ヤバイ連中と傍迷惑な奴等 その3
案茂が何者かに連れ去られたのに気づくことなく、追い詰められたトウとビョウを倒して余裕を見せるラプターが対峙を続けている。トウは両手の小刀を自身の顔の前に交差して構えを見せた。小刀の剣先からは紫色に輝く液体が滴り落ちている。
「クックッ…旗目岩九人衆、闇の薬師と呼ばれるワシを相手にしたことを末代まで後悔するといい」
「フッ、その台詞そのまま貴様に返すとしよう。ラプター!!」
「イエス、マイボス」
「奴を始末しろ」
T・レックスがラプターをトウへと仕向ける。トウの小刀から滴る紫色の液体が地面に落ちる。「ジュッ」という焼けるような音と共に細い煙が上がった。トウがニヤリと笑う。
「余裕があるのも今のうちじゃ。ビョウの仇はワシが討つとしよう。ゆくぞ!!」
ラプターが上着を破り捨てると筋骨粒々の上半身が露となった。リンが投げつけたクナイが深々と突き刺さっている。ラプターは意に返すことなく、クナイを体から引き抜くと地面に放り投げた。その体からやはり出血が見られない。
「化け物め、覚悟しろ!」
そういうとトウがラプターへと向かって突進する。ラプターはカウンターの右パンチを振りかぶるが、それよりも先にトウの小刀がラプターの左脇腹を切り裂いた。
「バカな!?」
シーラが思わず叫ぶが、T・レックスは冷静にシーラを制止した。その表情から未だにその余裕は消えていない。
すかさずトウは体を反転させると、再びラプターの首を目掛けて突進した。今度はラプターが左回し蹴りをトウに放つ。トウは左手で蹴りをガードするとその勢いでラプターの首に一太刀を加えた。
「ガッ!!?」
「!!?」
鈍い音と共にラプターの動きが止まる。するとラプターの首の辺りからどす黒いオイルのような液体が噴き出した。この様子にT・レックスが慌て出す。
「な、…貴様!?何をした?」
「クックッ…溶解液よ。ワシの小刀に溶解液を仕込ませてもらった。こやつはワシの推察通り、只の人間ではないようだの」
ラプターは首から噴き出すオイルを手で押さえる。が、それでも勢いは止まらない。トドメとばかりトウがラプターに飛び掛かったとき、トウの背後から銃声が響き渡った。
「なっ…!」
トウの背中から血飛沫が上がる。トウが振り返るとT・レックスが銃口を向けていた。
「ぬうう!!不意打ちとは卑怯な…」
「卑怯もクソもあるか。この際勝てばよいのだ。ラプターには莫大な費用が掛かったのだ。このまま只ではやられる訳にはいかん!」
T・レックスがトウへ引き金を引こうとした瞬間、突如黒い影がT・レックスに体当たりした。T・レックスが思わず体勢を崩すと、慌てて黒い影を睨む。
「…シーラ!!!?」
T・レックスに体当たりしたのは確かにシーラだった。意外な妨害にT・レックスは完全に虚を突かれた。思わずT・レックスはシーラの胸倉を掴み、そのまま突き飛ばす。
「隙あり!」
一瞬の隙を突いてトウが倉庫から逃走を図った。T・レックスは急ぎ銃口を向けるが、既にトウの姿は消えていた。トウを逃がしたことにT・レックスは苛立ちを露にして、宙に向かって自動小銃を乱射する。そしてそのまま銃口をシーラへと向けた。
「貴様!何の真似だ!?私を裏切る気か?」
「…分からない」
「ああん!!??」
「ボス…分からないんだ。私自身…何であんな行動したのか…」
シーラが自分の取った行動に呆然としているとT・レックスが近づき、思い切り腹を蹴り上げた。シーラは腹を押さえて咳き込み、その場へうずくまる。
「…でき損ないが。どうやら貴様はまだ改良の余地があるようだな」
シーラに吐き捨てるようにいうとT・レックスはオイルが噴き出して動けないラプターの元へと駆け寄って様子を見た。そして横転したトラックの荷台へ向かって叫んだ。
「お前たち、そろそろ出番だ!」
T・レックスの号令にトラックの荷台からぞろぞろとラプターのような屈強な男たちが降りてくる。男たちはT・レックスの前に一列に並ぶと跪いた。
「どうやら敵は既に動き始めている。我々も行動開始だ。邪魔する奴等は全て排除しろ。遠慮はいらん、存分に暴れろ!!」
「「「イエス、マイボス!!」」」
T・レックスの命を受けた男たちが倉庫から散り散りに出ていく。一部の者は動かなくなったラプターの「治療」を始める。一方でシーラはまだうずくまっていたが、あることに気づいて立ち上がった。
「あ、アンモナイト…?あいつ何処にいった?」
シーラはヨロヨロしながら姿を消した案茂を探し始めた。




