人騒がせvs傍迷惑 その2
旗目岩九人衆として現れた神店長らの唐突な口上に一同呆気に取られる中、店の中にいた案茂はシーラたちと一緒にいたところへ襲い掛かってきた忍びと同じ一味であることに気づいた。まさか身近な人間たちにこんな裏の顔があったとは…。案茂は理解が追い付かず、頭を抱えるようにしてその場にしゃがみこんだ。
そして案茂はもう一つのことに気づいた。神店長らの不審な行動、何故此処に来る前に東総合病院へ寄ったのか。それは彼処に怪我をしていた院長もまた旗目岩九人衆だったからに違いない。そしてその正体は…。
「「トウ」の容体はどうだ?」
「「リン」からの情報によると一命は取り留めたようだが、かなり重傷だ。あと仁沢賀瀬以外の敵組織もまた本格的に動き出したようだ」
「ふむ…此処は「ジン」たちに任せて我々は儀式の準備を急ぐとしよう。「レツ」頼む」
「御意」
目まぐるしい出来事に混乱する案茂を尻目に店の中に残っていた赤い仮面と青い仮面の二人が不穏な会話を続けていた。やがて会話を終えると赤い仮面の人物が案茂の近くに寄ると右腕から蔦のようなものを生やして案茂に差し向ける。
案茂は驚いて声を挙げようとしたが、あっという間に蔦によって口を塞がれ、簀巻きのようにぐるぐる巻きにされてしまった。
身動きできない案茂を軽々と赤い仮面は抱えあげると、青い仮面と共に『ピザ・トラブル』の裏口から店を後にした。
「…我は旗目岩九人衆の一人、深緑の植物使いの「レツ」。大人しくしていれば悪いようにはしない、案茂無人」
「レツ」は独り言のように呟いた。「レツ」らが『ピザ・トラブル』を秘密裏に脱出した後も、店の外では未だにどうしていいのか分からない空気が漂っている。しかしながら尚子のこれ以上にない的確なツッコミにようやく那夜朗が我に返った。
「やれ」
那夜朗は手を挙げて一斉攻撃を指示する。那夜朗の背後にいた全員が武器を三人へ向けた。それを見た「シャ」がニヤリと笑う。
「無駄だ。無駄無駄無駄無駄無駄!我ら旗目岩九人衆にはそんな武器など通用せん!!」
「いい年したオッサンの変なコスプレなんて痛いよぉーん♪気持ちわ・る・い♪」
尚子が三人を煽るように那夜朗にすり寄った。那夜朗は顔をしかめながら三人を睨み付ける。
「ふん!気持ち悪いのはどちらだ。ワガママボディで厚化粧の若作りの整形崩れの年増の行き遅れが」
「…………な、……なん、……何だっとおおおおおおおお!!!? ?」
「カイ」の返しに尚子がこれまでの態度を急変させて激昂した。どうやら地雷ワードを並べ立てられたらしい。
「ふん、その程度の言葉でキレるとは図星のようだな」
「…き、さ、まあああ…!!絶対に生かしては帰さんぞ!!おい、ナヤロウ!さっさとやっちまいな!!」
尚子の激変に完全に唖然とした那夜朗だったが、気を取り直して背後に控えた部下たちに攻撃を命じた。那夜朗の指示を受けて一斉射撃が始まる。三人は華麗な動きで銃弾を避けつつ、那夜朗たちに向かって突進していく。
「見るがよい!これが旗目岩九人衆の力だ!」
そういうと「シャ」の体は激しく燃え上がり、「カイ」の体は冷気を帯始めた。そして「ジン」の体からは火花が散り始めた。そして三人は分かれると那夜朗の部下たちの元へと突っ込み、一人また一人と吹き飛ばしていく。その様はまるでどこぞのゲームの無双状態である。
「…なるほど特異体質を利用した術使いか」
訳の分からない技で翻弄する三人に動揺する部下とは対照的に那夜朗は冷静に状況を分析していた。そして少し考えるとメガネを掛けたお団子頭のスーツ姿をした横の女に指示を出す。
「金野、尚葉様と尚子を頼む」
「御意」
那夜朗は黄金色に輝く日本刀を手にするとゆっくりと無双を続ける三人の前に歩み出した。
「傍迷惑よ、私が自ら相手になろう」




