2-1 学園に通うことになりました。
魔法協会が運営している魔法学校は世界に十三箇所存在する。
そのうちの一つであるウィッチエナン魔法魔術学園にルーシェは通うことになった。
魔法学校はどこも偏差値としてはかなり高い部類で勉強に加えて初級の魔法が扱えることが入学の条件である。
女であれば誰もが憧れるのが魔法学校だ。その競争率はかなり激しく毎年、入学を勝ち取るために魔法塾で鍛錬を磨く者は多い。
その中でルーシェは特別枠で入学が許可されたので意表を突く存在だ。
十三歳になり、ルーシェは本来入学可能な年齢である。
年齢詐称するようなことはなく、一般の生徒として入学することになった。
「ねぇ、テト。ジャーン。どう? 似合う? 魔女みたい?」
ルーシェは制服姿を自慢げに一周して見せつけた。
制服は魔女らしく黒を基調としたもので肌の露出は控えめでシックなデザインである。
制服からして既に魔女なことから養成学校として力を入れている部分が窺える。
「それより僕はルーシェの髪が気になるよ」
「髪? あぁ、ショートに切ったこと?」
「どうして急に切っちゃったの?」
「どうしてってこっちの方が動きやすくて楽でしょ」
「ふーん。そう。僕は前の方が良かったかな」
「普通は今の方がいいよって言うのがお世辞でしょ。分かっていないな。テトは」
「人間のそういう気遣いみたいなものよく分からないよ」
この猫は人に対する気遣いを知らない。まぁ、猫なのでそこは仕方がないこと。
「それはいいとして学校、楽しみだな」
「行きたかったの?」
「実はちょっと憧れていたの。友達だってろくにいたことがないし、皆で楽しく過ごすようなイベントをしてみたかったんだ」
「分かっていると思うけど、君はあくまで極秘任務として行くんだよ? 言い換えれば仕事だ。あまり浮かれた気持ちで行かない方がいい」
「そんなこと言われなくても分かっているわよ。命だって狙われているんだし、いざとなればババーンとやっつけちゃうんだから」
「随分、簡単に言ってくれるね。相手は七賢人を倒すほどの魔女狩りだよ? 油断するといくつ命があったとしても足りないよ」
「私はそんなすぐにはやられませんよーだ」
ルーシェはあっかんべーをして反発した。
だが、テトは見向きもしない。
それがなんだか悲しい。
「まぁ、学校に行くなら僕がこれ以上、あーだこーだ教える必要がなくなるから助かったよ。これで君は独り立ち出来るはずさ」
「あ、そういえばテトの役目って私を魔女にすることだよね。私、魔女を通り越して七賢人になっちゃった。てことはもしかしてテトとお別れ?」
「まぁ、そういうことになるね」
「嫌だよ。せっかくここまで頑張ってこられたのにテトが居なくなったら私、寂しいよ」
ルーシェは無理やりテトを抱きしめる。
力が強まり、少々苦しそうだ。
「ルーシェ。痛い。大丈夫。まだ居なくならないから」
「本当?」
ルーシェの手からテトが離れた。
「あぁ、確かに僕の役目は君が七賢人になったことで果たしている。でも、魔法学校の潜入捜査をしている間は君に付くことになっている」
「どうして?」
「魔法学校では生徒一人に対して使い魔を一匹、付くルールになっている。君も生徒の一員として入るわけだから使い魔がいないと怪しいでしょ。だから僕が使い魔役として行動することになるんだ」
「本当? じゃ、まだ一緒にいれるってこと?」
「うん。そうなるね」
「テト!」
ルーシェが抱きつこうとしたことを察したテトは高いところに登って避難した。
「まぁ、基礎的なところはこの六年で詰め込んだはずさ。足りないところは学校の授業を受ければ大体のことは掴めるはずだよ。あと、これは周りに正体を隠す必要があるからその辺のサポートや君の危なっかしい行動の制御の役目は僕が面倒を見るよ」
「うん。じゃ、これからもよろしくね。テト」
「あぁ、僕もまだまだ君のことを見たりないから良かったと思うよ」
ピョーンと高所から着地してテトはルーシェのいる部屋から出て行く。
素直じゃないのか、照れ臭いのか。少なからずテトとの生活が続くことにルーシェは安堵する。
「あ、でもこの潜入捜査が終わったらテトと本当にお別れになっちゃうのか」
いつか必ず来る別れにルーシェは複雑な心境だった。
でも、今はまだ一緒だ。今という一日一日を大切にしようとルーシェは心に決めた。
先のことより目の前のことを全力で取り組む。それが今出来る最大限のことだった。
「よし。今日はテトの好きな肉を食べさせてやるか」
ルーシェの入学という名の潜入捜査は着々と準備は始まっていた。




