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1-4 野菜畑が荒らされたので防護柵を立てます。

盛り上げます!


「な、何ですと!?」


 朝、ルーシェは野菜畑を見に行くと驚愕してした。

 そこにあったはずの野菜がない。

 ないと言うより食い荒らされていたのだ。


「テト! 大変だよ」


 大声でルーシェはテトを呼ぶ。


「うるさいな。何だよ。ゆっくり眠れないじゃないか」


「大変だよ。野菜が! 私の育てた大事な野菜が無くなっている!」


 ルーシェの慌てようにテトもようやく状況を理解したようだ。


「これは野生動物の仕業だね」


「この付近には滅多に来ないのにどうして?」


「餌を求めてここまで辿り着いたんじゃないかな? 味を占めた動物はまたここに来ると思うよ」


「ど、どうしよう。テト!」


「防護柵を取り付けた方がいいと思う」


「防護柵か。よし。材料を買ってくる。テトも手伝ってよ」


「えー。面倒だな」


「文句言うならご飯抜きだからね!」


「分かったよ」


 ルーシェは村から調達した材料で野菜畑の周りに防護柵を取り付けた。

 四方にフェンスを立てて外敵対策をした。

 かなりの重労働であり、ルーシェとテトだけで一日掛かってしまった。


「フゥーやっと終わった。これで野菜は守られるね」


「ねぇ、ルーシェ。思ったんだけど」


「ん? 何よ」


「確かにこれで外敵から野菜は守れると思うんだけど、僕たちはどうやって中に入るの?」


「あ!」


 そう、四方全てにフェンスを立ててしまった為、出入りする為の扉を作るのを忘れてしまったのだ。

 結局、夜まで掛かってしまい、無事に扉を設置することが出来た。

 安心した翌日のことである。

 ルーシェは驚愕していた。


「どうしてよ。テト! テトどこ?」


 ルーシェの慌てるもの無理はない。

 そう、又しても野菜が食い荒らされていたのだ。

 防護柵をしているのに何故?

 それは強行突破によるものだ。

 フェンスをなぎ倒されて野菜を食い荒らされていた。


「許せない。せっかく苦労して育てた私の野菜たちを食い荒らすなんてどこの誰だ!」


 ルーシェの怒りは収まらない。

 だが、防護柵を顧みない犯人は一体何者なのだろうか。


「このフェンスをなぎ倒すほどパワーがある動物となれば熊みたいな大型の動物に違いないね」と、テトは推測する。


「熊か。熊だったら一溜まりもないよ。これ以上の防護柵は費用的に難しいし、どうしよう」


「その動物に危険な場所って植え付けることが効果的だと思うよ」


「危険な場所?」


「ここに来れば餌があると理解してしまえば懲りずに来る。だから危ない場所って植え付ければ二度と来なくなる」


「なるほど。って、どうやって危ない場所って植え付けるのよ」


「それは自分で考えることだね」


 テトはその場を離れてしまう。

 言うだけ言うところはテトの性格上仕方がない。


「大体、フェンスをなぎ倒すような動物にどうやって危険だって認識させればいいのよ」


 道具を使えば費用が掛かるので安易に使えない。

 かと言ってこれ以上、野菜を奪われる訳にはいかない。

 悩んだルーシェは自分の手を見つめた。


「そっか。私には魔法があるじゃない」


 ルーシェの武器は魔法だ。これを使わない手はない。

 ただ、その魔法をどのように使うか、それはルーシェの想像力次第だ。

 立て直したフェンスを見ながらルーシェは悩んだ。

 これだけでは簡単に突破されてしまう。これに加えてもう一工夫が必要だ。


「うーん。何か怯ませたり撃退するような魔法はないかな。こう、ビリビリとしたような。ビリビリ? そっか」


 ルーシェの閃いたことは電気トラップだ。触れれば電気が流れる魔法が出来ないか。

 早速、テトにアドバイスをもらいに行く。


「電気魔法? 出来ないこともないけど、それだと永続的に留める必要があるから難しいと思うよ」


「留めるって?」


「常備結界を張るイメージと同じだよ。寝ている間も常に魔法を発動しっ放しの状態だよ。君にそれが出来る?」


「それはちょっと厳しいかも」


「だったら別の方法があるよ」


「何? 教えて」


「フェンスに触れたら音がなる細工をする。その音に気づいたルーシェが退治する訳さ」


「おーナイスアイデア。なら空き缶を集めてくるね」


 ルーシェはすぐに実行した。

 そして、その日の深夜。

 カランカランと空き缶が擦れる音でルーシェは目を覚ました。


「来た!」


 ルーシェはベッドから飛び起きて急いで野菜畑に向かう。

 対してテトはベッドからズリ落ちても起きる気配はない。


「コラー! 野菜泥棒!」


 勢いよく扉を開けてルーシェは怒鳴った。

 野菜畑にいたのは熊ではない。

 白い毛並みをした狼だ。ただ、その体調は並のものではなく三メートルと大人の人間を超えている。

 野生には未知なる生物が存在する。

 そこにたまたまルーシェの野菜畑に目をつけられた訳だ。


 ガルルルルルルルルル!


 狼は白い毛を逆立ててルーシェに威嚇をする。

 体格差から見てルーシェに勝ち目はない。

 野菜からルーシェに狙いを定めた狼はゆっくりとルーシェに歩み寄る。


「く、来るなら来てみなさい。返り討ちにするんだから」


 ルーシェはいつでも魔法が発動できるように身構えた。

 狼はルーシェに対して牙を向けたところで魔法攻撃を放つ。


「我が名はルーシェ・スカーレット。天より神の裁きを、汝に降り注がれん。電紫雷光(メガボルト)


 効果。天より目標の頭上に雷を落とす。

 難易度はC。

 その効果により狼の頭上に雷が落ちた。

 一瞬にして狼を倒してしまう。


「やった。やっつけた。狼って食べられるんだっけ」


 黒焦げになった狼にルーシェは近付く。

 動かないと分かっていてもいざ動き出したらどうしようと怯えながら距離を詰める。

 ツンツンと突いて死んだことを確認する。

 その時である。死んだ狼に近づく一匹の小動物。

 いや、これは子狼だ。

 子狼は死んだ狼の側を行ったり来たりする。


「君、もしかしてこの狼の子供?」


 つまり、ルーシェが殺してしまったのは母親狼であることを悟った。

 子狼は親に守られて生きている。つまり、親を失った今、一人で生きていかなくてはならない。

 死んだことが信じられないのか。子狼は遠吠えをする。


「あ、ごめん。私がお母さんを殺したばっかりに」


 ルーシェは子狼に手をかざす。

 一人では生きていけない。だったら今、この場で楽にさせてあげた方が良いのではないか。これは優しさだと割り切って魔法を唱えようとした。

 しかし、その先の詠唱が言えなかった。


「殺さなきゃ。私が責任を持って最後までやらなきゃ」


 そう思い、ルーシェは子狼を抱いた。


「ダメだ。殺せない」


 そう思い、ルーシェはテトに相談することにした。


「狼を飼う? 冗談じゃない。猫と狼が一緒の環境で生活が出来ると思うの?」


「勿論、ずっとじゃないよ。この子が独り立ち出来るまでの間。テトには窮屈な思いをさせると思うけど、我慢してくれないかな?」


「冗談じゃない。僕の立場はどうなるのさ」


「テトはこの子のお兄ちゃんと言うことで手を打ってよ」


「もう。ルーシェは勝手だなぁ」


 保護という形で狼の子供の世話をすることになる。

 そして死んだ母親の死骸は食べる気になれず、墓を建てて埋葬することにした。

 ルーシェには生きる事情があるように狼にも生きる事情があった。

 その衝突で狼は命を落とすことになった訳だが、やらなければルーシェは確実にやられていた。それも定めの一つである。

 手を合わせて黙祷をするルーシェの横で子狼は悲しげに遠吠えをする。


「お母さんがいなくなって寂しいよね。でも、安心して。あなたは自立出来るまで私がお世話をしてあげる。だからお母さんの分まで懸命に生きよう」


 子狼から見ればルーシェは親の仇になる。

 しかし、それは不幸な事故のようなもの。

 それは子狼にも理解出来ているはずだ。

 それから約半年後、子狼は立派に成長を遂げて自立出来る身体つきに成長していた。


「シロ。私がしてあげられるのはここまでだよ。後は自分で生きていけるよね」


 子狼にシロと名付けて半年。

 本当の家族のように接したことで別れるのが心寂しく思うルーシェだが、これ以上の世話は難しいと判断していた。

 肉食動物でルーシェよりも何倍も体格が大きい。

 万が一のことがあれば一溜まりもない。

 それに家の中で飼うことも限界を感じる。

 手放すことは必然だったことだ。

 だが、シロもなかなか巣立とうとせず、ルーシェの顔を寂しそうに見つめていた。


「シロ。後は自分の足で進むんだよ。今までありがとう」


 シロは頷くようにようやく自分の足で森へ駆けていった。

 出会いと別れが短い時間だったが、ルーシェの心にもシロの心にもそれはしっかりと響いていた。もう、何も迷う必要はない。それぞれの道にただ進むだけだ。


「行っちゃったね。シロ」


「うん」


「シロの世話をしたのは自分への償いだったんでしょ?」


「バレていたか」


「それは見れば分かるさ」


「でも、それだけじゃないよ」


「どういう意味?」


「人間に悪い人はいないって分かってほしかった。もし、人と遭遇しても襲わないような子になってほしいっていう思いがあった」


「その思いはシロに通じているさ。ルーシェが愛情を込めて世話をしたんだから」


「そうだね。それだったら私は満足だよ」


 ルーシェはまた一つ成長を遂げた。

 そして、魔女への道はまだまだ続く。


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