2-15 金持ちの家を存分に楽しんでしまいました。
風呂を出て身体を拭き、着替えようとした時、異変に気がついた。
「あれ。私の服がない」
「私もです」
ルーシェとオリバーは自分の服を探すが見当たらない。
「ルーシェ様、オリバー様。お上がりですか?」
そこにやって来たのはエリカのメイドさんだ。
「丁度良かった。あの、メイドさん。私たちの服がないんだけど」
「それでしたら洗濯をさせて頂きました。代わりのお召し物を用意しましたのでそちらに着替えて下さい」
二人に用意された服はエリカと同様の高価なドレスだった。
「な、なんじゃこりゃ⁉︎」
ルーシェは真っ赤なドレス。オリバーは紫のドレスをそれぞれ身に纏う。
慣れない服装に二人は戸惑っている様子だった。
それを見たエリカは感想を述べる。
「あら、ルーシェ。お似合いですよ。普段より格段に上品になった気がします」
「いや、私はこんな高価な服は望んでいない。普通のやつはないの? アリナみたいなやつでいいんだけど」
「まぁ、細かいことは気にしない。普段着ることのないものを味わっておくのもいいんじゃなくて?」
「まるで私が一生縁のないような言い方ね」
「そんなことはないわよ。それより、食事の用意が出来ているんだけど、よかったらどう?」
「本当?」
丁度、お腹が空いていたルーシェにとって嬉しい提案だった。
案内された場所はまるでバイキング会場のような高価な内装だ。
それに出されている料理も高級食材がズラリと並んでいる。
「あんた。普段からこんないいもの食べているの?」
「普段からは食べていないわよ。太っちゃうじゃない」
「そ、そうよね。本当に頂いちゃって構わないの?」
「えぇ、どうぞ。好きなだけ」
「じゃ、遠慮なく頂きます」
普段食べられないような料理を次から次へとお皿に乗せたルーシェは一気に口へかきこむ。
自分が今、ドレスを着て気品のある姿であることを忘れたように食べることに夢中だ。
その姿を遠くから見るエリカはニヤニヤと口元が笑う。
「ねぇ、この料理おかわりないの?」
「まだ食べるの?」
既に十人前は食べたところでおかわりを要求されたエリカは驚いた様子で言う。
「好きなだけ食べていいって言ったのはそっちじゃない」
「分かったわよ。ちょっと、そこのあなた。おかわり持ってきてちょうだい」
「は、はい。ただいま」
メイドは慌てたように料理を取りに行く。
よく食べると言うよりも常識を超えていた。
デザートのケーキをホールで二つ食べた時点でルーシェはようやく満足したように言い放つ。
「美味しかった。満腹」
お腹を撫でて幸せそうにルーシェは良い顔をする。
食べ過ぎたことでドレスはパンパンだ。
ルーシェに遠慮はない。食べられる時に食べるスタイルがあるようだ。
「ルーシェ。マッサージを受けてみない? うちのメイドは結構腕がいいのよ?」と、エリカから提案される。
「マッサージ? 受けたい! 最近、凝っているから是非お願いするわ」
「ルーシェ様、どうぞこちらへ」
「はーい」
メイドに案内されてルーシェは連れられる。
その後ろ姿を見たエリカは小声で呟く。
「あれだけ食べたし、そろそろ効いてくる頃かな」
「嬢王。まさか」
「えぇ、そのまさかよ」
食事を終えたルーシェはメイドさんから全身のマッサージを受けることに。
うつ伏せになったルーシェの上にメイドが指先に全身の力を使ってマッサージをする。
「力加減はどうですか?」
「最高です。マッサージ上手ですね」
「ありがとうございます」
マッサージをされて身体がほぐされたルーシェは急に視界がぼやけた。
「ヤバ。眠たくなって……」
他人の家で寝るのは失礼かと心の中で格闘するルーシェは眠気を堪える。
「さぁ、気持ちを楽にして力を抜いてくださいね」
メイドさんの言葉にルーシェの気持ちが緩んだ。
知らずのうちにルーシェは眠りについてしまう。
温泉、豪華な食事、マッサージのフルコースを受けた人は誰だって気持ち良くなって寝てしまう。これ以上ない贅沢だ。
ルーシェは完全に気が緩んでいた結果がこれだ。
「……んっ。ん、ん……ZZZ」
ルーシェは夢の中へ落ちた。
「エリカ様。寝ました」
メイドはエリカを呼ぶ。
ルーシェが眠ったことを確認したエリカは言う。
「ご苦労様。流石、あなたのマッサージはゴットハンドね」
「お褒めの言葉、感謝します」
「よし。すぐに例の部屋に運んでちょうだい」
「はい。承知致しました」
エリカの指示でメイドたちはルーシェを部屋から運び出した。
一体、何が起ころうとしているのか。




