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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第三部
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『秘宝』の行方

「亡霊だと?一体何を……まさか、まさかだが、亡霊って奴か??奴のことか?!」



 尚葉の言葉に一瞬にして尚児の顔色が変わる。尚葉は黙って頷いた。



「…そうよ、奴よ。奴が帰ってきたのよ」


「奴が…そんな、本当に奴なのか!?」


「間違いないわ、奴よ。この目で見たもの」


「そんな…奴が帰ってきただと?」



 尚葉は興奮気味に尚児の服を掴んで訴える。尚子はそんな尚葉の傍らにいて背中を擦っていた。二人の様子を見た尚児は少し考え込むと、ポツリと呟いた。



「…ところで奴って誰のことだ?」



 尚児の発言に尚葉と尚子はズッコケそうになる。そして尚葉は尚児の胸倉を掴むとその頬に思い切りビンタした。



「ふざけるな!クソ兄貴!!人が真面目に話しているときに下らんボケをかますんじゃない!」


「いきなり何をするか!!そっちこそ意味の分からないことばかり並べ立てるじゃない!もう少し分かるように言え!ドゥーユーアンダスタン???ドゥーユースピークジャパニーズ???」


「キィー!!ムカつく!!実の兄貴じゃなきゃとっくにブッ殺してやったのにぃ!」


「ママン、落ち着いてぇ。伯父様もぉー、落ち着いて。ね?」



 慌てて尚子が喚く二人を仲裁しようと間に入る。若干気持ち悪い仲裁だが、ある程度気を落ち着かせたのか尚葉は咳払いすると、尚児をキッと睨み付けた。



「耳かっぽじって聞きなさいよ。直哉よ!な・お・や!!アイツ生きていたのよ!とっくの昔に死んだとかいってたけど、偽装してたのよ!」


「………はあ??」



 尚葉の突拍子のない発言に尚児の頭上から特大のクエスチョンマークが浮かぶ。そして傍から見ても明らかに尚葉を小馬鹿にしたような表情を浮かべると尚児は盛大に溜め息を付いた。



「……尚葉よ、ついにボケたか。可哀想にな…お前のことは大嫌いだが、腐ってもたった一人の妹。例えボケ老人になったとしても最期は骨くらい拾ってやるよ」


「キィー!!やっぱりムカつく!!お前に言われる筋合いはない!!」


「なら証拠はあるのか?直哉が生きているという確かな証拠は?ええ?どうした?ないんだろぉ??」



 尚児がドヤ顔で尚葉を牽制する。尚葉はイラつきながらも尚児に聞こえるようにポツリと呟いた。



「ホウホケキョウ…」


「…ええ、あんだってぇえ?」


法保化鏡ホウホケキョウ…この期に及んで忘れたとはいわせないわよ?」


「…何故だ、どうしてだ。そいつは仁沢賀瀬家よりとうの昔に失われたはずの秘宝ではないか?で、ではお前の見た直哉という奴はそれを持っていたというのか?!」


「間違いないわ。今那夜朗と戦っているけど、本物の法保化鏡ホウホケキョウを持っていたわ」


「し、しかし仁沢賀瀬家の者でなければ力を発揮できないはず………いやまさかその力を行使できていたのか?」



 尚児は信じられないような表情を浮かべて尚葉に詰め寄る。尚葉はその言葉を肯定するように頷いた。尚児は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。

 すると尚児の懐から黄金色の宝玉が転がり落ちた。宝玉を見た尚葉と尚子はギョッとして目を見開く。



「な、尚児兄さん…どうして『秘宝』が此処に??」


「ん?……あっ、しまった!!奴らを牽制しようとして持ち出したんだが、追われている最中なんだった!」



 尚児は慌てて宝玉を取ろうと手を伸ばしたが、それより先に尚子が宝玉を掴んだ。それを見た尚葉は不気味に笑うと尚子に向かって急いで門の前に停めている車へ走るよう指を差す。尚子は頷くとダッシュで車へと急いでいく。



「な、尚葉!?何のつもりだ?」


「ありがとう兄さん。アンタが驚天動地の大間抜けで助かったわ。苦労せずに『秘宝』が手に入れられたんだもの。これから儀式を敢行させてもらうわ」


「何!?そうはさせるか!待て!止まれクソガキ!!」



 尚児は立ち上がって尚子を追い掛けようとしたが、尚葉が足を引っ掛けたせいで盛大に転んだ。尚葉は尚児にアッカンベーをすると尚子の後を追って車へと乗り込む。



「クソ、待て!絶対に許さんぞ!」



 転んだ尚児が再び立とうとしたとき、背後から案茂とシーラ、そして『仲間』たち。更にはゼンとザイ、そして彼等に操られた黒服たちが一斉に押し寄せ、次々と尚児を踏み潰していった。



「何か踏んだか?」


「さあ?それより『秘宝』はどこだ!?」


「!?あの車だ!急いで追え!」


「ザイ、見失ってはなりません。必ず捕らえなさい!」


「はっ!」



 全員が『秘宝』を持った尚葉と尚子の車を追うべく仁沢賀瀬家の屋敷を飛び出していく。喧騒の果てに残ったのは背中が足跡だらけになった尚児だけだった。



「ち、ちくしょう…俺は…俺は仁沢賀瀬家の当主なんだぞぉ……この街の誰よりも偉いんだぞぉ…何だよ…何なんだよおおおお!!!」



 完全に置いてけぼりを食った尚児は一人ひっくり返って泣き喚いていた。

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