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2-14 田舎暮らしの私から見れば金持ちの家は次元が違うようです。

 

 エリカの登場のおかげで女の子との戦闘は中断されることになり、茶の間にルーシェとオリバーは案内される。

 ひとまず、侵入者ではなく客人として迎え入れられたことに安心する。


「悪かったわね! うちの妹が変な勘違いをして‼︎ でも、不法侵入したあなたも悪いからお互い様ってことでいいわよね‼︎‼︎」


 エリカは甲高い声で言う。というより大声で言う。


 テーブルの端と端で対面になって座るが、とにかくテーブルが長く、軽く三十メートルの距離がある。普通に話したら聞こえにくい距離だ。

 そのせいもあり、エリカは大きめの声で喋っている。


「悪いけど、もう少し近づいてもらえるかな? 私のことが嫌いみたいじゃない。あ、嫌いだったか」


「え? なんて⁉︎ 何を言っているのか全然聞こえないんだけど⁉︎⁉︎」


「だから、テーブルが長くて聞こえ辛いのよ‼︎ あんたも自覚あるでしょ‼︎」


「そんなことないわよ‼︎ 私は丁度いい距離だと思うわよ‼︎‼︎」


「だったらそんな無理して大声で言わないでよ。大声で言っているのが何よりの証拠じゃない」


 ルーシェの発言で近い距離で対面して普通に話せる状態にしてもらう。

 変なところで金持ちアピールはやめてほしい。

 テーブルには高価そうなカップに入った紅茶に高価そうなお菓子が添えられていた。

 紅茶を一口飲んだルーシェは美味しいと呟く。


「あんた。良い暮らしをしているのね」と素直な感想が溢れた。


「えぇ。貴族の娘ですから。せっかく来たんですもの。ゆっくり寛いでいくと良いわよ」


「それはどうも。ところであんた、どうして学校に来ないのよ」


「どうしてって言われても行きたくない気分もあるでしょ」


「気分ではなくて理由を説明しなさい」


「どうしてあなたにそんなことを言わなければならないのよ。最もその理由をあなたには言いたくないわ」


「私に負けたから?」


「はぁ? 誰がそんなことを?」


 ルーシェはオリバーに視線を向けた。

 それを察してエリカもオリバーを睨む。


「ごめんなさい。嬢王。私はてっきりスカーレットさんに負けて病んでいるのかと」


 オリバーは頭を下げた。


「オリバーの気持ちは分かったわ。全て私のことを思ってした行動よね」


「はい。勿論です」


「それでどうしてルーシェをここに連れてきた訳?」


「それはその……」


 オリバーが答えに迷っている時だった。

 ルーシェは発言する。


「私がオリバーに無理を言って案内してもらったのよ」


「どう言うこと?」


「心配だって言っているのよ。私のせいで学校に来られなくなったら罪悪感あるじゃない。だから来たのよ」


「そう。それは悪かったわね。本当はあなたに負けたことを引きずっていないと言えば嘘になる。だからあなたの言うことは完全に間違っているって訳でもない。学校に行かなかったのは上には上がいるってことに気付かされてちょっと深く考えたくなっただけよ。この答えで納得した?」


「そう言うことか」


 ルーシェは謎に優越感ある顔をする。

 それを見たエリカはルーシェの頬をつねった。


「痛い! 何をするのよ!」


「調子乗られるとイラッとするのよ」


「だからってつねることないじゃない」


 ルーシェとエリカの睨み合いが続く。

 この二人はどうも馬が合わないようだ。

 エリカの顔を見るとイライラが止まらないルーシェは自分を落ち着かせるために紅茶を口に含む。

 気持ちを落ち着かせたことで改めてルーシェは部屋全体に目を向ける。

 壁沿いには何人かのメイドや執事がズラッと並んでいる。

 その中でもエリカの後方には常に二人のメイドがスタン貼っている状況だ。


「それよりあんたの家はどうなっているのよ。でかいし警備もすごいし、それにまるで迷路じゃない。自分の家で迷子になりそう」


「貴族の娘だからね。どう? 驚いたでしょ」


「驚いたけど、それよりも」


 ルーシェはエリカの姿をジッと見つめる。


「あんた、今日はパーティーか何かあるの?」


 気合の入った水色のドレス姿が気になっていた。


「これは普段着よ」


「普段着でドレス? 貴族って普段からそんな高価そうな服着るの?」


「まぁ、窮屈に感じる時はあるけど、慣れちゃえば着心地いいわよ」


 学校でも気品があるが、家ではそれを超えるほどのお嬢様に見えた。


「そういえば、妹さんはドレスを着ていないけど」と、ルーシェは気になったことを口にする。


「あー、あの子はいいのよ。そもそもドレスって感じのキャラじゃないでしょ」


「でも、一応貴族の娘でしょ?」


「あの子、養子なの。だから私とは血の繋がりはないんだよね」


「何か訳ありね」


「変に詮索は辞めてくれる? そっとしといてあげてよ。それよりせっかく来たんだし、おもてなしをしてあげるわ。ついて来て」


 エリカが案内したのは温泉だ。

 旅館にあるような空間が丸々家にあるとは驚きだ。


「本当に入っていいの?」


「えぇ、どうぞ。オリバーもせっかくだし、入って行きなさい」


「しかし、嬢王。私なんかがよろしいんでしょうか」


「遠慮しない。ゆっくりして行きなさい。私は少し用事を済ませてくるからごゆっくり」


「では遠慮なく」


 服を脱ぎ、露天風呂に浸かる。


「一気に心が安らぐわ」


「そうですね」


 ルーシェとオリバーの気が緩んでいる頃、隅の方に誰かがいる。

 貸切だと思いきや先客がいたようだ。

 その人物はエリカの妹。アリナ・ソフィーナだ。


「あ、あんた」


「侵入者。まだ居たのか」


「今は客人よ。それよりエリカの妹。あんた、さっきはよくもやってくれたわね。実はまだ腹部がズキズキするんだけど」


「エリカの妹じゃない。私はアリナ・ソフィーナって名前があるのよ。覚えておきなさい」


 エリカと同様、生意気なところがよく似ている。血の繋がりはないと言っていたが、一緒に暮らしていれば性格は似るのだろうか。


「アリナ。あんた、とんでもない戦闘力ね。どこでそんなに強くなったのよ」


「ただの自主練だよ」


「自主練? 嘘だぁ。それだけで強くなれないでしょ」


「本当だよ。誰かに弟子入りしている訳じゃないし」


「だったらあなた才能あるのね。将来、何になるつもりよ」


「私は自分の力を信じている。だから武闘家になりたいの」


「武闘家か。カッコイイじゃない」


「でも、私は貴族の娘。そんなことは家柄で許されるわけがない。きっと令嬢やメイドにされる。そうなる前に私はこの家を出る」


「家を出るってそれはエリカや家族は知っているの?」


「知らない。でもお姉ちゃんは勘付いていると思う」


「ふーん。なんで私にそんなことを言ったの?」


「部外者だから。あなた、お姉ちゃんのファンか何かでしょ?」


「誰がファンだ。あんなやつ友達でもないし」


「じゃ、なんでわざわざ不法侵入してまで乗り込んで来たの?」


「それはエリカが病んでいるって聞いて仕方なく来たのよ」


「お姉ちゃんが病む? 想像できないな。お姉ちゃんは七賢人っていう魔女では神様的な地位にいるわけだし、病むとしたら負けるような出来事がない限りありえない」


「うん。エリカは私に負けたよ」


「はぁ? 負けた? あんた、何者?」


「ルーシェ・スカーレット。七賢人よ」


 ルーシェは湯船から上がり全裸の状態で名乗った。


「七賢人? あなたがお姉ちゃんと同じ七賢人だとでも言うの?」


「今、疑ったでしょ。承認はいるわよ。ねぇ、オリバー」


「はい。スカーレットさんは七賢人です」


「なんか言わされている。それにその貧相な身体で七賢人って」


「身体は関係ないでしょ。それに今、胸を見て言ったよね? 私の胸が貧相だと言いたいのかな? え? コラ」


 ルーシェは年下相手に興奮気味に我を忘れていた。

 ルーシェとアリナは釣り合わない関係性のようだ。トコトンエリカの家族とは相性が合わない。


「七賢人なら今ここで凄い魔法を見せてよ」


「こ、ここで?」


 全裸の状態で魔法を見せてほしいと要求されたルーシェは抵抗感があった。


「まさか出来ないの? やっぱり七賢人なんて嘘か」


「嘘じゃないもん! なら、やってあげようじゃない。見てなさい!」


 ルーシェは意地になる。


「行くわよ! 私の凄い魔法を見せてやろうじゃないか」


 ルーシェは湯船に手をかざす。


 ポコ。ポコポコポコポコ。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎


 すると、お湯は一箇所に集まって球体のような形状へ変化する。

 湯船が無くなったことにより、その場に居合わせた三人は隠すものがなくなった。

 素っ裸な状態でルーシェとアリナは身体を隠すのを忘れて球体に目を向けていた。

 そんな中、オリバーは恥ずかしくなり、身体を丸めて身を縮めた。


「どうだ。これで終わりじゃないわよ」


 次にお湯を固めた球体を頭上に高く上げた。

 何をする気だ、と。オリバーは嫌な予感がしていた。


「ちょっと。スカーレットさん。もう充分ですよ。これ以上は……」


「いっけー! 温泉シャワー」


 オリバーの言葉なんて耳に入らないルーシェはそのまま球体を破裂させて雨のように降り注いだ。

 雨ならまだ良かったが、降り注いだのは滝だ。水圧に押されている間は息をすることが困難なほど。

 嵐が過ぎ去った後は虚しい気持ちが襲った。

 だが、アリナは口には出さなかったが、ルーシェが七賢人であることは察したようである。

 ただ、調子に乗るのは避けて欲しいとアリナとオリバーは感じた。


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