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第219夜 お菊

楓が“あやかし対策特殊部隊”本部長の羽村海里(はむらかいり)を助けている頃である。

 水月(みつき)夕羅(ゆら)、そしてモグラのあやかし“浮雲番(フンバ)”、“嘆声し娘”(ててなしこ)のお菊”目掛けて、壁面妖怪の進化系である“暗蛇(あんじゃ)”は壁から生える巨大な黒い両腕をまるでスネークの様に地を這わせた。

 「!!」

物理的な攻撃に彼女達は弱い、何故なら少し前まで普通の女子高校生。喧嘩などした事もない。❨彼氏たちは別❩ヌシ達にも大丈夫か?と心配される程に、戦闘には激ヨワである。

 だが、それぞれの“特性”を認められて力を授かった。けれども、目の前に猛スピードで突き抜けて来る巨大な黒い腕には微動だに出来なかった。それも、コンクリートの壁から秒速でトルネードの様に生えて来たのだ。

「きゃああっ!!」

水月の悲鳴が飛んだのは直ぐであり、彼女は身体を右手で掴まれていた。だが、咄嗟に右手だけは避けて自由が効く、とは言えだった。ギリギリと身体を掴まれ締め付けられたのだ。

 「ううっ………。」

痛さ、苦しさに顔が歪み水月は取り敢えず自由な右手で、黒い巨大な手の親指の付け根を掴み、苦しい表情で壁面妖怪暗蛇を見据える。

 (……このままじゃ……握り潰されるっ。)

そう思える程に自身の身体を掴む暗蛇の力は強かった。ギリギリと締め付けられる。 

 「離してっ!!」

 叫ぶのは夕羅だ、水月の隣で全身を掴まれ、ギリギリと締め付けられていた。彼女は右手に虹色に光るボーガンを握り締めている。2人は暗蛇の手に捕えられた。宙に浮いて締め付けられて苦しそうな2人をお菊が見上げて叫ぶ。

 「水月姉ちゃん!夕羅姉ちゃん!!」

2人とは距離が離れていて幼女は懸命に声を張り上げた。そして、お菊はギロリ。と、大きなつぶらな黒い瞳を向ける。壁面妖怪……暗蛇に。

 尖るナイフの切っ先の様な眼で幼い子供は睨む。

 「許さない………っ。」

そしてー、座敷わらしの様な姿をしたあやかしであるお菊の身体は、ゴォォォ……と黒い炎に包まれた。幼女の身体を燃やす様にその黒炎は包み込んだのだ。

 ハッ。としたのは隣に居たフンバだ。

帯の代わりである腹巻きの背に挿してある“でんでん太鼓”が、鳴り響いたからだ。

 でんでん……、でんでん………。

でんでん太鼓はフンバが操作しないと意味が無い。お菊の意識を乗っ取り“悪意に満ちたあやかし”に变化させ人間を操るか、喰い殺すかして来たのだから。

 (な……なんスか??)

モグラは驚いた。勝手に鳴り響くでんでん太鼓の音に。それも、徐々にその音は大きくなり和太鼓並みに強く響き始めた。

 でんでんでんでん……から、いつの間にかドンドンドンドンっ、と、太鼓を叩く音になったのだ。それも一定のリズムで。

 フンバはでんでん太鼓を抜き取り掴み見据えた。

狂った様にでんでん太鼓を叩くバチ、何もしてないのに勝手に太鼓を叩く。

 そして、、、ドンドンドンドンっ。

凄まじく低く何処からともなく太鼓の音が響く。

 ゴォォォ……。

黒炎に纏われし幼女は空中に浮かび、右手を壁にめり込んだ壁面妖怪……大入道の如く顔面だけ壁に浮き彫りになった者に向けたのだ。剥製の様に浮き彫りになった壁面妖怪の顔面は薄気味悪く、人間の顔面に似てるが大きな両眼がギョロギョロとしていて、やはり何処か人間とは異なる。何よりもその肌の色だ、赤褐色で人間の肌色とは違う。不気味で大きな顔面が壁に浮いている、お菊は黒炎纏いながら右手を向け、宙に浮いたままに言った。

 「暗蛇(あんじゃ)、2人を解放して。じゃないと滅っする。」

ゴォォォ……と、お菊の右手に黒い炎が纏う、それは豪炎の如く凄まじく燃え盛る。

 何故か……是迄、何も言わぬだった暗蛇が口を開いた。

 「“嘆声し娘(ててなしこ)”、覚醒おめでとう。と言うか……、ちょっと幻世(うつせ)の風入っただけで変幻するとはな?我慢してたの?」

 壁に浮き彫りになった暗蛇の声はドスが効いていて、低く地から響く様であった。けれども怯む事もなくお菊は黒炎纏う右手を彼に向けながら淡々と答えた。

 「さぁ?私は知らない。と言うよりも……?」

 お菊がそう言った後、、、彼女の背後にポゥ、ポゥ、ポゥ、と、幾多もの蒼白い光の塊が浮かび上がった。暗蛇はそれ等を見て目を丸くする。何故ならその光は人影に変わったからだ。その姿は様々で、戦国武将からお菊同様の戦国時代の幼児や、戦争孤児、戦争に駆り出された兵士達等の亡霊が浮かび上がったからだ。そしてその“魂”はお菊の守護霊の様に彼女の周囲を纏ったが、直ぐに五芒星を組んだ。

 鮮やかにお菊の周りで亡霊達は五芒星を組み、右手で印を結ぶ。五芒星は鮮やかに白い光を放った。

 その光を背に受けながらお菊は黒炎を全身に纏いながら暗蛇を見て言う。

 「滅する。お前は冥府に行くべきだ。」

 「は??お前は何者だ?」

 暗蛇が言うと、お菊は右手を天井に向け差し伸べた。

 「知る必要は無い。」

ドンドンドンドンっ、フンバの持つでんでん太鼓が仕切りに音を奏でる。煩いぐらいにバチが太鼓を叩き和太鼓の音を立てる。

 (お菊っ!)

フンバは暗蛇を前に何故か豹変してしまったお菊に戸惑うばかりであった。

 お菊は、、、言う。黒炎纏った右手を天井に向けながら。

 「“死理(しり)”。」  

 カッ!!

 天井に先ず黒い炎は放たれた。

そしてーー、天井からゴォォォと炎は焼け広がり壁面妖怪にその黒炎は届く。だが、ボッ。と、燃え移り焼けるのだがそれは直ぐにどうにかしてくれるモノではなかった。

 「いギャァァァっ!アツいっ!アツいアツいっ!アツいっ!!」

 暗蛇の顔面は黒炎に包まれ焼かれてるのだが、それだけ。つまり、消失させてくれない、ただ……焼かれる。その時間が流れる。お菊はそれを眺めていた。

 「そう簡単には死ねないよ?さっさと解放しろ。2人を。」

 そうーー、未だ水月と夕羅はこの暗蛇の手で捕えられていて苦しんでいる。だからお菊は冷めた眼でそう言ったのだ。

 うぅぅ……。

暗蛇は黒炎で顔面焼き尽くされながら呻き声を上げた。

 「わ……解った!解ったから消せっ!!」 

 そしてーーお菊は、言う。

「楓っ!!」

 とーー。

 その一声………、黒炎に纏われ焼かれる壁面妖怪暗蛇に、楓はお菊の声を聞き夜叉丸を握りだんっ!!と、地面を踏みつけ飛んだ。

 夜叉丸を振り上げ空中から怒鳴る。

 「冥府に逝けや!!」

そして、、、黒炎で焼かれる暗蛇の顔面を額から顎まで真っ二つに斬り裂いた。

 ズバァッと。

 カッ!!

蒼白い光を放ちながら暗蛇の顔面が揺れ動く。

 「うぅぅ……クソ……でも……これで終わると思うな……っ!」

そんな言葉を吐き捨てつつ暗蛇の顔面は、ボンッ!と、破裂し爆発した。

 「……やった………。」

 お菊は……消滅した暗蛇を前に安堵の息を漏らしたのだった。

     

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