2-18 どちらの七賢人が強いか決着をつけなければならないようです。やると決めたからには全力でやろうと思います。
城の外にて七賢人同士が睨み合っていた。
二人の間に風が吹き荒れる。
夜になり辺りは城周辺にある街灯が頼りで魔女らしい景色になっていた。
「本気で私に勝つつもり? やめた方がいいんじゃない?」
「その余裕が命取りってことを思い知らせてあげるわ。ねぇ、どうせなら賭け事しない?」
「賭け事?」
エリカの提案にルーシェは耳を傾ける。
「そうね。負けた方が勝った方の言いなりっていうのはどう? 七賢人にもなってこんな屈辱なことは他にないでしょ?」
「なるほど。でも、それは困るかな」
「何? 怖気ついちゃった? 案外、奥手なのね」
「違うわよ。そうじゃない」
「そうじゃない?」
「私が勝ったらエリカはずっと私の言いなりになるって考えたら卑屈だと思ってね」
エリカから堪忍袋の尾が切れた音がした。
「はぁ? 何、勝った気でいるのよ。舐めているの?」
「まぁ、本当にエリカが負ければそれはそれで面白いかもね」
「ふざけやがって」
「それで。勝負の方法は?」
「魔法でも体術でも何でもあり。とにかく負けを認めるか、気を失うか。それだけよ」
「ふーん。シンプルで分かりやすい。なら、それで始めましょう」
魔法バトルは唐突に始まる。
最初に仕掛けたのはエリカだ。
「いくわよ!」
エリカから氷槍が数十本放たれた。
ルーシェは風の魔法で氷槍を跳ね返した。
ドッ! ドッ! ドッ!
即座にエリカは氷の壁を張って応戦する。
「これくらい読めているわよ」
自身に跳ね返った氷槍を相殺した直後、
次の攻撃に移ろうとエリカが正面を見た時、ルーシェの姿はなかった。
ルーシェはどこへ?
上、右、左を見渡すが、ルーシェの姿はどこにもない。どこ?
「こっちよ」
「なっ!?」
ルーシェはエリカの背後に回り込んでいた。
いつの間に?
瞬時にエリカは後ろを振り返った。
お互いが杖を構えて爆風魔法をぶつけ合い、互いが後方へ吹き飛ばされる。
ゴオォォォォォォッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎ っと吹き荒れる。
転ぶことなくうまく受け身を取る。
ここまで十秒も掛かっていない。
「やるわね。エリカ」
「勝つのは私。絶対に私の言いなりにしてやる!」
火花が激しく燃え散る。
お互いが負けられない戦いになっていた。
ここまでは中の下の魔法だ。小手調べとしては丁度いい魔法だ。
だが、魔法バトルの場合、長期戦になればなるほど魔力を消費する。
よって魔法バトルは短期戦で決めなければならない。それは二人も分かっていることだ。ダラダラと魔力を消費するわけにはいかない。
そして勝負に出る。
二人は大技を発動した。
「氷竜!」
「雷竜!」
氷のエリカ。
雷のルーシェ。
二人は独自で編み出したオリジナル魔法を背後に従える。
「雷竜。エリカの氷竜を参考に編み出した大技よ」
「人の真似をして。でも、勝つのは私」
氷竜から凄まじい冷気を発する。
同じく雷竜から凄まじい静電気が発していた。
この二つの竜がぶつかり合った時、とてつもない爆発が起こることは間違いない。
魔法で生み出した竜と竜が歪み合い、一騎打ちが繰り広げようとされるその時だ。
二人の間に何かが落ちてきた。
「危ない」
「クッ!」
カッ!
大きな光を発したその時、とてつもない破壊音が響き渡る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎
ドッッッッカーーーーーーーーーーン‼︎
それは隕石のようで凄まじい破壊力を増しており、周囲一帯を爆発させる。
瞬時にルーシェとエリカは身を守る防御魔法を発動させる。
二人の足場のみを残し、半径十キロ圏内は吹き飛んでいた。
何が起こったのか、二人には理解が追いついていない。
それもそのはずだ。
この隕石のようなものの正体。それは噴火だ。
付近で巨大な山と知られているバベル山によるもの。
つまり、これは自然現象によるものだ。
被害はここだけではない。
多くの場所で被害を受けている。
無傷とまではいかないが、ルーシェとエリカは多少のダメージを受けた。
「エリカ。生きている?」
「当たり前でしょ。私は自分の身くらい自分で守れるわよ」
「まぁ、初めから心配はしていなかったけど」
「ふん。あんたに心配される筋合いなんてないわよ」
「それよりマズイことになったわね」
「えぇ。優先すべきことはあんたとの勝負じゃない」
「やることは分かっているようね。なら、動けるうちにやりましょうか」
今、勝負どころではない。
人々を救うことが先決だ。
七賢人として二人は人々を救うために動いた。
傷付いた人を救うため、今二人にできることは何か。
考えるよりも動け。その思いが二人を動かした。
災害はいつ起こるか分からない。だからこそ事前に準備しなければならないが、多くの人はすぐに対応できない。
ホウキに乗ったルーシェとエリカは街に出て懸命に救助活動に勤しんだ。
生き埋めになった人を引きずり出すため、魔法で瓦礫を浮遊させるだけでも多くの魔力を消費する。
そんなことを繰り返していれば当然、いずれ魔力が切れることは目に見えている。
最低限に人の命を救った二人は完全に魔力がなくなってしまう。
それは全力で走ったように息を切らす状態に等しい。
「はぁ、はぁ、流石に疲れたわね」
「えぇ。でも、少しは七賢人らしくできたかしら?」
「少なくともエリカは立派な七賢人よ」
「ふっ。あなたもね。それより、勝負はどうする? まだ決着はついていなけど」
「今はしばらく動けそうもないわよ」
「なら勝負はお預けね」
「残念だけど、そうするしかなさそうね」
ルーシェとエリカは口を動かすのがやっとで身体はピクリとも動かなかった。
そのまま眠るように意識を失い、オリバーの手によって救助された。
その先は二人とも何も覚えていないまま数日が経過することになる。




