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第218夜 闘う少女たちと闘う女、鬼娘

 “東京都”には未だ廃線となった線路、使用されてない下水道が地下深くに残っている。ここ、“東京都臨海副都心皇海(すかい)街”も同様で、楓達が居るのも昔に使用されていた地下鉄の線路である。だが彼女達が立ってるコンクリートの地面に線路らしき面影は無い、何故ならココは“本線”ではなく本来なら壁になってる場所だ。廃線となってる線路はこの脇にしっかりとトンネルとして残っている。この場所は勝手に出来た空洞でありトンネルだ、楓が壁を突破り空洞を作ったのである。

 そして………勝手に作ったトンネルは当然開通などしていない、通行止めになっている。楓が吹き飛ばされた所まではトンネル化してるがその先はコンクリートの壁面で塞がれている。だが、“羽村海里(はむらかいり)”達、あやかし特殊部隊がココに居るのは線路側からコンクリートの壁面を崩し穴を開けたからだ。その穴は今もまだ空いているのだが、誰もそんな事に興味など示さない。何故なら目の前には“壁面妖怪”と言われる暗蛇(あんじゃ)の顔面が、まるで巨大壁画の様にあるからだ、壁画の様に平坦な物ではなく顔面は動物の剥製の様に浮き彫りになっている。大きな顔面が壁に突起物の様に浮き彫りになり、白い両眼がギョロギョロと焦点定めようと楓達に向けられている。

 1言で言うと気味が悪い。であろう。

壁1面に巨大な顔面……、コンクリートの壁面はオレンジ色の灯りに照らされておりそれと同色。頑固そうな親父顔、顰めっ面の暗蛇の顎には黒い髭が生えている。けれどもそれは海里が言う様に1本、1本が黒い蛇なのだ。そうまるでメデューサの頭髪の様にうようよと動き、シャーっ!と、牙だらけの涎垂らした大口開けて威嚇する。

 当然、威嚇されるのは楓達だ。顎髭は兎に角長く多く、黒い蛇達は身体こそは小さいが、体長は一般的なストローの長さ程度はあり、その小さな口を牙向き出しで何十匹が顎から這う様に伸びて、キシャーッ!と、威嚇するのである。

 「まじで無理。」

爬虫類系は苦手なのか……黒スーツ、スレンダー美人の羽村海里はリボルバーの銃口をその黒蛇達ではなく、壁画の様に浮き彫りになっている暗蛇の額に照準合わせた。そして、海里は右手で握っていたリボルバーを両手で握り、冷たい眼を向けながらガンっ、ガンっ!ガンっ!……撃った。リボルバーの銃弾は6発、それを完全に放ったのだ。弾丸は蒼い光を纏いながらロケット花火の様に壁面妖怪暗蛇の額に撃ち込まれた。

 だが、それを見て楓が血相変えた様に怒鳴った。

「や?まじ何してんだっ!?クソ女っ!!」

「え!?」

 と、海里はその怒声に驚き楓に顔を向けたが、彼女はもう自分の事も壁面妖怪暗蛇の事も見ておらず駆け出していたーー。

 「伏せろーーっ!!」

夜叉丸を握り楓は夕羅、水月、そして……海里の部下達に向かって怒鳴ったのだ。

 え?と、海里は目を見開くが、その直ぐ後だった。

ぐむむむ……、と、壁面に嵌め込まれた様に顔面突き出してる暗蛇の眉間に縦ジワがギュギュっと寄り、このトンネルを照らすオレンジ色の灯りと同色の肌は直様に真っ黒に変化し、壁画の様な顔面の両脇から伸びていた黒い両腕が挙がる。

 「!?」

海里はその状態だけで何か。が、来る。と、瞬時に察した。けれども、何も出来ずであったーー。

 発光する。

何も言わぬ壁面の顔面が……橙色に。そして、黒い両腕が地に振り降ろされ、ガンっ!!と、地が地震の如く揺れそれはまるで波の様に揺らぎ、海里の身体を地から天井まで吹き飛ばした。

 「きゃあっ!!」

彼女の身体は飛ばされコンクリートの天井にまで突上げられ、ぶつかった。ガンっ!と、背中から。

 ぐっ!

大きな衝撃が背中に流れ、背骨がゴキっ!と、嫌な音をたてたのを聞いた。そして……

 ゴホっ!

海里は天井に一瞬、磔にされながら血を吐く。けれども、直ぐに身体は急転直下。地面に頭から落下していた。

 「!?」

 (死ーーーーー!!)

海里は意識だけはあり、眼はコンクリートの地面を捉えていた。

が、、その眼下を黒い光のトルネードが突き抜けた。自身の足元を疾風の如く、黒い竜巻は突き抜けた。

 「えっ!?」

 この速度と高さから落下すれば恐らく自身は頭を打ち……死ぬだろう。と、瞬時に思っていた時に……。

 「きゃああっ!!」

 「水月っ!!」

海里の耳に悲痛な声達が響く。そして爆発音も。その声に目を向けても自分の身体は落下している。それも有り得ない程の風圧で身体が言う事を効かないのだ。 

 彼女達の悲痛な状況など把握出来ない。すると、、、、。そこに蒼い光が目に入った。

「クソが!世話が焼ける!お前みてーな人間はまじで嫌いだ!!」

 そんな声が聴こえたのだ。落ちながらそれが白い角を頭に生やした楓であり、跳び上がって来た事で胸元から浮いた蒼い勾玉が柔らかく光っていたのが視界に飛び込んで来たのだ。

 更に落下する自身の身体は鬼娘、楓に空中で受け止められた。地面に叩きつけられる事を回避したのだ。

 楓は、海里の身体を荷物の様に抱えお姫様抱っこ状態で受け止めていた。

 「は??」

海里はとても驚いた顔をした。

 (は??え??お姫様抱っこ??初が鬼娘ってどーなのよっ!?)

 そうーー、彼女は“鉄壁”と言われる女で……25歳なのだが、彼氏居ない歴も同様である。そんな事は楓は知らぬ、浮遊などの風の力を借りながら急降下を避け、天井が崩落しコンクリートの破片で埋まる地に静かに降りた。

 そしてーー、投げた。

「は??」

 地面に降りた途端にお姫様抱っこしてた手は離れ、海里の身体は落下したのだ。尻餅ついた彼女がムッとして楓を見るが、彼女は夜叉丸を握り言う。

 「見ろよ?お前のさっきの攻撃なんか効いてねー。」

え??と、尻餅着いたまま海里は楓の言葉を聞き暗蛇に目を向けた。そしてーー彼女は驚愕する。

 「は??」

海里は尻餅付いていたが、立上った。そして、直ぐにリボルバーに銃弾をこめる。

 「有り得ない……、霊弾よ?」

何故なら……暗蛇の額は6発の銃弾受けた風穴が空いておりしかもシュウゥゥ……と、白い蒸気放ちながらその風穴が塞がってゆくのだ。海里は、なんなの?コイツ……と、目を見開く。楓は、はぁ。と、溜息零した。

 「現世(げんせ)に巣食うあやかしで、“進化した異形種”……聞いた所によると“狂変種(クリーチャー)”とかって言うんだってな?けど、コイツらは退魔師しか殺せねぇ、オレらは倒す事は出来るが完全に殺す事は出来ねぇ、いつかまた復活する。魂が徘徊して“人間の闇心(やみ)”を喰らって生きるから。現世(げんせ)のあやかしは幻世(うつせ)のあやかしより厄介なんだよ、、、。進化するし復活する、人間の闇心を餌にしてるから。」

 え?と、、、海里が聞くと楓は回復して行く暗蛇を眺めながら言った。

 「特に今の時代は人間の闇心(やみ)が強大で、オレらの時代の闇心より深淵エグい。だからコイツらもそれを喰ってるから進化して力も凶悪だ……、わかり易く言うと幻世(うつせ)のあやかしは武闘派、現世(げんせ)のあやかしは特質で時代と共に変幻する。」

楓はそこ迄言うとちょっと真剣な顔をした。

「退魔師ってのは……そいつらを殺す為に生きてる、オレら生粋の鬼、あやかしは面倒な連中は相手にしねぇし、根本的に人間がソイツらに喰われようが巣食われよーが気にしねぇからな、けど……あの頃とは違う。力が物言う時代は終わってた。」

 楓の憂いた目と何処か……力無く言う言葉に、海里は目を丸くした。

 「この時代で貴女達は同族喰いをしないの?」

楓はそれを聞き海里を見て言った。

 「同族喰いをして終わるならするよ、けど喰って殺して力の差を見せつけて何になんの?コイツらはこの時代でほぼ無敵なんだよ、解かんねぇかもだけど。」

 海里は………。黙った。そしてリボルバー握りながら思う。

 (……あやかしを強者にしてるのは……私達…人間??)

ちょっと極端な……思考が働いていたのだった。 

      

   

 

 

 

  

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