真実とは
「ところでお主ら『秘宝』について何を知っとるかの」
「えーと確か他人を洗脳する力を持っていると尚児さんから聞いてます。それがあれば世界を制することだって出来るって。だからそれが元で仁沢賀瀬家では争いが絶えないとか」
「ふむ、その通り。半分正解半分ハズレといったことだの」
「ジジイ、どういう意味だ?」
トウからの言葉に案茂とシーラは首を傾げる。トウは『秘宝』の破片を拾い上げると、それをじっと見つめた。
「他人を洗脳する力があるのは本当じゃ。だがこの力を発揮できるのはこの街の中だけ。世界そのものを支配することなど出来る訳がない。仁沢賀瀬家の奴等はどうも勘違いして吹聴してたようだの」
「この街の中だけ…?」
「昔話をするといったの。まずはワシのことから話すとしよう。ある時は東総合病院の院長、ある時は旗目岩九人衆の一人である闇の薬師『トウ』、そしてその実態は…」
「ゴクリ…」
案茂とシーラが同時に生唾を飲み込む。するとトウの体が突如光り出した。目も開けられないくらい眩しさを放つとトウの体はみるみる間に小さくなり、ついには黄金色に輝く球体に変わった。そして球体は再び人の形になり、また大きくなった。人の形とはいったものの手足は異様に長く、体のフォルムは非常に細い。極めつけに顔はノッペラボウのようにツルツルだった。
案茂とシーラは目の前に起きていることが信じられず呆然としている。果たしてこれはやはり夢なのだろうか?言葉を失っている二人に対し、先程までトウだった物体が語り掛けてきた。
「どうじゃ?驚いたかの?」
ノッペラボウの為、表情は全く分からないがとりあえず会話は出来るみたいである。案茂とシーラは無言でコクコクと頷いた。二人の様子を見て安堵したのかトウは話を続けることにした。
「ワシはご覧の通り人間ではない。お主らの言葉で言うとだな…そうだな。宇宙人といえば分かりやすいかの」
「う、う、う、宇宙人…!??」
案茂とシーラが同時に頭を抱える。この短時間でどれだけ衝撃的な情報が飛び出してくるのか。もう此処まで来ると作り話だとしても無茶苦茶である。
「…もういいです。此処まで無茶苦茶な設定ないです。炎上くらいそうなくらい盛り過ぎです」
「これこれ、設定ではない。本当に本当じゃ。そもそも『秘宝』はワシが仁沢賀瀬家に渡したもの。お主らの言葉で言うとだな…そうだな。オーパーツといえば分かりやすいかの」
「お、お、オーパーツ…?」
開いた口が塞がらない案茂とシーラにトウはこれまでの経緯を改めて説明する。全てはトウが遥か昔、地球にやって来たところから始まった。
「本当に偶然の出来事だった。宇宙船の不具合で不時着したのが正にこの土地じゃったのよ。そこでこれまた偶然遭遇したのが仁沢賀瀬家の先祖よ」
宇宙船の不時着を目撃されたことで自身の存在が周囲に発覚するのを恐れたトウは、そこで仁沢賀瀬家の先祖とある密約を交わしたのだという。
「密約?」
「いわゆる不可侵条約というやつだの。互いに干渉しない代わりにワシは奴等にあるものを渡した。それが…」
「先の『秘宝』というやつか」
「左様。ある種の口止め料ともいえるがの」
「でもそこからどうしてこんな複雑な事態になったんですか?」
「ふむ…そこが今回の騒動の肝よ」
トウは溜め息のようなものを付いた。




