2-9 七賢人同士の戦いが本格的になりました。正直、乗り気になれないが、やるしかなさそうです。
ルーシェとエリカの睨み合いが続く。
こうなってしまえば戦いは避けられない。
相手が七賢人であるなら並の魔法では倒せない。
それに魔力の力が大きければ大きいほど、魔力の消費は早まる。
勝敗が長引けばお互い不利になることは想像できた。
先手を打ったのはルーシェだ。
風刃列覇。
風系の攻撃では初級レベルだが、相手の出方を伺う為にエリカに向けて放つ。
「ふ、何よ。それ、甘いわ」
当然、その程度の魔法は同じ魔法をぶつけて相殺される。
「どうしたの? その程度の魔法で私が倒せるとでも?」
「私の魔法は強力すぎる。あなたを傷付けずに済むなら本当は戦いたくない」
「その優しさが命取りになる。本気で来なさい。私はあなたを倒す。完膚なきまで」
エリカは動いた。
杖で円を描くように魔力を込めた。
すると、大地が揺れた。
ポコ。ポコポコ。
ボコボコボコボコポコポコ‼︎
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎‼︎‼︎‼︎
ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズーーーーーーンッ‼︎
エリカは水を何もない空間から生み出した。
水系魔法を発動する場合、通常であれば水があるところから魔法で引き寄せて操作するものだが、エリカは違った。
水をゼロから生み出すのは七賢人だからこそ出来る高等技術だ。
それを湖から引き寄せるほどの水量をゼロから生み出したのだ。
これだけでもエリカが七賢人であることは認める他ない。
「へー。すごーい。こわーい。何をする気?」
「うふ。ビックリして顎が外れちゃったのかな? それともバカにしている? さー、私は今から何をするのか特とご覧あれ」
生み出した水は徐々に一箇所に集まり、細長い形状に変化して生き物みたいになる。
二メートル、五メートル、十メートル。
その正体は。
水龍
これはエリカのオリジナル魔法だ。
その難易度はSランク以上を誇る。
「ドラゴン? 水系でこんなことができるなんて」
「どう? 驚いた? 私、水系統の魔法が得意なの。こんなことができるのは魔女以上の実力者だけ。さて、これを避けられた人はいない。さぁ、どうする?」
水龍はエリカの指示によりルーシェの方へ真っ直ぐ突っ込んだ。
これほどの水圧に飲まれてしまえば窒息してしまう。
瞬時にルーシェは手を翳した。
「風よ、荒れ狂え、全てを扇ぎ給え。神風凪」
効果。台風を呼び起こし、対象を飛ばす魔法。難易度はB。
シュンシュンシュン‼︎
ズバン‼︎
その効果により水龍を風圧で弾き返した。
台風により水龍は形を保つことができなくなり、周囲に水が飛び散る。
まるで大雨が降ったようにフィールドが一瞬で水浸しになっていた。
お互い、顔色一つ変えず、互いを睨み付けていた。
「杖を使わずに打てるのね。それに難易度の高い魔法。流石」
「悪いけど、私、あなたと戦う気は無い」
「そう? 私は敵意むき出しだよ? 戦わないなら死ぬだけ。まさか今ので勝った気になった?」
「まさか。あなたはその程度で終わらない。まだ凄い魔法を隠し持っているんでしょ?」
「当然。でも、安心しなさい。今からたっぷり見せてあげる。私の魔法を間近で見られることは光栄だと思いなさい」
「へぇ。どんな凄い魔法を見せてくれるのか楽しみね」
「その余裕がいつまで続くか。後悔することになるわよ」
水手裏剣。
水で作られた手裏剣。その威力は刃物以上の切れ味を誇る。
エリカは連続で放った。
外した水手裏剣は壁を破壊する威力だ。もし当たれば一溜まりもない。
ルーシェは懸命に水手裏剣を華麗に交わす。
バク転をしながら鮮やかに交わす姿はどこか余裕を感じられる。
「すばしっこいわね。魔法以外にも鍛えている訳?」
「伊達に田舎暮らしをしていないわよ。自給自足は結構体力使うんだから」
貴族の暮らしをするエリカと田舎暮らしをするルーシェは生活の違いから魔法以外に差が出ていた。
エリカの攻撃はルーシェには届かない。
スピードで翻弄するルーシェはついにエリカの背後を捉える。
ここだ!
ルーシェは背後のエリカに向けて魔法を放つ。
「風刃列覇」
エリカは動かない。このまま魔法が通れば一気に勝敗がルーシェに有利に動く。
カキーン‼︎ とルーシェの攻撃は何かに防がれてしまう。
「な!」
一瞬、何が起こったのか分からないルーシェは怯んだ。
「甘いわよ。ルーシェ。背後は一番無防備な場所。さっきあなたに覆った壁の一部を張らせていたの。何も対策をしていないほどバカじゃないわよ」
ルーシェは一旦、距離を取る為、後方へ下がった。
背後がダメなら正面、左右、上下。どうする。
「決めた。上だ」
ルーシェは天翼翔を使った。
背中に大きな翼を生やして空を飛ぶことが可能な魔法だ。
ホウキを使うよりも格段に使いやすく自分の意思で飛行できる優れもの。
難易度はB。
「へー。そんなこともできるんだ。私より優れた魔法を使うのね」
「風よ、荒れ狂え、全てを扇ぎ給え。神風凪」
ルーシェの放つ神風凪は螺旋状になってエリカを襲う。
ヒュンヒュンヒュン‼︎
エリカは咄嗟に壁を自身の周りに覆った。
「重い」
エリカはルーシェの攻撃を支えるのが精一杯だった。
少しでも気が抜けば押し出される。
上から押す力と下から押す力では上から押す力の方に部がある。
その差がジワジワとルーシェが押していた。
押し切る‼︎ その思いを乗せてルーシェは魔力を更に上乗せした。
「えーい‼︎」
ピキッ、ピキッ。
バコーン‼︎
エリカの張った壁は壊された。やられる。そう思ったエリカだったが、ルーシェの攻撃は消えた。
ルーシェが自ら魔法を消したのだ。
ルーシェはそのまま地面に着地して翼を消した。
「どういうつもり? あのまま攻撃を続けていたら私を倒せていたかもしれないのに」
「もうこれで分かったでしょ。私の勝ち。大人しく負けを認めてくれない?」
「馬鹿ね。トドメを刺してこその勝負でしょ。甘いのよ」
「エリカ。あなたはただどっちが強いか証明したかっただけでしょ? ならトドメを刺す必要はない。結果が分かったならそれでいいじゃない」
ルーシェの勝利。その結果さえ分かればこれ以上、戦う意味がないというルーシェの筋は通っていた。だが、エリカは敗北したことに納得できるはずがない。
「私が負けた? そんなの絶対認めない。認める訳にはいかないんだ」
エリカは目を見開きながらルーシェに敵意を向けていた。
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