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2-8 私以外にも七賢人がいたようです。それと同時に面倒なことになりそうです。

 

 オリバーから敵意は感じられない。

 完全に負けを認めたと言っていいほど。


「オリバー。あなた、何か隠しているの?」


「何も。杖もホウキもない。そんな私に何があるっていうの?」


 確かに言われて見ればその通りなのだが、どうもルーシェはオリバーに裏があるようでならなかった。

 ルーシェのその疑問は間違っていない。危機が過ぎ去った訳ではない。

 むしろ始まりに過ぎない。


 ザッ!


 何者かの気配を感じた先に目を向けたその時だ。

 突如、ルーシェは強烈な光を浴びて目が眩んだ。


「うわ! 目が痛い」


 これは閃光(フラッシュ)魔法。

 相手の視界を一時的に奪うものだ。

 不意にもルーシェは攻撃を浴びてしまった。


「何? 誰かの魔法?」


「オリバー。あなたもまだまだ未熟ね。七賢人かどうか探るだけで手こずるなんて。おまけに負けているようじゃ、訳ないわね」


「すみません。嬢王」


 嬢王?

 声を聞く限り、新手が現れたことをルーシェは察した。

 一体、何者なのだろうか。

 目が眩んで声しか分からない。


「大体、私が助ける前提の立ち回りは感心しないわね。あなたに任せた意味がないじゃないの」


「申し訳ありません。私一人でどうにかするつもりでしたが、不意を突かれてしまいました」


「言い訳なんて聞きたくないわ。私の手を煩わしたんだもの。どう責任を取ってくれますの?」


「嬢王のご命令であればなんでもさせてもらいます」


「あら、そう。なら全身もみほぐししてくれる? 最近、肩が凝っちゃって」


「勿論です。むしろさせて下さい」


 どういう会話だ。

 オリバーより格上が現れたのは察した。

 ルーシェの目は徐々に慣れて視界が回復する。

その目に映ったのは金髪縦ロールの女である。

 上品な見た目で肘までフリルのある日焼け止め手袋をしている。

 そしてまたしても爆乳で目が思わず胸にいく。

 彼女もまた学校の制服を着ているのでここの生徒で間違いなさそうだった。

 一度見たら忘れないような見た目から同級生では見たことない。


「何奴?」


「どうも。ルーシェ・スカーレットさん。私の連れがご迷惑を掛けたわね」


 腕を組み、余裕のある表情をする。

 金持ちオーラ全開でどこか見下すような態度が気に食わない。

 プライドの高さが窺えた。


「あなた、何者よ」


「エリカ・ソフィーナ。七賢人よ」


「七賢人……ですって⁉︎」


 ルーシェ以外の七賢人の登場だ。

 エリカ・ソフィーナは貴族の令嬢。

 悪役令嬢と言われる存在だ。

 立場的にはかなり上位に君臨する存在。

 ルーシェにとって新手と呼べる存在だ。


「ルーシェ・スカーレット。あなたが七賢人かどうか、私が確かめてあげる。私、自らが相手をしてあげることにむしろ感謝すべきね」


「さっきから上から目線で何様よ」


「だから私は七賢人って言っているじゃない。たっぷり遊んであげるから」


「何をするつもり?」


「もうしているわよ」


「え?」


 ルーシェの周りには強化ガラスが四方を囲っていた。

 まさに鳥籠のような状態だ。

 ルーシェは完全に閉じ込められていた。

 目が眩んでいる間にやられたようだ。

 手で叩いてみるが、ビクともしない。


「くそ。なんなのよ。これ」


「無駄よ。内部からどんなに暴れても壊れることはない。私が魔法を解かない限りにね。これであなたは逃げることすら出来ない。囚われの身、同然って訳よ。眺めとしては最高ね。弱者と勝者って感じで。あははは」


 エリカは悪魔のような笑いを零す。


「趣味悪いわね。あんた。私を閉じ込めてどうするつもり?」


「七賢人ならこの程度の壁くらい脱出できるでしょ?」


「だから私は七賢人じゃないって」


「シラを切るならご自由にどうぞ。でも、このままじゃ酸欠で死ぬわよ? 空気は徐々に薄くなる。そうなればあなたは文字通り、終わり」


「私を殺す気?」


「死にたくないなら脱出するしかない。でも脱出した瞬間、あなたは七賢人であることは確定的。これを破壊、もしくは脱出できるほどの魔法が使えるとしたら私の同じ七賢人並の実力者でなければあり得ない」


「さすがです。嬢王」


「オリバー。あなたもこれくらいしないと彼女の尻尾は出さないわよ」


「はぁ。ですが、これが出来るのは嬢王だけです」


「あぁ、そうだったわね」


 二人が悠長に雑談している中、ルーシェは究極の二択を迫られた。

 このまま何もせずに死ぬか、力を使って無理やり脱出するか。

 時間が経つことに酸素が薄くなり、徐々に息苦しさを感じていた。

このままでは意識が保てない。

 しかし、脱出を図れば自分が七賢人だと教えることになる。

 七賢人だと知られたら何をされるか分からない。

 ルーシェから嫌な汗が流れた。


「うふふ。さぁ、早く正体を見せなさい。赤髪の子猫ちゃん」


「しかし、嬢王。このまま死んでしまえば私たちは殺人になるのでは?」


「大丈夫。意識は失うことはあるけど、死ぬまでには至らない。最悪、回復魔法を投与すれば問題ないわよ」


 二人の会話が聞こえ辛くなっている。ついにルーシェは地面に手足を付いて息を荒げた。


「はぁ、はぁ、はぁ。苦しい。そろそろ限界だ。仕方がない。意地を張って死ぬ方が情けないよね」


 このままでは危険と判断したルーシェは変なプライドで命を落とすのは馬鹿らしく思い、手を壁にかざした。

 その動作を見てエリカは口元が笑う。

 やらなければやられる。だったらやってやる。


雷極光陣(ライトニングボルト)


 一点に集中して雷を撃ち放つ。


 バリ。バリバリバリバリバリ‼︎


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎‼︎‼︎‼︎


 ドッカーーーーーーン‼︎


 パラッパラッパラ…………。


 その凄まじい一撃で壁を一瞬で吹き飛ばした。

 密閉空間から外に出たことでルーシェの呼吸は取り戻した。


「はぁ、はぁ、はぁ。やむを得なかった」


「嬢王の隔離魔法を破壊した。なんて威力なの」


「雷属性の上級魔法。魔女以上ではないと習得できない魔法。いや、見た感じその魔力は巨大なもの。やっと尻尾を出したわね。七賢人・ルーシェ」


 呼吸を整えたルーシェは一歩前に出ながら言う。


「えぇ、あなたの言う通り、私は七賢人で間違っていないわよ。それで? 正体を暴いてどうするつもり?」


 ルーシェは最早開き直った。いや、開き直ざるを得なかった。

 ここまでしつこく正体を暴こうとされたのだ。これで何もなかったら発狂するレベルだ。エリカのその目的は果たして。

 エリカは杖を取り出した。


「戦いましょう。私とあなた。どちらの七賢人がより優れているか」


「勝負しようって言うの? なんでまた」


「この学園に七賢人がいるって聞いて許せない気持ちになったのよ。私より強い存在は許せない。私だけが頂点に君臨する存在になりたい。どちらの七賢人がより優れているか白黒つけた方が後々いいでしょ」


「私はそんなものに興味ないんだけどなぁ」


「ふーん。逃げるんだ。七賢人とあろう者が尻尾を巻いて逃げるって言いふらしてもいいんだけどなぁ」


「はぁ? 誰が逃げるって? 冗談じゃない」


「なら勝負しなさい。私とあなた。どちらがより優れた七賢人か。今、ここで証明しましょうか」


「……やるしか選択肢はなさそうね」


 ルーシェはエリカに向き合った。

 七賢人同士。女同士の避けて通れない戦いが今、始まろうとしていた。


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