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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第二部
32/51

尚児との再会

 座敷牢の中は意外と広く作られていた。対照的に内装は至ってシンプルで簡素な机と粗末なカーペットが敷かれている以外は何もなかった。小さい照明があるが、周りは壁に囲まれており昼間でも暗い。特に部屋の奥の方まで照明が届いていないせいか、目を凝らしてやっと隅っこの様子が見えるくらいだ。



「さて旦那様は…」



 ザイが座敷牢の中を見回す。確かに此処にいるはずなのだが、尚児の姿が見当たらない。ザイが格子の近くまで来て、じっと部屋の奥を睨み付ける。



「旦那様!!」



 ザイが大声で尚児を呼ぶ。案茂もレツに引きずられるように座敷牢の中へと進んだ。すると牢の奥の方から苦しそうに呻く老人の声が聞こえてきた。その声はよく耳を傾けないと分からないくらいか細く、今にも死にそうな印象を受ける。



「…誰、だ?…さっきから大声を出すのは…?」



 牢の隅からぼんやりと一人の老人が浮かび上がった。薄暗い照明のせいもあり、その姿はまるで亡霊のようである。あまりの不気味さに案茂は思わず悲鳴を上げそうになった。老人が格子の前まで歩み寄るのを確認すると、ザイが格子越しから老人の手を握って顔を近づけた。その目からは涙が浮かんでいる。



「旦那様、お久しぶりです」


「?どなたかな?私はお前さんのような者は知らんが…」



 老人の顔が薄暗い照明に照らされてハッキリと見える。老人は確かに尚児だった。しかし案茂たちと別れてから僅かな時間しか経っていないにも関わらず、尚児のやつれ具合はひどく一気に10年は年を取ったように見えた。おまけに目の焦点は合っておらず、案茂の顔を見ても反応がない。何処と無く記憶障害も起こしているようである。



「お忘れですか、旦那様。かつてこの屋敷で執事を勤めておりました財前(ざいぜん)烈堂(れつどう)です。貴方様をお助けに参りました。共に尚葉様から仁沢賀瀬家の力を取り戻しましょう」


「…はて?ざいぜん…?れつどう…?全く覚えがない。それに尚葉とは誰だ??そこにいる若造は誰だ??全く思い出せない」



 ザイに問われても尚児は上の空だった。認知症でも患ってしまったような手応えのなさだ。ザイが何度も呼び掛けても尚児の返答は的を得ない。ザイは話すのを諦めたのか、無言で座敷牢の格子を開けた。尚児はゆっくりと座敷牢の中から出てくる。



「どなたかは知らんが、助かった。礼だけは言おう」


「…旦那様、本当に思い出せないのですか?余程尚葉様に酷い目に合わされたのですか?」


「?そもそも私が何者なのかも分からん。此処は一体何処なんだ?私は何で此処に居るんだ?」



 尚児の発言にザイは深い溜め息をつく。そしてレツに目配せすると、レツは目を閉じて静かに頷いた。ザイが尚児に向き直って、深呼吸をした。



「旦那様、御免!!」



 そういうとザイが尚児の顔面を思い切り右の拳で殴り飛ばした。尚児の体が格子に叩きつけられる。更に追い討ちを掛けるように胴に拳を連打する。ザイの拳を受けて尚児の体が激しく揺れ動いた。尚児が前のめりになり、口から血と痰を吐く。それを見たザイがトドメに尚児の後頭部に右の拳を打ち据えた。尚児が頭を押さえて、床に倒れて七転八倒する。


 その様子を案茂は唖然として見ていたが、レツの方は目を背けている。どうも見てられなかったらしい。ザイが痛みを取るため右手を振っていると、悶絶していた尚児がガバッと起き上がり、鬼の形相でザイの胸倉を掴んだ。



「き、さ、まああああ!!!この私を!仁沢賀瀬当主の仁沢賀瀬尚児(ひとさわがせなおじ)と知っての狼藉か!この私を殴るだとおおおおおお!!なんと心得るか!無礼者がああああああ!!!」



 尚児の激昂ぶりを見たザイはニヤリと笑い、尚児の手を払い除けるとその場に跪いた。

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