2-13 家のセキュリティーが凄すぎて入るのが一苦労です。
ランタンの門番を突破して敷地内へ入った直後のことである。
ガルルルルルルルル。
すると、玄関まで続く庭には放し飼いにされた番犬が数匹いた。
侵入者に牙を向けるように躾けられているのか、ルーシェの周りに番犬が囲んだ。
「この家はどうなっているのよ」
「スカーレットさん。引き返しましょう」
「ダメ。背中を見せれば襲いかかる。安易に動かないで」
「じゃ、どうすれば?」
二人が議論していたその時だ。
一匹の番犬は助走をつけてルーシェに牙を向ける。
完全に獲物を狩る立ち回りだ。
「スカーレットさん。危ない!」
「例え、正当防衛でも人様のペットを殺す訳にはいかないか」
ルーシェは考えながら魔法を使う。
風刃列覇。
牙を向けた番犬に対して殺さない程度に自分と相手を守るように魔法を使う。
日々の鍛錬のおかげもあり、ルーシェは魔法の使い方を徐々にマスターしていることが窺える。
番犬を戦闘不能にさせたことで仲間の番犬は怯んだ。これ以上、ルーシェに近づこうとして来ない。
「オリバー。今のうちに庭を突破するわよ」
「は、はい」
ルーシェを先頭にして一気に庭を走り抜けた。
そしてようやく正面扉の前に辿り着く。
それは重い鋼製仕様であり、開けるのも一苦労な扉だった。
ルーシェは取手を握り、押したり引いたりするが、ビクともしない。
「思った通り、鍵が掛かっているわね」
「どうするの? 裏口に回るにしても庭には他にも番犬がいると思いますし」
「そんな面倒なことしないよ。正面突破する。それの方が簡単でしょ」
鍵の掛かった扉を開錠させる魔法は存在する。
しかし、ルーシェはそのような魔法があることすら知らない。
よってルーシェの突破法は扉の破壊だった。
ドカーン‼︎
風系魔法で強引に扉を吹き飛ばす。
扉は室内の中央階段へ撃ち付けられた。
「ちょっと。スカーレットさん。何も壊すことないじゃないですか」
「え? でもこっちの方が楽じゃない?」
「楽だからと考えなしに何でもかんでも壊さないで下さい。仮にも嬢王の家のものですよ。後で何と言えばいいやら」
「ごめん。後で謝るからさ」
「謝れば済むと言う問題でもありませんから」
ルーシェは少々大雑把なところもあるようだ。
そのことを目の当たりにしたオリバーはただ呆れる。
室内へ侵入しようとしたその時だ。
正面の階段の上に誰かがジッとこちらを睨んでいた。
それに気付いたルーシェは警戒した。
「誰かいる」
金髪ショートの女の子だ。
半袖シャツにショートパンツというラフな服装をしている。
すると女の子は階段の上から飛び降り、右足を大きく掲げてルーシェに飛びかかる。
「オリバー! 私から離れて」
反応が遅れたオリバーを強引に突き飛ばす。
女の子はかかと落としを決めに行くが、ルーシェは寸前のところで交わす。
バコーン‼︎
床は大きく割れており、もし直撃を食らっていればタダでは済まない破壊力である。
「いきなり何よ。危ないじゃない」
「不法侵入者が何を言っているんですか。次は確実に当てます」
女の子は足踏みをして大きくジャンプをする。
構えから見て飛び膝蹴りを撃とうとする。
相手が女の子ということもあり、ルーシェは魔法を使うことを躊躇った。
飛び膝蹴りがルーシェの腹部に直撃した。
「がはっ!」
強い痛みがルーシェを襲う。
その衝撃のまま、ルーシェは扉の外へ吹き飛ばされた。
「スカーレットさん!」
仰向けに倒れこむルーシェだが、なんとか身体を起こす。
「大丈夫ですか?」
「なんとか。私じゃなかったら危ないよ」
腹部に痛みを残したまま、ルーシェは立ち上がる。
女の子を甘く見ていられない。
ルーシェは手を翳して魔力を高める。
「まさか魔法を使う気ですか?」
「大丈夫。当てないよ。ちょっと驚かせるだけ」
女の子は次の攻撃に備えて深呼吸をして整える。
次は何をしてくる?
「次で終わりです」
女の子は全力でルーシェに向かって走り出す。
それに対してルーシェは動かず、構える。
ルーシェが警戒する中、「やめなさい!」と第三者からの声が掛かった。
その声の方向にはエリカ・ソフィーナがいた。
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃん?」
「アリナ。どういうこと?」
「僕はただ侵入者を排除しようとしただけだよ」
「安心しなさい。彼女は侵入者ではない。客人として迎え入れることに今、決めた。だから下がりなさい」
「はい。分かりました」
アリナと呼ばれた女の子はエリカの指示に従い、その場を離れた。
「まさかあなたがいるなんて驚きね。とりあえず家に上がることを許可するわ。ようこそ。ルーシェ・スカーレット」
ようやくルーシェは客人として認められた。
こんなことなら早く現れて欲しいと思うルーシェであった。




