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第228夜 元土地神の政宗

 幻世(うつせ)……それはあやかし達の棲む世界。その入口である“淀みの地”で最強退魔師と言われた“螢火(ほたるび)の皇子”の末裔である玖硫葉霧(くりゅうはぎり)は、その家族である現当主であり祖母の“玖硫鎮音(くりゅうしずね)”と、螢火の皇子が生きていた時代……平安時代に封印され、この平成の時代に復活した鬼娘“楓”と、そしてこの平成の時代に新たに出遭ったあやかし“お菊と浮雲番(フンバ)”と共に倒すべき存在達を前にしていた。

 アチラコチラで紅炎が燃え上がる地獄の入口の様な地で。

「やっと仕切り直しか?人間てのはやたらと談話する癖があって参る。」

 待ち望んでいたこの瞬間を前に溜息混じりに言ったのは、政宗であった。

  白い着物。右肩を開けさせて着崩している。大きなその右肩には、白い角が生えており三連の山型である。

 白い着物には柄があり曼珠沙華、別名……“ヒガンバナ”。

真っ赤なその華の柄をした白い着物姿の巨体な男は、右手に大きな鎌に似た刃をした大刀を提げている。体長は4㍍少々。

 赤茶色の髪は短髪だが、その顔は面長。至って人間と何ら変わらぬ顔立ちで、素の時はグレーの眼だが憤怒を覚えると、元土地神の力が発揮され深紅の眼に変わる。

 そして今はその象徴の深紅の眼であった。

 「大人しく待ってくれていた事には感謝する、それに驚いた。礼節あるんだなと。」

そう応えたのは自身よりも大きな体格の政宗を此方も象徴の碧の煌めく眼で見据える葉霧だった。

 はんっ。と、政宗は笑い飛ばした。

 「馬鹿にしてんのか?退魔師。それとも力量の差が計れなくて鼓舞からの皮肉か?あ?」

 ギロリ。と、元土地神のあやかし政宗は深紅の眼で葉霧を睨みつけた。低い声は響く、、、その声に反応するかの様に辺りで燃え盛る紅炎が噴火の如くその炎を噴出させていた。

 が、、、葉霧の前にずいっ。と、立ったのは楓であった。

4㍍越す巨体のあやかしを前に155㌢の小柄な鬼娘は、夜叉丸と言う自身の背丈よりも長い刃をした刀を右手に携え一歩前に立ったのだ。

 「楓!」

瞬時に葉霧の顔色は変わり名を呼んだが、楓はその声を背に受けながら言う。

 「葉霧、コイツはオレに任せろ。元土地神って時点で本来ならお前ら退魔師側で、この島国を護る立ち位置に居た奴。けどコイツは行き場を喪い腐った。そりゃちょっとは同情する、人間に棲家(すみか)を奪われてどうしようもなくなったってのは。」

 けど。と、、、楓は政宗を蒼い眼で鋭く睨みつけた。

 「そんなのお前だけじゃねーんだよ、オレらだって人間の戦に巻込まれて棲んでた森、山を燃やされて行き場を失くして来た。けど、だからってそれを人間に怒りの矛先として向けても仕方ねぇんだよ。“時代の変動”がそうさせたんだから。」

 楓が言うと、ぷはっ。と、政宗は吹き出した、、、。あっはっはっ。と、高らかに笑った。

 「やっぱお前はどっかで人間寄りだな?その思考が。人間喰らって強くなって生きていた癖にその人間に寄り添う、なぁ?変態思考?理解出来ねぇんだけど?」

 政宗がギロリと睨むと楓は、フン。と、鼻で笑い飛ばした。

 「理解して貰いたくねーし、オレは変態でもねぇ。ただ、オレの居たあの時代は変わる瞬間でもあった。貴族達から武士達への勢力、権力の遷り変り、全てが塗り変えられてゆく時代でもあった。だから、お前の棲む地が奪われた時も同等!この国が、時代が変化していたんだよ!それを奪った人間の所為にしてブチ切れて我儘言っても仕方ねぇだろってハナシ!ちゃんと視ろよ!土地神なら!時代の流れを受け止めろよ!」

 あぁ??と、、政宗は見降ろしながら深紅の眼で楓を睨みつけた。とてもイラついた表情で。そして声は一層と野太くなる。

 「うるせーよ?時代の変化?そんなモノは俺らには関係ねぇよ、間違ってんのは人間。アイツらはこの島国をてめぇらだけの世界だと思ってやがる、俺はソレに我慢効かねぇのよ。アイツらが護りたいモンを護るのと同等に俺らにもソレはある。けど、視えねぇ世界だからと、コッチが気遣って生きて居たら調子にノリやがった。奪い始めたじゃねーか、あ?」

 政宗は葉霧、そして鎮音を睨みつけた。

 「その先駆者はお前ら退魔師一族だ。ずっと奪取して生きて来た、しかもその理由は“欲”。自身の富裕を熱望し、玖硫一族と言う名を使い退治と言う名目で金稼いで生き永らえて来たよな?そのお陰でお前達はあのデカい土地構えて富裕層として生きてる、で、俺達は同じ様に搾取して来ただけ。自身の欲望を満たす為に人間を喰い殺して来ただけ、何が違うよ?玖硫一族。や?退魔師。」

 それは。と、葉霧が言葉を放とうとするとそれを遮る様に楓が怒鳴った。

 「だから!やってもいねぇ人間!しかも過去にされた事を本人に言うならまだしも!葉霧とばーさんにその怒りをぶつけんな!!」

 …………!!

鎮音は目を見開く……またもや。

 (………楓………。)

驚き楓を見つめた。楓は吠える……、小柄な身体で巨体の政宗に、全身全霊の言霊を放った。

 「受け止めてやんよっ!!向かって来い!お前の無念、行き場の無い感情!オレにぶつけて来いやっ!!」

 「………っ!」

夜叉丸を両手で握り構えた楓に政宗は目を見開いた。が、フッ。と、少し笑うと大鎌の刃をした大刀を右手で握りながら言う。

 「ああ……やっぱお前はイイね?修羅姫。」

 そう言うと、、、だんっ。と、右足で踏込み楓に向かい“間”を詰める……。その行動は秒、互いに手が届くまでの距離間に詰めていた。

 大柄な男の大刀は楓の目の前に到着すると同時に振り上げられていた。大きな鎌の様な銀色の光放つ刃で正に、頭上から真っ二つに斬り裂こうと直ぐに振り降ろしたのだ。

 「!」

楓は政宗が自身の目の前に到着したと同時に身構えており、それは素早く一刀来ると踏んでいた。だから、対峙する瞬間には足を蹴り上げ、その場から後退する様に飛んでいた。

 チッ。

政宗が舌打ちしたのには理由がある。

 ドカッ!!

振り降ろした大刀が楓を真っ二つに斬り裂く事はなく、空を斬り地面に到達したからだ。

 剛腕が振り降ろす大刀は威力があり地に刃が直撃するだけで穴を掘った。ヘコみ石灰の地が噴煙上げた。

 バッ!と、、、地を蹴り上げ後退した楓は空に浮いていた。政宗は直ぐに地面に突き刺さった刀を抜き見上げる。

 「逃げんなっ!クソがっ!!」

怒鳴りながら追う様に、ダンっ。と、地を蹴り上げ跳び上がる。楓はジャンプし大刀を両手で握り向かって来る政宗を見降ろした。

 (ブチ切れ過ぎてて隙が有りすぎんだよ、、、。)

楓はそう思いながら、空ででんぐり返し、、、直ぐに地に降り立った。

 「は??」

天に居た筈の標的、楓が離脱する様に地面に降り立ったのを知り政宗は目を見開く。が、イラついた様に眉間にシワ寄せた。

 「ナメてんじゃねーぞっ!?クソ女っ!!」

翻弄されている事に憤り怒鳴り散らしながら、政宗は自身も地に降りてゆく。

 が、、、そこには蒼い鬼火を纏う楓が待っていた。

「!!」

 空から地に降りて行こうとした政宗の眼下で、夜叉丸を右手に蒼い鬼火を全身に纏いゴォゴォと燃やす楓が居たのだ。そして降下する自分を見上げる蒼い眼は、、、憤怒に包まれていた。

 「さっさと降りて来いやっ!!」

と、、、楓は怒鳴りながら左手を向けて蒼い鬼火の豪炎を放った。チィっ。と、政宗は舌打ちし、自身の持つ大刀を振り降ろした。それは風刃を起こし向かって来る蒼い火炎放射を断ち切る様に、ズバっ!と、、、切り裂く。

 蒼い鬼火は分断され政宗の身体には触れず、空に放たれる。双肩を少しチリっ……と、燃やしながらも分断された蒼い鬼火の放射は彼から放れた空中で燃え広がった。この地の空を燃やす様に。

 たんっ。と、、、軽快に政宗は地に足を着けていた。

 へぇ?と、、楓は笑う。

「あー、ちょっとは冷静になった感じ?」

そう言いながら蒼い鬼火に纏われる夜叉丸を右肩に担いだ。あ?と、政宗は睨み返した。

 「ナメ過ぎだろ、修羅姫。」

 「今のオレは修羅姫じゃねー、楓だ。」

蒼い眼と深紅の眼は睨み合う。

 速い………。瞬間的に睨み合ったが直ぐにぶつかり合った。

お互いに直線で、その身体を斬りつけ、斬り裂こうと刀を振り上げつつ直撃したーー。

 ギャオンッッ!!

それは物凄い音を立てた。

 刃と刃がぶつかり合うだけではなく、閃光走り風までも巻き起こしお互いの力がぶつかった波動の音だった。

 !!

2人は刃をぶつけ合った瞬間にその波動で吹き飛ばされる。

 「うわ!」

楓は吹っ飛び、、、辛うじて左足が地に着いていた為、滑らせながらその勢いを止め彼方へ吹っ飛ばされるのを回避した。

 石灰の地面が粉塵上げながら楓の左足はブレーキを掛け止まる。同時に右足も地に着け着地した。

 そして、直ぐに眼を瞠る。

 (政宗は?)

そう思い同じ様に吹っ飛ばされた政宗の姿を探した。が、声は聞こえた。

 「楓っ!上だ!!」

それはーー、葉霧の声だった。

 ハッ!とした楓は直ぐに見上げた。

「死ねやっ!クソ鬼娘っ!!」

 憤怒の表情をした政宗が空に浮いており、両手で大刀を振り翳しながら怒鳴っていたのだ。

 楓は直ぐに鬼火を放つ、、、左手に。

 そして政宗を見上げた。

 「だから死ぬのはてめぇなんだよっ!!」

怒鳴りながら大刀を降り下ろしつつ降下して来る政宗に、楓は蒼い鬼火を放った。

 むっ!と、、、政宗は表情を歪め、ココで瞬時に空中で旋回した。まるでフィギュアスケート選手の様に回転し、蒼い鬼火から逃れ大きな巨体を舞う様にしながら着地したーー。 

 またもや楓の鬼火は空中を燃やすことになった。

 「てめぇ……。」

さすがに2度目。楓にも怒りが過り、、、地に降り立った政宗を睨みつけていた。

 政宗はゆらり。と、立ち上がり大刀を携えながら言う。

 「あー、今解った。お前じゃ俺には勝てねー、楓。さっさと修羅姫になれよ。」

 深紅の眼は楓を見据えていた。 

 「……………!」

 

 楓は………何とも言えぬ苦い顔をしていた。     

              

  

  

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