1-11 七賢人にならないかと勧められました。でも裏がありそうです。
「七賢人だって!?」
テトは大きな声で驚く。
「テト。七賢人って何?」
「七賢人っていうのは魔女より上の階級だよ。七人しかなることは出来ず、魔女界では名誉ある称号さ。その存在はあまり知られておらず、本当に存在するのか疑われているような伝説的存在なんだよ」
「ふーん。まぁ、魔女では凄い役職ってことか」
ルーシェはあまりピンと着ていない様子だった。
「でも、実力があるのは自分でも認めるけど、そんなあっさりしちけんじん? みたいなもの私みたいな右も左もよく分かっていない奴がなっていいものなのかな?」
「勿論、通常であれば何年、何十年と鍛錬を重ねた者しかなれないものです。魔女をすっ飛ばして七賢人なんて特例もいいところですよ。でも、事態は深刻でね。ここからの話はどうか他言無用にしてほしい内容です。約束は守れますか?」
「はい。守ります」
「ありがとうございます。使い魔君もいいですか?」
「分かったよ」
「では、話を続けます。実はここ最近、魔女狩りというのが勃発しています」
「魔女狩り?」
「えぇ、聞いたことありませんか? 実力のある魔女を中心に殺される事件が起きています。そして先日、七賢人の一人が殺されました」
「七賢人が殺された?」
そんなことがあるのか、と、魔女業界のことを熟知しているテトは信じられない様子だった。
一体何が? その理由はマギーから語られる。
「その方はかなりの高齢でしてね。寝たきりの生活をしていました。魔法の実力は神レベルですが、歳には敵わない。いつ寿命を迎えるか時間の問題だったのですが、彼女は魔女狩りの被害に遭いました。ほとんど不意打ちのようですが、仮にも七賢人を殺すほどの実力者であるのは間違いない。彼女が最初の被害者という訳ではなく、近年少しずつ魔女狩りの被害が急増傾向にあります」
「誰ですか。その魔女狩りをしている人物は?」
「その正体は我々、魔法協会も追っている段階です。七賢人が被害者に遭ったことで魔女狩りは重く受け取っています」
「ちょっと待って下さい。マギーさん。今、魔女狩りが起こっている中でルーシェを七賢人に推奨するってことはルーシェに死ねと言っているのと一緒じゃないんですか?」
テトは反発するように発言した。
話の流れから見てそのように受け取るのも無理はない。
「確かに七賢人になることは命を狙われるリスクは高まる。だが、私らは何もルーシェに犠牲になってほしいと言っている訳ではない。その逆だよ」
「逆?」
「つまり、ルーシェには魔女として共に魔女狩りと戦ってほしいと頼みたいんです。今、魔法協会は君の実力が必要と考えています。被害がこれ以上、拡大する前に食い止めてほしいと切実に思っているんですよ」
「ルーシェを七賢人にして共に魔女狩りと戦う? 危険すぎるよ。ねぇ、ルーシェ」
「えぇ、テトの言う通り。急に『世界を救ってくれ』みたいなことを言われても困りますよ」
「勿論、まだ幼く未熟な君にこのようなことを言われてもあまりピンと来ないと思います。しかし、事態は深刻です。今すぐ答えを出してほしいとは言いません。じっくり考えた上で答えを出して頂ければ結構です」
「はぁ、そうですか」
「ちなみに七賢人の承諾をした後の話ですが、君には魔法学校に入学してもらいます」
「どうして? 七賢人は魔女のトップクラスの称号でしょ? 今更学校に通う意味はないはずですが」
「勿論。既に魔女の資格を得ているのに学校に通う意味はありません。ですが、これは潜入捜査として入学してもらいたいのです」
「潜入捜査?」
「はい。魔女狩りは実力がある者を中心に狙われやすい傾向にありますが、魔女の卵にも充分狙われます。いつ、学校を襲撃されるか分からない現状です。そこで七賢人として最初の任務は学校の生徒、全員の護衛と監視です」
「なんか、また話が重くなったような」
「これは若い七賢人だからこそ出来る任務です。ヨボヨボの魔女が学校に潜入できないですからね」
「はぁ、まぁ、言い分は分かりますが、私にそんな重要な任務が務まるんですか?」
「実力はあるんです。後はあなたのやる気次第でどうにでもなります。ちなみに潜入捜査をするに当たって報酬ですが、およそ……」と、マギーはルーシェに耳打ちした。
「そ、そんなに貰えるんですか?」
「えぇ。何と言っても七賢人としての仕事ですからね。名誉ある称号に多額の依頼料。危険が伴う仕事ですのでこれくらい受け取らないと割に合いませんからね。悪い話ではないと思いますが、じっくり考えてみて下さい。返事の期日は一週間与えます。それまでに答えを出して下さい。一週間後、再度お邪魔しますので良い返事を期待しています。今日のところはこれで失礼します」
マギーは背を向けて来た道を引き返す。
ルーシェはそれをただ見守った。
「では、一週間後にまた」
マギーはそう言い残し、帰っていった。
しばらくの間、ルーシェは難しい顔をして下を見つめていた。
それを見かねたテトは気に掛ける。
「ルーシェ。どうするの?」
「分からない。テトはどう思う?」
「僕も分からないよ。でも、魔女になるなら少なくともいずれ魔女狩りと戦うことになると思うよ」
「そうだよね」
複雑な心境の中、ルーシェはそれ以上、何も言わなかった。




