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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第三部
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時の狭間で

「死ぬな、アンモナイト!!」



 朧気ながら案茂の脳裏にシーラの叫び声が聞こえてきた。これは夢か幻なのだろうか。だが確かにシーラの必死な叫びと涙声が耳に届いてくる。那夜朗の一撃を受けて死んだはずだが、何となく感覚は残っているみたいだった。もし体を動かせるなら…

 案茂は恐る恐る目を開けてみた。視界に何やら黒く大きな影が入ってくる。すると影から水のようなものが落ちてきて案茂に顔に当たった。少しずつではあるが、影の詳細が浮かび上がってきた。



「アンモナイト……いやだ、死ぬなんて…」



 はっきり聞こえる声と共に大粒の涙を溢して泣きじゃくる女性の表情が分かる。悲しみに満ちたその顔には確かに覚えがあった。



「シーラ…」



 案茂は声に出して女性の名前を呼んでみた。案茂の声を聞いたシーラはハッとして案茂の頬を叩く。悲しみから驚きと歓喜にシーラの表情が変わっている。泣きながら笑っているような何ともいえない表情だ。

 案茂が再び声を出そうとすると、それを塞ぐようにシーラが案茂に口付けをした。それは優しくて甘い。まるで天にも昇るような、そんな感じだ。やはりこれは夢なのだろうか。



「…バカヤロー、脅かしやがって」



 シーラは悪態をつきながらも安堵したように今度は案茂を静かに抱き締めた。案茂はシーラの背中に手を回し優しく撫でる。が次の瞬間、衝撃的な光景が案茂の視界に入ってきた。



「何だ?これは…」



 案茂の言葉にシーラも我に返って周囲を見渡した。シーラもまた案茂と同じように固まる。



「一体どうなっている?皆の動きが…」


「と、止まっている??…まるで映画を一時停止したかのような感じだ」



 案茂とシーラの言うように二人を取り巻く人間たちの動きが完全に止まっていた。周りの人間たちだけではない。鳥も草木も空気も音も光も、そして時までもが全て止まっている。



「那夜朗もT・レックスもゼンもピクリとも動かない…まだ夢を見てるのか?」


「アンモナイト、殴ろうか?」


「いや…さっき頬を叩かれたとき確かに痛かった。ってことは…やはり現実なのか?」


「アンモナイト、何かしたのか?」


「いや、何も思い当たる節はないよ」



 案茂が地面に手を付いたとき、黄金色に光る破片のようなものが当たった。案茂は破片を訝しげに手に取る。



「何だ、これ?…そう言えば『秘宝』は?」


「あっ!!ま、まさか…」


「シーラ?」


「アンモナイト…それだ。それがナオジの言っていたキンタマだ」


「はい?」



 黄金色の破片を指差したシーラが震えている。怪訝な表情を浮かべていた案茂だが、すぐにシーラの言わんとすることを理解した。そして理解したと同時に冷や汗が額から流れ出した。



「『秘宝』が砕けてる…?!えっ…どういうことなんだ?」


「たぶんナヤロウの攻撃を受けたときだと思う…」


「そんな、どうしたら…」


「ようやく呪縛から解放されるときが来たようだの」



 案茂がしどろもどろになっていると二人の後ろから老人の声が聞こえてきた。慌てて振り返るとそこに立っていたのは東総合病院の院長だった。シーラは急いで銃口を院長へと向ける。



「貴様、何しに来た?それにどうして動けるんだ?」


「院長…いや確か貴方も旗目岩九人衆の一人でしたよね?」


「何!!」



 案茂の発言を受けてシーラが拳銃の引き金に指を掛ける。すると院長は両手を挙げて静かに微笑んだ。どうやら争う意志はないらしい。



「まあ、落ち着いてくれ。確かにお主の言う通りワシは旗目岩九人衆の一人、闇の薬師『トウ』じゃ。今更お主らと戦う気はない」


「じゃあ何の用だ!?」


「落ち着くんだシーラ。この人は何かあって此処に来たんだ。そうでしょう?」


「…ふむ、その通り。この『秘宝』について色々と誤解があるようだからの。お主らにそれを説明しなくてはならん」


「それよりもまず教えろ。貴様は何者だ?旗目岩九人衆とか言っていたが、何か別の目的があるんじゃないのか?」



 シーラの質問にトウは頭を掻いた。どこから説明しようか考えあぐねているようだ。そして深呼吸すると、二人の前にしゃがんだ。



「ちと長くなるがいいかね?ま、時も止まっているから慌てる必要もあるまい」


「納得出来るなら構いません」


「よろしい。なーに、ほんの昔話よ」



 トウが二人にゆっくりと語り出した。

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