことだ」



 シーラの告白に案茂はガックシする。するとトウの咳払いが聞こえてきた。



「で、他にあるかの?」


「父と母の「死」を偽装したのも院長ですか?」


「そういうことになるかの。怒らないで聞いてほしいが、お前さんの父親を消すように命じたのはゼンじゃ。ゼンが毒を盛ってワシが死亡診断することで毒殺を揉み消す予定じゃったが、全ての毒を無効にする『法保化鏡』を奴が持っておった」


「じゃあ、父…いやT・レックスが生きていたのはその鏡のせいだったということですか…」


「うむ。さすがのワシもまさか生きているとは思わなかったがの。死体として処理した後に秘密裏に逃走したようで海外に渡って戸籍まで変えていたみたいだの」


「大した行動力だな。ボスは」



 シーラが皮肉混じりに笑う。トウは頭を掻く仕草をして案茂の手を握った。そして手の中に何かを入れた。



「???何ですコレ?」


「せめての罪滅ぼしよ。お主らの人生を滅茶苦茶にしてしまったからの」



 案茂が手を開くと白い握り手の上部に赤いボタンの付いたシンプルなスイッチだった。



「本来であれば全てを無に帰して仁沢賀瀬家に『秘宝』が渡る前に戻すつもりじゃったが、気が変わった。お主らに委ねるとしよう」


「へ?!」


「お主らの任意でそのボタンを押すと良い。そうすればお主らの願った時に巻き戻る」


「なっ…なんつーものを寄越すんだ?ジジイ!」


「ワシらの船が消えると同時に時は動き出す。それまでに決めておいてくれ」


「ちょ、ちょっとまだ話は………」



 トウは二人がまた言おうとするのを遮って、再び上空の物体へと浮かび上がっていく。シーラは銃口を向けるが、敢えて案茂はシーラを止めた。



「アンモナイト…?」


「追撃しなくていい、俺に考えがあるんだ。ごく僅かな時間しかないけどいいかな?」


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