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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第一部
16/51

尚児の罠

「うぐっ…例のものだと…?」


「とぼけるな。キンタマのことだ」



 シーラの足の下から尚児の呻き声が聞こえた。シーラは銃口を那夜朗たちに向けつつ、尚児に『秘宝』を要求している。



「残念だが…此処にはない」


「「「何!?」」」



 シーラが驚きの声を上げたが、尚葉と那夜朗も動揺の表情を浮かべていた。どうやらこの二人も狙いはシーラと同じのようだ。思惑が外れたのか冷静さを欠き始めた。



「兄さん…どういうこと?当主なら肌身離さず持っているのが仁沢賀瀬家の掟でしょう?!此処にないって…まさか失くしたとかいうんじゃないでしょうね!!?」


「親父…貴様…!あんな大事なものを…!!」


「お、おい質問しているのは私なんだが…」


「外野はお黙りなさい!!これは仁沢賀瀬家の問題です!!」



『秘宝』が此処にないことについてシーラよりも尚葉たちの方が興奮している。ヒートアップする面々を前にシーラの足を払い除けると尚児が黒い笑みを浮かべながら、ヨロヨロと立ち上がった。



「慌てるな…此処にあるのは危険だから安全な所に隠しただけだ。お前らみたいな下衆な連中に『秘宝』が渡らないためにな」


「…何ですって!?」


「何処に隠した親父!!!」


「いいから早くいえ、ナオジ!」



 シーラは拳銃を那夜朗から尚児へと向け直した。三人に詰め寄られながらも尚児は平然とした態度を取り続ける。まるで此処に至る事態を端から想定していたように見える。ただ一人蚊帳の外にいて呆然と今の事態を眺めている案茂に向けて尚児は突然指差した。



「『秘宝』は仁沢賀瀬家が所有している大金庫の中にある。そしてそれを開ける鍵こそが案茂君!彼なのだ!」



 尚児の言葉に対して一斉に部屋の中にいる全員が案茂に視線を向けた。全員の殺気立っている視線を受けた案茂は思わず自分を指差した。



「お、俺ぇえええ!!??」



 どういうこと?と顔面一杯に表情を出した案茂に尚児が近づくとニコニコしながら肩を叩いた。



「案茂君、覚えているかね。この家に初めて来たときにタブレットに君の情報を認証登録しただろ?」


「えっ…?ああ、確か右手を乗せて登録したような…」


「あのときに大金庫の鍵となるデータとして君の情報を使わせていただいたよ。よって仁沢賀瀬家の大金庫は君しか開けられない」


「「「「な!??」」」」



 尚児以外のその場にいる全員が同じ言葉を叫んだ。案茂は笑みを浮かべる尚児の胸倉を咄嗟に掴んだ。



「何てことしてくれたんだ!!まさか騙し討ちですか!?」


「こうでもしないと君は首を縦に振らんだろ?」


「こ、このクソジジイ…!」



 案茂が尚児に対する怒りでワナワナと震えている横で那夜朗が黒服たちに何かを命じていた。尚葉も那夜朗からの耳打ちを受けて頷いている。

 すると突然案茂と尚児の回りを黒服たちが包囲した。案茂は尚児を掴んだまま慌てて振り返る。



「!!??」


「作戦変更です。案茂さん、大金庫を開ける鍵として貴方を確保します。ご心配なく悪いようにはしませんよ」



 黒服たちの影から那夜朗がニヤリと笑うのが見えた。黒服たちは拳銃を取り出すと一斉に案茂に向けた。案茂は尚児を放すとやむ無く両手を上げた。

 が、そのとき黒服の背後から何かが飛び出すと案茂の前に姿を現れた。



「し、シーラ!?」


「勝手に忘れてもらっては困るな」


「おや?大人しくすれば命だけは助けてやろうと思ったのだが、バカな女だ」



 黒服たちに銃口を向けたシーラに対して那夜朗が見下すような笑いを見せる。シーラは那夜朗を無視して案茂の胸倉を掴むといきなり口付けをした。



「へ?」



 突然の行為に案茂を含めた黒服たち全員が固まる。一瞬できた隙にシーラは黒服の一人に体当たりすると呆然とする案茂を無理矢理引っ張って応接間から脱出した。



「な、何をする!」


「黙って付いてこいアンモナイト!お前にはもう少し利用価値がある!私と一緒に来てもらうぞ!」


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