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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第二部
22/51

ヤバイ連中と傍迷惑な奴等 その2

 荷台のドアから現れてきたのは先程案茂を殴り付けた「ラプター」と呼ばれる大男だった。あの横転の衝撃を物ともしていないようだが、時折首を回して自分の動きを確認している。対して旗目岩九人衆の三人にとってこの展開は予想外だったらしく、呆然とその様子を眺めていた。案茂もまたラプターの生存に唖然としていたが、誰よりもいち早く我に返ると急いで横転したトラックの影に身を隠した。



「さて調子はどうだ?ラプター」


「良くはないですね、マイボス」


「…まあいい。彼処にいる奴等を一人残らず排除しろ」


「仕留めてもよろしいのですか?」


「構わん。我々に楯突いたことを後悔させてやる」


「イエス、マイボス」



 ラプターはT・レックスに確認するとゆっくり三人の前に歩みを進めた。対してT・レックスはシーラと共にラプターの後ろへと下がる。銃口を向けたままなのはラプターの援護に回るつもりか。T・レックスたちの動きを見てトウが思わず嘲笑した。



「クックックックッ…愚かよのう。たった一人で我らと戦おうというか。中々タフなようだが、その程度で思い上がるのも大概にしてもらうかのぅ」



 トウがそういうとリンがクナイをラプターに投げつけた。ラプターは避けることなく、右胸と下腹部にクナイが突き刺さる。更にビョウが鎖鎌を振り回すと鎖がラプターの首に巻き付いた。追い討ちを掛けるようにビョウはニヤリとしながら鎖を引っ張った。鎖はラプターの首を確実に締め上げる。



「苦しいだろ?どうだ?手も足も出せまい」


「クックッ…我ら旗目岩九人衆。寂しくないようにお前らもすぐにコヤツの後を追わせてやろう」



 得意げなビョウとトウに対してリンがある異変に気づいて叫んだ。リンの態度の変わりようにT・レックスはニヤリと笑う。



「まずい!ビョウ、急いで鎖鎌を離すんだ!」


「?今更何をいってるリン?」


「そうじゃ。まさかコヤツに怖じ気づいたか?」


「違う!コイツ…クナイが刺さったのに全く血が流れていない…」


「「!!?」」



 リンの言葉に驚いた二人が慌ててラプターの体を凝視した。確かにリンのクナイはラプターの体深くに突き刺さっている。ラプターは極めて軽装で鎖帷子や鎧を着けている訳でもない。にも関わらず体からは一滴も血が流れていない。一体なぜ…



「フッフッフッ…もう遅い。我々がヤバイ奴等だと気づいたときにはな」


「何!?」



 ビョウが鎖鎌を引っ張ろうとしたとき、首に巻かれた鎖をラプターが掴んで手繰り寄せた。ビョウは物凄い力で逆にラプターの元へと引きずられる。バランスを崩して倒れ掛けたビョウの側頭部にラプター渾身の右キックが決まった。



「ガハァ!!」



 頸の辺りからのゴキという鈍い音と共にビョウは激しく嘔吐しながら地面に臥した。ビョウの体はピクピクと痙攣し、完全に再起不能状態に陥っている。一瞬にしてビョウが倒されたことに余裕ぶっていたトウもさすがに眉をひそめた。



「…グヌヌヌヌヌ…ビョウを倒すとは…」


「さっきまでの威勢はどうした?仲間を倒されてショックを受けたのか?安心しろ、お前らもすぐに後を追わせてやる。ラプター!!」


「イエス、マイボス」



 瀕死のビョウを尻目にラプターはリンとトウにゆっくりと近づいていく。動揺して動けないリンに対してトウが両手の甲から小刀を取り出して構えた。



「リンよ…もしもワシがやられたら「シャ」と「カイ」に伝えるのじゃ。どうやらワシらはヤバイ奴等を敵に回したとな」


「…わ、分かった」


「ま、そんなことはないと思うがな」



 トウは冷や汗を掻きながらもニヤリと笑う。リンは一瞬の隙にトレーラーの方へと飛び上がり、倉庫に開いた穴の外へと姿を消した。リンの逃走に気づいたシーラが慌ててトレーラーへ向けて発砲する。それに対してT・レックスが一喝した。



「無駄弾を撃つなシーラ!」


「し、しかし逃げられたぞ?」


「構わん。どちらにしても全員あの世へ送るつもりだ。雑魚一匹逃げようが我らの勝利に変わりはない」



 T・レックスの余裕に対してトウが被せるように笑い声を上げた。笑い声を耳にしたT・レックスが不快そうにトウを睨み付ける。



「貴様…随分と往生際が悪いようだな」


「当然よ、旗目岩九人衆を嘗めるなよ。我らの宿願がようやく実を結ぶのだからな。この程度で怯む我らではないわ」



 一方トラックの影でビビって動けない案茂はトウとT・レックスのやり取りをただただ遠目で眺めることしかできない。が、此処に来て倉庫内の空調が効いて粉塵が晴れてきたのか、ラプターとトウの姿が案茂にも視認できるようになってきた。



「…な、何が起きているんだ?一体どういう状況なんだ?爺さんらしき忍者とさっきの大男が戦っているのか?」



 一人事態に付いていけない案茂が頭に幾つものクエスチョンマークを浮かべていると、不意に後ろから何者かに口を塞がれた。そして羽交い締めにされると、抵抗虚しくそのまま倉庫の外へと連れ出された。

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