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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第一部
3/51

頼みたいこと

「早速だが案茂君。君を呼んだのは他でもない。君に頼みたいことがあるのだよ」


「はあ…しかし唐突過ぎやしませんか?あくまでも僕は偶然貴方を助けただけですし、そもそもお互いをよく知りません。なのにいきなり頼み事なんて…」



 案茂と尚児はソファに向かい合うように座りながら話を進める。案茂の懸念に対して尚児は意に返すことなく、話を続ける。



「そのことなら全く問題ない。君のことは我々の方でとっくに調べさせてもらった」


「…はい?」



 案茂の頭に再びクエスチョンマークが浮かぶ。すると尚児は自分の後ろに控えている黒服を一人呼んで、分厚い資料を受け取ると目の前のテーブルに並べた。



案茂無人(あんもないと)君。今年23歳のピザ屋で配達のアルバイトしているフリーター。身長は175cm、体重は65kg。視力はやや弱めでコンタクトレンズを着用。幼少期に父親を、高校時代に母親をそれぞれ病気で亡くし、現在は天涯孤独の身。高校卒業後は街のはずれにあるアパートで一人暮らし。高校時代は常に学年トップの成績を修め、部活動もボクシング部に在籍。此方も優秀な成績だ。文武両道な君が経済的な理由で進学できないことに対して先生方も心を痛めていたそうだが、君は自分の意思で今の道を選んだ」


「………ど、ど、ど、どうしてそれを…」


「我々の情報収集力を甘く見ないでもらいたい。本気になればこんなこと朝飯前だよ」



 案茂の個人情報をペラペラ述べた尚児はどや顔を見せた。対して案茂は脂汗を流して体を震わせている。案茂の様子を見て尚児はじっと顔を見つめた。



「ちなみにこれまで彼女は居たことがない。どうやら君は童貞のようだね」


「余計なお世話ですよ!」


「とにかく此方は君のことを熟知しているだろう?」


「いや…完全に個人情報保護法に違反してるじゃないですか!アウトな奴ですよ、これ」



 案茂は深い溜め息を付くと不快な表情で尚児を睨み付ける。そして立ち上がるとドアの方向へ足を向けた。尚児は首を傾げて案茂を呼び止める。



「何処へいく気かね?」


「決まってるでしょう。帰るんですよ。人の個人情報を勝手に調べてツラツラ披露するのが目的なら気持ち悪くて仕方ないですからね」


「待ちたまえ、案茂君。本題はこれからだ」



 尚児はそういうと指を弾いて鳴らした。すると黒服たちが一斉に案茂を取り囲む。完全に退路を絶たれてしまい、案茂は冷や汗を流した。



「ぼ、僕をどうする気ですか?まさか…ヤバイことをしようとか、そういうことじゃないでしょうね?」


「君に頼みたいことがあるといっただろ?」


「頼みたいこと…」


「君にこの仁沢賀瀬家を継いでもらいたい」


「………はああああ!!!??」



 唐突な尚児の頼みに対して案茂の間抜けな声が部屋中に響いた。

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