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悪人の森  作者: 未开化人
4/7

砂利の宴

 岩場に到着した。

 ここから川沿いに上流へ登っていけばジェネラルの家。

 真っ暗な森で、川の流れる音と星空だけが鮮明に刻まれる。

 不安定な足場をゆっくりと踏みしめながら進むと、焚き火の光が見えてきた。

 あちらも足音で気がついたのか、火のついた木の棒を振る。


 「こんばんは、ジェネラルさん。」

 「あぁ、わざわざすまないな。座ってくれ。」

 「はい、失礼します。」


 ジェネラルは小枝を焚き火の下に差し込んでは火を見守る。

 暫く無言が続き、俺も黙って火を見続けてきた。

 積んであった小枝は徐々になくなり、ジェネラルは両手を組んで額にあてた。


 「ジェネラル、少しですが家の酒を持ってきました。コップをお借りしてもよろしいですか?」

 「すまないな、小屋の入ってすぐ左にある。」


 尻を叩いて小屋へ行く。

 扉を開けて、立ち止まった。

 蝋燭の小さな灯りだけが部屋を照らすそこは、鉄の塊がそこら中に転がっている。

 奥までははっきり見えないが、無機質でそれでいて鋭利なそれは、それらは明らかに刃物。狩りや細工で使うそれとは違う無慈悲なものだった。

 しかし、何故こんなに大量に。仮に狩猟で使うものだとしても違和感しか無い。


 「口で説明するのが難しくてな。実際に見てもらったほうがわかりやすいだろ。」


 いつの間にかジェネラルは背後に立っていた。

 促されるようにコップを取り、焚き火へ戻る。

 これは、殺されるかもしれない。そう覚悟するのと、ただではやられないぞと決意も固める。

 ジェネラルは安心させるためか先に座り、コップを構える。

 無言で目を見ながらゆっくり腰を下ろし、持ってきた酒を注ぐ。

 一口で飲み干すと、ジェネラルは少し笑ったように見えた。


 「緊張するな。おまえさんを殺そうなんて思っちゃおらん。」

 「…。」


 どちらにせよ、老いたとはいえ狩りの腕も及ばぬのだから、考えても仕方ないとコップを前に出すと、ジェネラルも酒を返した。

 一口でいく。

 喉を焼きながら胃にふわっと燃え広がる。

 その最中もジェネラルはずっと見続けていた。


 「だいぶ、立派な顔立ちになったな。バルサン。来た時は死んだ目をしてたもんだが、子を育てて生き還ったか。」

 「えぇ、お陰様で。今はこんな生活でも楽しくやってます。子供もそうですが、」

 「なら良い。」


 コップを出してきたので、酒を注ぐ。

 壺を渡すと俺のコップにも注いでくれた。


 「あの頃では無理だったが、今のお前なら俺の仕事が出来ると思うんだが、どうだろう?」


 口にあてたコップを止める。


 「いえ、まだ無理でしょう。」

 「正直に答えてくれ。」


 真剣な眼差しを向けてきて、少し黙ってしまった。

 俺が森に来た時、ジェネラルがしてくれた事は本当に凄いと感じ、俺もそうなりたいと心から思った。。だから、生活に慣れてからはジェネラルに教わりに行くようになって、数年前からは率先して俺が代わりをする様になっていた。

 だが、無理といったのにも理由はある。

 俺はまだ森についてジェネラル程詳しくないということ。

 そして、淡々とこなすだけでそれ以上はないということ。


 「あなたがやってきた事は立派です。貴方ほど俺は器用にやっていけません。」


 ジェネラルはそれを聞くと笑顔でうんうんと頷き、酒を飲み干した。

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