1.Prologue
何処かの部屋にて。
「入れ。」
「失礼します。」
「では、定期報告を聞こうか。」
「はい、それでは。」………。
「どうした。何かあったか?」
尋ねられた男はしばしの沈黙の後、話し始めた。
「前々より選定していました魔王候補者がようやく1人に絞られました。」
「ほう、では勇者も近いと。」
「候補者はいるのですが、今の所は決め手に欠けます。」
「ふむ。」
身なりの良い男がしばらく思案してから話し始める。
「前回の魔王の消滅から1500年経っている。今までの3倍溜まっているぞ。通常通りの勇者では負けかねん。」
「お言葉ですが、それもまた一興かと。」
「確かにな。我らにとって彼らの勝敗は影響がない。それにここ数回は研究材料が少なかった。今回は間が空いた分、いい成果を彼らに期待しよう。」
「はっ、我らの「研究」のためにも。」
「もう下がって良いぞ。」
「……失礼します。」
たった1人の部屋で、男は微笑む。
「さてと、久しぶりに忙しくなりそうだ。数十年観察し続けるのは目が痛くなるが、それもまた我らが悲願のため。」
立ち上がり、部屋の隅にある機械へ向かって歩きながら独り言を喋り続ける。
「今回はちょっと放っておいて魔王に勝たせてみるとするか。いつも勇者側が勝つのは面白くない。」
「またいつも通り、我の手のひらで踊ってくれ給え。」
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世界は廻っている。平和と戦争と、勇者と魔王。善と悪が入り混じって、それらの流れはいつまで続くのだろうか。
人々は願う。
今のような平和な日常がいつまでも続きますように。
人々は願う。
この退屈な日常に刺激がありますように。
人々は願う。
嫌いな奴が酷い目に遭いますように。
人々は願う。
あいつなんか死んでしまえばいいのに。
そして俺はあの時思った。
この世界はくそったれだ。そうだ、くそったれだ。
だから俺はあの時思った。
こんな世界、なくなってしまえ。
だけど世界というものはそんな単純なものではなかった……………。そう思うのは、もう少し先の話。