2-21 私の友達が虐められているようなのでなんとかしてあげようと思います。
翌朝。
「ルーシェ。少し気になることがあるんだけど」
「どうしたのよ。テト」
「サシャのことなんだけど」
「サシャ? サシャがどうかした?」
「どうかしたって気付かない?」
「何よ。まどろっこしい言い方をしないではっきり言いなさいよ」
「じゃ、はっきり言うけど、彼女。虐められているんじゃない?」
「虐め? どうして」
「やっぱり気付かなかったんだね」
テトはサシャの虐めに勘付いていた。
まず、目に見えることで分かるのは擦り傷だ。
膝、肘などに絆創膏が貼ってあったり、文房具がコロコロ変わっている。
それによく教科書やノートを忘れることが多い。
真面目なサシャが忘れ物をするなんて本来考えられないことだ。
それなのに一番近くで見ているはずのルーシェはサシャの異変に気付かない。
わざと気付かないふりをしているのか、と思われるくらい鈍感だ。
見ているようで見ていない。
「おはよう。ルーシェ」
サシャはいつものように笑顔を振りまく。
いつもと変わらないように見えるが、少々違う。
ルーシェはそれに気付くことは出来るのか。
「うん。おはよう。えーと」
ルーシェはじっくりとサシャの足元から頭の先まで見るが、気付く気配はない。
それを見かねたテトは小声で教えてあげる。
「ルーシェ。サシャの靴」
「靴? あ!」
サシャの靴はペンキで塗られたような痕跡があった。
オシャレとして見えなくもないが、明らかに失敗したような出来だ。
誰かにやられたと言うことだ。
「サシャ。その靴。どうしたの。昨日まで黒かったような」
「自分でやったの。どう? オシャレでしょ」
「いや、全然。ねぇ、誰かにやられたの?」
「違うよ。自分でやったの。さぁ、早く教室に行こう。授業が始まっちゃう」
サシャはあまり触れられたくないのか、誤魔化すように先に行ってしまう。
「あれは明らかな虐めだね。見れば分かるのに気付かなかったの?」
「テトはよく見ているね」
「使い魔だからね。周りは常に警戒するように見ているよ」
「あんたは誰かに狙われているのかい」
テトの助言もあり、サシャは何かのトラブルに巻き込まれていることに気付くことができた。
しかし、一体誰がどのような目的でサシャに虐めているのだろうか。
本人に問いただしたところで正直に言うとは思えない。
だからルーシェは注意深くサシャの行動を観察した。
サシャは基本、ルーシェ以外の友人はいない。
休み時間や空き時間は自席で勉強や本を読むかトイレに立つくらいで特に変わったことは何もない。
「ごめん。ちょっとトイレに行くね」
「あ、なら私も行くよ」
「大丈夫。大きい方だから」
サシャは一人で行ってしまう。
気になったルーシェは後をつける。
サシャが女子トイレに入った直後、三人組の女子生徒がゾロゾロと入って行く。
入ってすぐのこと。先ほどの女子生徒は大笑いしながらトイレから出てきた。
不安になったルーシェはトイレに駆け込む。
「サシャ!?」
一番奥の個室の鍵は閉めきっており、ルーシェはドアを叩いた。
「サシャ。何かあったの? ねぇ?」
「大丈夫。心配いらないから」
正常を装うサシャであるが明らかに声が震えていた。
ただ事ではないと判断したルーシェは魔法で扉を破壊した。
バンッ!
すると、便座に座るサシャの全身は濡れていた。
「サシャ。もしかしてさっきの奴にやられたの?」
「違うよ。ウォシュレットの操作を間違えただけだから」
「そんなわけないじゃん」
ルーシェは冷静なツッコミを入れる。
許せない思いにルーシェは先ほど出て行った女子生徒たちの元へ向かおうとしたその時だ。サシャはルーシェの腕を掴んだ。
「大丈夫。余計なことはしなくていいから」
「でも」
「いいから。これ以上、何もしないで」
「サシャ。なら話。聞かせてもらうよ。何があったの?」
サシャから話を聞く。
その前にビショ濡れのままでは風邪を引いてしまう。
熱風魔法の使い、サシャの身体に当てて数分で乾いた。
「さぁ、乾いたよ」
「ありがとう。ルーシェ」
「それより。どうして虐められているの?」
「さぁ、私にも何がなんだか。特に何かしたって訳ではないと思う」
「サシャ。心辺りがあることはなんでも言いなさい」
「心辺りがあること。そういえば彼女たちにノートを貸してって言われてそれを断ったことがある。他にも日直の仕事を押し付けられて断ったことも。それかな?」
「どうしてだろう。サシャって目をつけられやすいのかな?」
「まぁ、今に始まったことじゃないので」
ルーシェは初めてサシャと出会ったことを思い出す。
その当時も集団で虐められていた。
雰囲気で虐められるのか、それとも本人が毒を撒いているのか分からないが、サシャにはそのような虐めが舞い込んでしまう体質のようだ。
ある意味、不幸体質を持っているのかもしれない。
ここまで知ってしまえばルーシェとしてもほっとけない。
「サシャ。ここは私に任せてよ」
ルーシェはある行動に移す。
サシャによくちょっかいを出す三人組はルーシェと同じクラスメイトだ。
その中でリーダー格であるココア・クリームはクラスの中でも存在感を放っていた。
狐のように目が鋭く、茶髪で毛先が内側に丸まっている。
一言で言えば荒い性格をしている。
ココアに着く二人の女の子もまたギャルっぽい見た目をしている。三人合わさることで周りからは近寄りづらいものが感じられた。
学校では必ずそのようなグループは少なからず存在する。
魔女を目指すウィッチエナン魔法魔術学園も例外ではない。
ルーシェは今まで気にしていなかったが、サシャの一件で無視できる存在ではなくなった。
三人で雑談しているところにルーシェは正面に立つ。
「ん? 何よ、あんた。私たちに何か用?」
「ちょっといいかな? 話があるんだけど」
三人はお互いの顔を見合わせる。
すると笑みを浮かべながらルーシェを見る。
二人から両腕を掴まれた。
「そう、なら場所を変えましょうか」
ほぼ強制連行のような形でルーシェは教室の外へ連れ出されてしまう。
周りの生徒は不安な目でその姿を見守ることしか出来なかった。




