ピザ・トラブル その2
案茂を乗せた「ピザ・トラブル」のワゴン車は倉庫を出て市街地へと進む。混乱する案茂を尻目に三人は意味深な会話を続けていた。所々不穏な単語が出ているが、案茂は敢えて聞き流していた。これ以上彼らに関わることは危険だと本能的に察している。この一件が片付いたらバイトをやめよう。
「着いたぞ」
甲斐の言葉を受けて社が案茂を抱き起こす。ワゴン車の後部ドアが開かれると案茂に被せられた袋が取られた。行き着いた先の光景を見て案茂が目を丸くする。
「東総合病院」と書かれた古めかしい看板と大きくて立派な建物がある。先程三人が話した場所のようだ。正直なところ案茂も掛かり付けの病院であり、案茂どころか案茂の母親も此方で入院していた。案茂が母を看取ったのもこの病院だった。
「どうして此処へ…?」
案茂が驚いて三人を見たが、三人は意に返すことなく案茂を両脇に抱えるようにして病院の中へと入っていった。時間帯的に救急しか開いてないはずだが、構わず三人は建物の奥の方へと進む。しばらく行くと院長室と書かれた看板のある部屋の前へと辿り着いた。しかしこんな時間に院長がいるはずがない…
「失礼します」
神店長がノックすると中から何やら反応があった。どうやら誰かいるようだ。案茂は思わず身構える。神店長がドアを開くと院長用の立派な机と来客用のソファが置かれていた。そのソファに誰かが横たわっているのが見える。
「東院長!!!」
神店長が慌ててソファに横たわる人物に駆け寄った。よく見るとシワの深いお爺さんであり、小柄な体を更に丸めて小さくなっている。上半身に包帯を巻き、かなり苦しそうに呼吸していた。背中に巻かれている包帯からはうっすらと血が滲んでいる。神店長は甲斐に向かって看護師を呼ぶように告げる。
「まて…ジン…それには及ばない…。既に治療の手配はしている」
「しかしその傷では…誰にやられたのです?」
「油断したよ…ビョウがやられた。想像以上に連中も本気だ。気を引き締めないとワシらも全滅するぞ…」
「…仁沢賀瀬家だけならまだしも…連中をマークしていたとはいえ、予想外の強敵ですな」
「ジンよ…ワシのことはいいから早く…あの人に告げるのだ。先を急ぐようにと」
神店長とソファのお爺さんがボソボソと会話している。案茂は社に羽交い締めにされながら彼等の会話に耳を傾けた。それにしてもあのお爺さんは何者だ?何処かで会っていたか?この声に聞き覚えはないか?
「ジン、彼を確保したようだな」
「ええ、何としてもアレのことを吐かせます」
「手荒な真似はやめろ。あの人の怒りを買うことになる…」
「無論承知しております」
神店長はお爺さんとの会話を終えると甲斐の連れてきた看護師にバトンタッチした。お爺さんの怪我を見た看護師は悲鳴を上げそうになったが、すぐに甲斐に口を塞がれ「他言しないように」と脅された。
「さて案茂、此処で立ち話もなんだ。我々の仲間の所へ行くとしよう。そこでゆっくりと話そうじゃないか」
神店長が案茂に向かってニヤリと不気味な笑みを見せる。案茂は直感的に嫌な予感がした。彼らは何か自分に隠している。そしてそれは知ってはならない何かだ。震える案茂の頭に神店長が再び袋を被せた。
一応ここで折り返しです。




