表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪人の森  作者: 未开化人
6/7

盗賊の森

 ジェネラル…いや、ブリガンはそれから懺悔するように話し続けた。


 黙って聞くしかなかった。

 話しながら泣いているブリガンを見ていると、もはや大盗賊の面影はない。

 その姿は、ただの老人である。


 「…なるほど、それでいつか森が人の助けになるようにと。」

 「あぁ、償いの気持ちで始め、盗賊の噂が薄れた頃、少しずつ森に流れ着くものが増えてな。世話をしているうちに、それが生き甲斐となり、生きる目的になった。…殺した罪は消えないがな。」

 「…。」


 ブリガンに代わって、焚き火に枝を焚べる。

 この火のようにただ自分勝手に殺しを続けたブリガンは、たしかに許されるべき存在ではない。

 その気持と裏腹に、今まで世話になった気持ち、そして森の民たちのブリガンを慕う気持ちも交差する。当事者でない俺からすれば、まだブリガンは優しく厳しいおじいちゃんに過ぎないのだ。


 「…俺は街では異端だった。人付き合いは苦手だし、おかしいと思えば立場を考えず口にしてしまうから、ギルドでも街でも嫌われ者だったんだ。信用もないから徐々に仕事はなくなって、上司にはめられてギルド辞めた。それからは街にいることすら気持ち悪く感じて、森に逃げてきたんだ。」


 ブリガンは泣き止み、黙って俺の話を聞いていた。


 「人間嫌いから人間不信さ。元々、森で暮らしていくつもりはなくて死ぬつもりだったんだ。数日彷徨って、いよいよきつくなって倒れた時、貴方が俺を勝手に助けた。目が覚めた時は絶望しかなかったんだ。死ねなかったと。それでも貴方は、俺が生きるために色々教えてくれたし、上手く出来ない時は手を貸してくれた。…今は、死ななくてよかったとすら思ってますよ。」

 「…そうか。」

 「貴方がやってきたことは、少なからず今、この森にいる人達は感謝しています。過去の過ちは一生をかけて償いましょう。この森がもっと人の助けになるように、貴方自身が自分を許せるようになるその日まで、俺も一緒にがんばりますから。」


 差し伸べた手を、ブリガンは戸惑いながらも握り返してくれた。

 初めて、本当の意味で心から感謝できたと思った。


 既に陽が昇り始める前の、闇夜で解散しようとなった。


 「今日はありがとう。もう少し、頑張ってみようと思う。」

 「はい、俺も頑張るんで、よろしくおねがいします。」


 最後の火を消して、また明日とブリガンと別れた。

 音をなるべく立てずに家へ戻り、荷物を机に置いてひっそりとベッドに入った。

 俺がいなくて寂しかったのか、ラバーはぬいぐるみを抱きながら寝ている。

 少し心細くて頭を撫でてしまったが、全く起きる気配はなかった。

 酒が入っていた事もあり、そのまま眠ってしまった。


 次の日は早かった。

 寝たのが遅かったのもあるが、ラバーが起きるのが単純に早かった。


 「パパ―、もうお日様でてるよ!」

 「…んん。おはよう…、ラバー…。」


 およそ二時間ほどの睡眠で、起き上がるとラバーが朝ごはんを作り始めている。

 体に力が入らない。暫く布団でごろごろしてからゆっくり起き上がった。

 

 「おはよう。ラバー、ありがとうね。」


 あくびをしながら頭を撫でると、嬉しそうに笑った。

 かまどに火が入っている。

 ラバーが自分で点けたのだろうか。

 

 「ラバー、自分で火つけたのか?」

 「うん! お父さんがやってたの見てたから、もう出来るよ!」

 「うーん、ラバー偉いけど、まだ火は一緒にやろうな。危ないから。」


 鍋で温めてるお湯が少なかったので、水を足して机に座る。

 昨夜の事を寝ぼけたまま、頭をかきながら考える。

 酒が抜けた今、昨日のテンションで頑張ろうとは中々言えない。


 しかも、よりによって大盗賊だったとは――。


 ラバーがお湯をコップに入れて持ってきてくれた。

 

 「はい、パパ。」

 「お、ありがとう。」


 熱いお湯を少し冷まし、少しずつ流し込む。

 酒でひりついた腹に流れ込んで、大きく息を吐いた。

 まぁ、やることは変わらないか。

 それにこの話を聞くまで、まともな人だったし本当に変わったのだろう。


 「どれ、ラバーお父さんも朝ごはん作り手伝うよ。」


 ラバーのところに行って、野菜を切り始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ