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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第三部
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『秘宝』の行方・2

 尚児から『秘宝』を奪取した尚葉と尚子が車を飛ばして急いだ先は那夜朗とT・レックスが戦っているピザ・トラブルだった。店の前に着いたとき辺りは仁沢賀瀬家が雇ったゴロツキやヤクザ、取り巻き、そしてT・レックスの用意した部下たちが積み重なるように倒れていた。まさに死屍累々の地獄絵図であり、尚葉でさえも目を背けたくなるような有様だ。尚葉は尚子の視界を塞ぐよう取り巻きに命令すると『秘宝』を手に那夜朗の元へと駆け寄ろうとする。



「ママン、前が見えないんだけど」


「大丈夫、気にしなくていいの。貴女は『秘宝』をしっかり持っていなさい」



 尚葉は尚子を諭しつつ、戦闘のとばっちりを受けないように慎重に進む。すると路上のど真ん中で一際不気味なオーラを放つ二つの影が見えてきた。二つの影は激しくぶつかり合い、戦いのオーラに巻き込まれた周りの人影がゴミのように吹っ飛んでいく姿が見える。まだ那夜朗とT・レックスの戦いは続いていたのだった。

 尚葉はこれ幸いとニヤリとほくそ笑む。尚葉は尚子から『秘宝』を取り上げると、天へ掲げて叫んだ。



「二人共、戦いはおやめ!!此処にアンタたちの望みのものはあるわ!」



 尚葉の言葉を受けた那夜朗とT・レックスは動きを止めて同時に尚葉の方を向いた。二人共上半身がはだけ、汗まみれで息を切らしている。尚葉の持つ『秘宝』を見た途端、二人の目の色が変わった。



「尚葉様…それは…当主の証!」


「ほう…わざわざ持ってきてくれたのか。ご苦労なことだ」



 二人の様子を見た尚葉はT・レックスの方を向くと不気味に笑った。警戒してかT・レックスの表情が歪む。



「全く驚いたわよ。まさかアンタが生きていたとはね。亡霊と見間違えて気絶したわ」


「…?尚葉様…この男を知っているのですか」



 那夜朗が怪訝な表情を見せると尚葉はT・レックスの法保化鏡ホウホケキョウを指差した。



「久しぶりだね直哉。何年も前に死んだとか言ってたけど下手くそな嘘を付いたもんね。でも私の目はごまかせないよ!何で今更この街に舞い戻った!?」


「な!?直哉というのは…」


仁沢賀瀬直哉ひとさわがせなおや。死んだはずの私の弟よ」


「何ですって!?仁沢賀瀬家の者ですと?」


「…フン、人違いだ。何を言うかと思えば下らん」



 ドヤ顔を見せる尚葉に対してT・レックスは吐き捨てるように呟いた。しかし、尚葉は更に詰め寄る。



「アンタの持つ『法保化鏡ホウホケキョウ』は仁沢賀瀬家の門外不出の秘宝の一つだ。何十年も前から行方不明だったけど思い出したわ。直哉…アンタが持ち出していたことをね」


「薄いな…証拠として薄すぎる。根拠もないことをベラベラ得意気に話さないことだな、若作りの厚化粧おばあちゃん」


「お、おば…」



 おばあちゃん呼ばわりされたことに尚葉の表情が一変した。顔がみるみる間に真っ赤になるが、尚子に背中を擦ってもらって何とか堪らえている。しかし拳がワナワナ震えている辺り限界のようだ。

 尚葉の様子を見た那夜朗が急いで『秘宝』を渡すように尚子に合図を送る。尚子は尚葉から『秘宝』を取ろうとすると尚葉が尚子を突き飛ばした。そして『秘宝』を再び天に掲げると何やら呪文を唱え始める。これを見た那夜朗の顔色が変わった。



「まさか尚葉様…私を当主に据えるのではなかったのか??」


「…悪いね那夜朗…これで仁沢賀瀬家の権力も当主の座も、全て私のものよ…」


「…させるか!」



 那夜朗とT・レックスが同時に尚葉へ襲い掛かった。すると尚葉の持つ『秘宝』から黄金色のオーラが吹き出し、二人を弾き飛ばす。尚葉は恍惚の表情を浮かべて『秘宝』を更に天へと伸ばそうとした。黄金色のオーラが光の柱となり天を貫くと街全体が雲一つない晴天に変わった。



「くっ…おのれ、尚葉…!!」



 尚葉の心変わりに那夜朗の口調が変わった。尚葉の変わり様に恐れ慄いていた尚子が那夜朗の姿を見て駆け寄る。



「ママン怖いーー!!ナヤチャン何とかして!!」


「どけ」


「へ?な、なーにーぃ??怖い顔して…」


「どけというのが聞こえんのか?このブスが!!」


「…………」


「婚約者だと??笑わせるな!誰がお前みたいな気持ち悪い奴と結婚したいと思うか!?鏡を見て出直してこいブス!」


「……………ああん!!?何だとこらああぁ!!半人前の分際で生意気なああ!!」



 今度は那夜朗と尚子の間で一悶着が始まろうとしている。一方でT・レックスは冷静に光り輝く尚葉を見て自身の「法保化鏡ホウホケキョウ」を向けた。すると鏡によって尚葉から生じたオーラが一気に吸い込まれていく。オーラを全て吸われたことに恍惚の表情を見せていた尚葉も一瞬にして我に返った。



「!?直哉?アンタ何した?」


「…ソイツは私のものだ。痛い目に遭いたくなければ大人しく渡してもらおう」


「フン、誰が渡すもんかい!」



 尚葉が再びオーラを出そうとしたとき、尚葉の背中にクナイが突き刺さった。突然のことに動揺した尚葉が振り返るとそこには那夜朗の部下である金野が立っていた。



「あ、アンタ…何を!?」


「これで仁沢賀瀬家の当主の座は那夜朗様のもの。貴女には此処で消えてもらいます」



 そういうと金野はトドメとばかりに尚葉の腹めがけてクナイを突き刺す。その様子を見て愕然とする尚子とは対照的に那夜朗がほくそ笑んだ。



「さすがだ、金野。いや旗目岩九人衆の一人、朱のクナイの「リン」」



 那夜朗がそういうと金野のことリンがコクリと頷いた。

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