人騒がせvs傍迷惑 その1
甲斐と案茂が窓から外を覗くと那夜朗が拡声器を持って店の前に立っていた。その後ろには仁沢賀瀬家の黒服やチンピラらしき派手なシャツの集団、暴走族、更にはその筋の人らしきスーツ姿の恰幅のいい人たちがズラリといる。どうやら店の回りは完全に包囲されたようだ。
「既に貴様らは袋のネズミだ。命が惜しけ
れば大人しく出てこい。さもないと皆殺しにする」
那夜朗は拡声器で此方に呼び掛ける。那夜朗の横には尚葉と尚葉と同じような原色のケバケバしい格好をした若い女、そしてその反対側にはメガネを掛けたお団子頭のスーツ姿をした女が立っていた。仁沢賀瀬家の者らしいが、若い女の方は案茂が見たことがない。
「いいわ、那夜朗。続けてちょうだい」
「はい、尚葉様」
「尚子、あんたもよく見ておきなさい。仁沢賀瀬を敵に回した者の末路をね」
尚葉が横に立つ若い女に話し掛けた。女は尚葉と同じような邪悪な笑みを浮かべるとゆっくりと頷いた。そして女は那夜朗に近づくと拡声器の持つ反対側の腕に自分の腕を絡ませる。
「ねぇーん、那夜ちゃん。早くやっちゃってよ。尚子見てみたいのぉーん♪那夜ちゃんの格好いい、と・こ・ろ」
「……う、おえ…あ、失礼、尚子ちゃん。ま、任せてよ」
尚子と呼ばれる女はお世辞にも美人といえず、その気色悪い誘惑にさすがの那夜朗もドン引きである。が、気を取り直して背後に控えた連中に指示を出した。すると連中は武器のような物騒なものを取り出して手入れを始めた。まるでこれから戦争でも始めるかのような異様な光景である。
この様子を店の中から見た甲斐は慌てて神店長と黒いローブの仮面の二人に状況を伝えた。神店長の表情が歪み、社と甲斐に応戦の指示を出す。そして黒いローブの青い仮面に詰め寄った。
「どうやら奴等は本気で我々を潰しに掛かってきた…もはや一刻の猶予もないですぞ!」
「やむを得まい。「シャ」、「カイ」、そして「ジン」。奴等を排除しろ」
「御意!!」
青い仮面が神店長らに指示を下す。すると神店長らはピザ屋の制服を脱ぎ捨て、ド派手な忍び装束に身を包んだ。案茂は訳も分からず、クエスチョンマークを浮かべて完全に固まってしまっている。
一体これはどういうことだ?何でピザ屋の店員が忍者になってるんだ?それとも忍者がピザ屋だったのか?自分以外の店員も皆忍者なのか?
幾つも疑問が湧いてくるが、誰かに聞いても答えてくれる雰囲気ではない。案茂が混乱している内に忍びと化した神店長らが颯爽と店の外へと飛び出した。
「!!?来たか…」
神店長らを見て那夜朗が少し焦るように呟いた。尚子はわざと怖がる振りをして更に那夜朗に絡み付く。尚葉は冷静に状況を見て、余裕の笑みを見せている。三者三様の反応をしていると神店長らが那夜朗たちの前で突然ポーズを取り出した。
「我ら旗目岩九人衆!俺は赤の焔の「シャ」!」
「俺も同じく青の氷の「カイ」!」
「我は同じく黄色の雷の「ジン」!」
三人が口上を決めると背後にある店のシャッターが爆発した。神店長ことジンが満足そうな表情をする。中にいる案茂らは無事だが、一応雰囲気作りやったのだろうか。何ともいえない空気が店の一帯を包む。
「………さむ」
尚子が三人の口上を見て一刀両断していた。




