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この街には殺し屋が多すぎる  作者: 43番
第一部
15/51

緊迫

「何なんですか。いい加減にしてくださいよ」



 案茂はあからさまに面倒臭そうな表情を見せて尚児の元へ向かった。尚児は尚葉を突き飛ばすとアッカンベーをして挑発する。本当にこの人は名家の当主なのか? そのくらい子ども染みている。



「いいか!もう次の当主は決まっているんだ!!此処にいる案茂君に指名済だ!」


「そうなの?」



 尚児の言葉に尚葉が案茂の方を向いて確認する。案茂は無言で首を横に降った。案茂の返答を見た尚児は顔を真っ赤にする。



「ほら、やっぱり違うじゃない。早とちりして損したわ」


「…失礼しました尚葉様。不安要素は摘んでおかねば気が休まりませんので」


「…?不安要素…?」



 尚葉と那夜朗が取り越し苦労とばかりに溜め息を付いたのに対して尚児は案茂の胸倉を掴んで詰め寄った。怒りの弁を捲し立てる尚児を尻目に案茂は尚葉たちの会話の方が気になっていた。



「貴様!どういうつもりだ!?あれほど私がいったじゃないか!」


「知りませんよ。それに僕は最初から嫌だといってたじゃないですか」


「そんなの知ったことか!」


「じゃあいいますけどね!あんた、いい大人だろうが!!いい歳して恥ずかしくないのかよ!!クソジジイが!!」



 案茂の態度の急変に尚児が思わずたじろいだ。尚葉と那夜朗、離れてみていたシーラも若干引いている。



「…な、何だよぉ…怒鳴ったって…俺はひ、引かないぞ…」


「うるせえ!!何でもかんでも駄々こねればいいってもんじゃねえんだよ!!そんなだから皆からバカにされるんだ!そんなことも分からねえのか、耄碌(もうろく)ジジイが!!」


「う、う、うわーーーん!!!」



 案茂の余りの剣幕に押され、ついに尚児は泣き出した。そのまま案茂は怒りに任せて尚児のみぞおちに右の拳を再び決める。鈍い音と共に尚児は腹を押さえてその場に倒れ込んだ。黒服たちが慌てて案茂を取り押さえようとしたが、先に那夜朗が黒服たちを制止した。



「な、那夜朗様…」


「いい。此処は俺が引き受ける。…案茂さん、その辺で怒りを納めてください」



 那夜朗の言葉に案茂は我に返り、思わず頭を下げた。気が付くとシーラが案茂の背中を擦って宥めている。



「すみません、取り乱しました」


「いやいや、このクソ親父のことでごく短時間ながら苦労されたようですね。でもご安心を。当主の座は私が継ぎますので貴方はもう仁沢賀瀬家に関わりはありません。仁沢賀瀬家のことも他言は無用です」


「そうしたいです…」


「つきましてですが…」



 そういうと那夜朗は周りの黒服の一人に命じて何かを受け取った。その受け取ったものを案茂が見た瞬間、シーラが案茂の前に出て懐から拳銃を取り出した。



「「「!!??」」」



 案茂、那夜朗、尚葉、そして黒服たちが一斉に絶句する。シーラは銃口を那夜朗に向けると鋭い目付きで黒服から受け取ったものを床に置くように命じた。



「し、シーラ…?」


「なるほど…只者ではないと思っていたが…何処かの組織の回し者か。婚約者とは下手な嘘を付いたものだ」


「ソイツを置いて下がれ。でなければ撃つ」


「クックックックッ…何を言い出すかと思えば…」



 那夜朗は尚児と同じような笑みを浮かべると受け取ったものを床に放り投げた。ゴトリという鈍い重厚な音が部屋に響く。よく見てみると消音器の付いた拳銃であった。…まさか那夜朗は…僕らを消そうとしていたのか?



「これでいいのか?」


「まだだ。やいナオジ、這いつくばってないで例のものを出せ」



 シーラは床の拳銃を拾って案茂に投げると、未だ腹を押さえて悶絶している尚児の頭に足を置いた。

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