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第217夜 闘う少女たち④

 「えっ!?」

夕羅は壁を突き抜けてまるで黒い大蛇の様な巨大な腕を見据えて目を見開く。

 「どーゆうことっ!?壁から出て来たのに擦り抜けてるんだけどっ!?」

 そうーー、蛇の様に長く勢い良くコンクリートの壁から出て来たその巨大な黒い腕。だが、コンクリートの壁は一切傷ついてなどいない、まるで透明人間の様にその腕は壁を擦り抜けて生えて来たのだ。すると、“浮浪雲(フンバ)”が言った。小さなモグラは夜叉丸携え向かって行く楓と暗蛇を紫色の眼で見据えながら。

 「“暗蛇(あんじゃ)”は元々、“ぬりかべ”、“目目連”と等しい妖怪だったでやんす、けど……“闇喰い”の力が大きくなって来て“人間の霊魂”を集合体とする“大入道”系に変化……、や?“進化”したんス。」

 フンバが言うと水月が、あ。と、目を丸くした。

 「ぬりかべは知ってるわ、、、昔、アニメで観た気がする。え?でも……進化ってどうゆうこと?」

 すると、お菊が言う。

 「ああ……そうか、“泥人形”❋❨第2巻参照❩とか……知らないんだね?お姉さん達。あの時は……“沙羅姉ちゃん”だったか。」

 淡々と言うお菊に夕羅は戸惑った顔をした。

 「ねぇ?ごめん……話の途中で。お菊ちゃん……なんかだいぶキャラ変してるけど??」

 すると、お菊は夕羅を見た。黒髪おかっぱ、紅い紅葉柄の着物姿の5〜7歳程度の幼女である。お菊は。

 無表情で淡々と大人びた口調で話すお菊に夕羅は戸惑ったのだ、何時もはやっぱりクールフェイスだけれども、葉霧と楓の前ではそれなりに子供っぽい顔をするからだ。無邪気な笑顔とまでは行かないが、こんな冷淡な口調ではない。けれども、お菊は黒い瞳で夕羅を見て言う。

 「あたしは“嘆声し娘”❨ててなしこ❩……戦で親を亡くした子供達、奉公と言う名目で売りに出された子供達の怨念が産み出した妖怪。殆どが飢餓と病、折檻と言う名の拷問で死に絶えた。不運にも預けられた家が戦や情念に巻き込まれ死ぬしかなかった子供達も居た、そんな子供達の浮かばれない霊魂があたしを産み出した。」

 え?と、夕羅は目を見開く。

「………。」

 水月は彼等との出遭いを覚えている、なので俯いた。何しろ、お菊は初めて会った時、葉霧を殺そうとしたのだから。

 それを覚えているし彼女の境遇も楓、フンバから聞いて知っている。だから水月は俯いたのだ。

 「あたしの生きる道、産まれて来た意味は“人間への憎悪の解放”、あたしの中に居る報われず亡くなった子供達の念が復讐しろと言う、喰い殺せと言う。それをしないとあたしの存在理由は無い、でも、楓と葉霧に会ってそれをしなくても生きて行ける事を知った。」

 ……………。

夕羅は驚愕と言う顔をしていた。目の前に居るのは自身より遥かに幼い子供だ。だが、存在理由。そう言われて彼女は眼を丸くし瞳が揺らぐ。動揺してる心情を表現するかの様に。

 そしてーー、動揺する対象の幼子ははっきりと物申した。

 「だからあたしは生きてる。でも……。」 

そして、憂いた顔をした。俯き加減でお菊は言う。

 「“政宗”……”紫鳳(しほう)“が幻世から出て来た事で、瘴気が流れ込みあたしの身体に纏わりつく。さっきも言ったけど、瘴気は意志がある。あたしの心に巣食おうとしてる、、、あやかしとしての本性、真性を引き出そうとしてるんだ。“殺せ”と……さっきから訴えて来てる。」

 お菊が言うと夕羅は、え?と、目を丸くした。そして水月も悲しそうな顔をした。

 「お菊ちゃん……。」

 (そんな事させたくない、どうしたら止められるの??)

水月はお菊を護ること、解決策を思考に過ぎらせていた。可愛い娘だ。葉霧と楓に会いに行くと何時も歌舞伎揚を手にして迎えてくれる。そんな愛くるしい娘、、、それが水月の中のお菊だ。そして、今回も楓の為に駆けつけた。“葉霧のピンチ”には薬を手にして怖いのを吹き飛ばし、駆けつける可愛い娘である。

 ぎゅっ。   

水月は手を握り締めた。

 (そうだ……守らなきゃ。この可愛い娘を。その為にも聞かないと……。)

 水月はお菊を真っ直ぐと見つめて言った。

 「お菊ちゃん、ねぇ?どうして貴女は人間を食い殺さなくても平気になったの?それは葉霧くんが退魔師だから?」

 あ。と、お菊は直ぐだった。

 「違う、楓の持ってる“蒼い勾玉”……、アレの傍に居ると心が鎮まるんだ、と言うか……落ち着く。穏やかになる。浄化された感じになるんだ。」

 お菊が言うと水月は少し気難しい顔をした。

 (蒼い勾玉……、そう言えばさっきも光ってた……、それで撃たれた楓ちゃんが起きた……、それだけじゃなくて楓ちゃんの傷ついた身体が治ったのよね?)

 水月はう〜ん。と、悩む。

 (あーもう!灯馬と葉霧くんが居たらなんか解決しそうなんだけどっ!?いやいや……私は依存症か??落ち着け!兎に角、楓ちゃんの蒼い勾玉……、そんでそれがお菊ちゃんにも影響してる……、何か……コレ……あやかしにも効くんじゃない?)

 水月はそう思ったのだ。 

 

 ❋❋❋❋❋❋❋❋❋

 そしてーー、夜叉丸を握り駆け出した楓目掛けて大きな黒い5本の指はパー状態で伸びて来る。捕らえようとして。 

 (奇妙過ぎんだよ!コイツ、何者だっ!)

楓は、フンバ、夕羅達の会話など聞いていない、なのでこの異形の者の素性など知らない。けれども、彼女は飛ぶ。 

 だんっ!

楓は身軽だ。鬼は疾風、風の跳躍を有効的に扱う。彼女が地面を蹴り跳び上がれば飛んだ様に空を舞う。4〜5㍍の跳躍などお手の物、伸びて来る巨大な黒い腕を難なく躱した。けれども、楓は直ぐにくるり。と、宙ででんぐり返し。だんっ!と、天井を蹴り落下する。

 黒い巨大な腕は楓の真下を這う様に伸びていた。銀色に光る刃、鋭い刃先を持つ日本刀に形状似た夜叉丸を両手で握り降下した。

 「うらぁっ!!」

楓は黒腕を突き刺した、夜叉丸の刃は捕まえようとした腕が槍の如く突き刺されその刃は地面にまで到達しており、貫通し身動き出来ず、5本の指は何かを捕らえようとグー、パーと握り開きを繰り返していた。

 楓は、貫通する程に突き刺した夜叉丸を抜き、彼の腕をジャンプ台の如く左足で蹴り跳ぶ。

 くるり。と、空中ででんぐり返しすると、たんっ。と、地面に軽々と着地した。

 ぐぅ……。

何処からともなく呻き声が聞こえた。男の地響きに似た声だ。楓はそれがコンクリートの壁面からだと気付いた。はっ。として壁面に目を向ける。すると、夜叉丸で突き刺した腕は申し訳程度に血飛沫上げながら何ら致命傷など喰らっていない様子で退いた。

 シュルシュル……と、本当に蛇の様に。

 (ほぉ?問題ナシかい。)

楓は血は噴き出していたのに自然と動いた巨大な腕を眺め、夜叉丸を握り締めた。

 ずぅぅぅん。

地響きと地鳴り、そして……地が揺れる。

 は??

楓は足元が揺れて驚く。直ぐに振り返り叫んだ。

 「お前ら!地に伏せて頭を守れっ!!天井崩れんぞ!!」

そうーー、水月達に向けて怒鳴ったのだ。

 えっ!?と、水月は直ぐにお菊に腕を伸ばした、彼女の頭を護る様に抱きしゃがみ込む。そして……モグラのフンバは夕羅の肩に飛び乗ったのである。肩の上で頭を抱えしゃがみ込んだのだ。夕羅は、それを見て彼を掴みぬいぐるみの様に抱きしめた。

 (危機管理が素晴らしいモグラだこと。)

ちょっと呆れたのだ。 

 楓は気配に、またもやはっ。として直ぐにコンクリートの壁面に目を向けた。

 出て来たのだ、、、暗蛇の本体が。

「…………!」

 楓は目を見開く。

コンクリートの壁面ににゅっ。と、浮かび上がる大入道の巨大な顔、そしてその両脇からは蛇の様に長い黒い腕。

 “暗蛇”は壁や地面を自由に行き交うあやかしだ。“壁面妖怪”の進化系でその力は実際に見ないと解らない、文献などではもう役に立たない。

 だが、楓の心配は杞憂に終わった。揺れは引いたのだ、そして“あやかし特殊部隊”……本部長の羽村海里(はむらかいり)は、目の前のコンクリートの壁面を埋める程、大きな顔がにゅっ。と、出て来たのを見て目を見開く。

 「な………なんなの??」

 それも大入道……、ギョロギョロとした大きな不気味な両眼は真っ白だ。瞳すらない。なので何処を見てるか解らない不気味な眼だ。顎には髭が生えてるのだが良く見ればモジャモジャ動く。ひっ!と、海里は咄嗟に怯みつつリボルバー向けた。

 (蛇っ!?)

そう、顎に生えた髭は蛇。大量の黒い蛇がうようよ、モジャモジャとミミズの様に動いている。

 (気持ち悪い。)

海里はそう思った。更に剥製の様に壁から浮き彫りになった大入道の両脇からは壁を擦り抜けて伸びる黒い巨大な両腕が、ずがぁんっ!と、地を叩いた。

 「きやっ!!」

 水月、夕羅はその反動で地から勝手に足が離れ軽く跳び上がった事に驚いた。

 「何??」

夕羅は1ジャンプした後、地に足を着けて眼を丸くする。

 それは海里もで、彼女は動揺と言う名の心弱に囚われ片膝着いていた。

 はぁ……と、地面に足を着け手で地を触りほっ。とした様な顔をした。

 「な……なんなの………。」

海里がボヤく様に言うと楓が夜叉丸握りながら言った。蒼い発光した眼は暗蛇に向いている。

 「お姉さん、頼むから大人しくしててくんね?じゃねーと守れねーわ。コイツからは。」

 え??と、海里は楓に眼を向けた。蒼い勾玉の光が彼女の胸元でずっと光っている。海里はその光を眺めながら言った。

 「貴女………なんなの?」

楓はその問に、フッと笑い答えた。

 「鬼です。」

と。 

 「…………!」

海里は目を丸くしたが、楓は胸元で蒼く光る勾玉をぎゅっ。と、握り締めた。 

 (葉霧……ごめんな?まだソッチに行けそーにねぇわ。)

楓はすっ。と、勾玉から手を離し壁画の様に顔を出した大入道と、その両脇から生えてうようよと動く黒い巨大な両腕を見据えていた。

 

 そしてーー、水月、夕羅はそれぞれ戦闘態勢に入ったのである。            

  

  

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