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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第二部
19/51

シーラの『組織』

「起きろ、アンモナイト」



 シーラの言葉と共に案茂は目を覚ました。というよりも覚まさせられた。正しくは言葉より先に椅子に座った状態で冷水を思い切り頭から浴びせられた衝撃で一気に目が開いた形である。

 案茂が驚いて回りをキョロキョロ見回すと青いプラスチックのバケツを持ったシーラが目の前に立っていた。更によく見ると此処は何もないだだっ広い倉庫の中のようである。



「何をする!」



 案茂が立ち上がってシーラに抗議しようとしたが、後ろ手に手錠で拘束されているのか椅子から動くことができない。頭も体も冷水でびしょ濡れで気持ちが悪い。



「随分寝てたな。とっくにアジトに着いたぞ」


「お前の運転が荒すぎて気絶してたんだ!」


「文句言うな。連中を撒くのに苦労したんだ」


「連中って?」


「ヒトサワガセだよ」



 そういうとシーラはバケツを投げ捨てて案茂の裏手に回った。そしてオーライオーライと何かを誘導するような仕草をした。しばらくすると大型車のようなエンジン音と排気ガスの臭いが漂ってきた。案茂が横を向くと有名な運送会社のコンテナを積んだ10トントラックがゆっくりと視界に現れた。

 シーラが誘導を止めるとトラックも停止してエンジンが切られた。



「…何だこりゃ?」


「アジトだ」


「えっ…!?アジトって此処のことじゃ…」


「誰がアジトが移動しないといった?」



 シーラが案茂に教えているとトラックの運転席から長身の優男が降りてきた。男はシーラよりもくすんだ金髪で長い髪をゴムで後ろに束ねていた。丸メガネと高い鷲鼻が顔の特徴のようである。歳は…40いや50を越えているだろう。肌の色は悪いが、只者ではないオーラを放っている。



「ご苦労」


「連れてきたぞ。連絡していたアンモナイトがコイツだ」


「ほう…間違いはないのか?」


「ヒトサワガセの連中もコイツを探している。例の物を手に入れる鍵であることは間違いない」



 シーラと優男が案茂の前で会話する。どうも知り合い、いや「仕事」の同僚のようだ。シーラから一通りのことを聞いた優男が案茂の方に振り返る。優男と称していたが、その眼光は那夜朗よりも遥かに鋭い。眼光だけで人が殺せそうなくらいといっても大袈裟ではなかろう。



「…アンモナイトとかいったな」


「は、はい」


「…運が良かったな」


「えっ?」


「我々と関わって命が取られてないからだよ。本来であれば我々の「任務」を知った人間は全て始末するのが我々の掟。今回は特例だと思いたまえ」


「は、はあ…」



 優男の言葉に案茂は思わず縮こまる。下手なことを口にすれば即座に消す。その様子からとても冗談には聞こえなかった。優男は懐から紙巻きタバコを取り出すと火を点けてフーッと吹かした。そしてわざとらしく拘束されている案茂へも煙を吹いた。案茂は蒸せかえる。



「お察しの通りシーラと私はこの国の者ではない。とある国より遣わされた、いわゆる工作員という奴だ」


「…でしょうね。何となく分かってはいましたが」


「我々の狙いは…もう知っているだろ?」



 仁沢賀瀬家の当主に伝わる『秘宝』である宝玉。彼等の狙いもまた尚葉や那夜朗と同じだった。此処まで彼等が暗躍していたのも全ては『秘宝』を手に入れるため…。



「…貴方やシーラは一体何者なんですか?!」


「………合衆国大統領直属の秘密機関…」


「へ?」


「我々は大統領より直々に勅命を受けたエージェント。それでいいかな?」


「…え、えーと…」



 優男の言葉に案茂は理解が追い付けず思わずしどろもどろになる。優男はニヤリと笑うと再びタバコの煙を案茂に吹き掛けた。



「や、やめてください!」


「私はターキッシュ・サウザンド・レックス。長い名前だからT・レックスでいい」



 優男ことT・レックスが手短に自己紹介をした。

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