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第216夜 闘う少女たち③

 「は……羽村本部長っ!!」

“あやかし特殊部隊”である“DST”の面々は、マシンガンの銃弾で撃ち抜かれ全身が蜂の巣の様に風穴開き、そこから鮮血を溢れ出す鬼娘楓を見ていたのだが、胸元に提げてある“深蒼(しんそう)勾玉(まがたま)”が柔らかな蒼い光を放ち更に地面に投げ出されてる彼女の腕の先……、長い爪生えた指先がぴくり。と、数本動いたのを知って取り乱したのだ。直ぐにマシンガンを構え撃つ体制を整えた。

 海里(かいり)はその声に、ハッ。としてリボルバーの銃口を楓に向けた。狙うは鬼の生命の源である“角”。けれども彼女は混乱していた。

 (“霊弾”で排除出来ない??そんなバカなっ!あの“娘”が計ったとは思えない。だが……この感じは……生きてるっ。)

 チッ。と、海里は舌打ちするとリボルバーの銃爪を引いた。ガンッ!と、銃弾が倒れてる楓の額に生える白い角目掛けて飛ぶ。だが、それよりも早く……むくり。と、楓は起き上がったのだ。海里の放った銃弾は標的を失い、コンクリートの地面にぶち当たった。風穴が地面に開く、シュウウウ……と、硝煙がコンクリートの風穴から沸く。

 血だらけの楓は、ん?と、きょとん。としながらまるで寝起きの様な顔で身体起こし、よいしょっ。と、右膝に手を掛けながら立ち上がった。周囲を見る事もなく平然と彼女は愛刀夜叉丸を右手に握りながら立ったのである。それを見て、マシンガンを構えていた男達は怯んだ。

 「なっ………!」

 「バカなっ!霊弾で何十発と受けてる筈なのにっ!」

じり。と、彼等はマシンガンを構えながら、1人、2人……そしてほぼ全員が後退したのだ。青褪めた顔をしながら。

 海里はリボルバーを向けながら叫んだ。

「お前は何者だっ!?是迄のあやかし達は霊弾で確かに死んだ!何故、お前は死な………っ!!」

 海里は叫んでいた言葉を途中で飲み込む事になった。何故なら目の前で立ち上がった楓の全身に開いた筈の銃撃による風穴が塞がっていくからだ。それも猛スピードで。

 「は??」

海里は驚き……リボルバー握る右手から力が少し抜けてしまった。驚愕と言うべき光景に彼女の眼は見開くばかりだ。まるでコマ送りしてるみたいに、楓の身体の風穴は塞がり術後の様に綺麗になってしまった。本当に秒速の出来事であった。

 すると……マシンガン構えていた特殊部隊の1人が狼狽えたのだ。

 「ば……バケモノだっ!やっぱりコイツらは化物だっ!!」

男はそう叫ぶ。周囲でマシンガンを構え、楓に照準合わせてる男達も口々に言う。

 「有り得ない……、あれだけの霊弾受けてまともとか……。」

じりっ。と、言って直ぐに足は自然と楓と距離を取ろうと下がった。

 「尋常じゃない………、コイツらはやっぱり害悪だ。」

信じられないと目を見開きながらやはりその足は後退する。そして、、、その部隊の中でも若い人間達は、途端にわぁぁっ!と、発狂しその場を離脱し始めたのだ。

 「待てっ!!」

叫んだのは海里だった。彼等は揃って夕羅達が歩いて来た入口の方へと向かって走りだしたのだ。何故なら楓が突き破り出来たトンネルでありこの先は……壁。通行止である。けれども、海里は右腕に嵌めているウォッチがさっきからピコン、ピコンと音を立て画面が点滅してるのを知っていた。彼女はそれに目を向ける。自身の立つ位置がマップ画面に☆印で蒼く点滅している。そして、、、直ぐ近く×マークの紅い点滅。海里は夕羅達を通り過ぎて逃げる男達に目線向けた。焦った様に彼女は叫ぶ。

 「待てっ!戻れっ!!」

と、、、言った直ぐ後だった。

 海里の左横、背後からぶわぁっ!!と、強い疾風が通り過ぎたのだ。海里は目を丸くしたが、それが黒い巨大な腕の様なモノで逃げ惑う男達を一括に掴んだのを知った。

 「!!」

纏め上げる様に1掴みでその黒い手は男達を捕らえたのだ。

 「うわぁっ!」

 「ひぃっ!」

直ぐに聴こえるのは苦しそうな男達の声であった。海里は目を向け叫んだ。

 「やめろっ!!彼等を離せっ!!」

リボルバーを向けた。背後から伸びて来た巨大な腕に向けて。だが、男達は黒い大きな手で一纏めにされ、ギリギリと締め付けられ握り潰されたのだった。  

 うぎゃあっ!!

悲痛な声がトンネル内に響き渡り、黒い巨大な手で握り潰された男達は鮮血を降らせ肉片までも飛散させ木っ端微塵になった。

 ガシャン!カシャン!

音を立てて落ちたのは彼等を護る筈のマシンガン、ヘルメット、防弾チョッキだった。その他は粉砕してしまい血と肉片がビチャ、ビチャとコンクリートの地面に飛んでいた。

 ぬっ。

と、、、握り潰した巨大な手はパーに開くとシュルシュル……と

蛇が巣穴に帰る様に瞬発力良く退いた。

 また、海里の左横がぶわぁっ。と、強風巻き起こる。巨大な黒い腕が退いた瞬間だった。

 「…………なんてこと…………。」

海里はコンクリートの地面に転がるマシンガン、ヘルメット、防弾チョッキを見て目を潤ませていた。

 そして………楓は蒼い勾玉の光を放ちながらそんな海里を見据えた。右肩に夜叉丸の長い銀色の刃を乗せながら。

 「あ〜…と?すみません……何がどーなってんの??つか、今のは何?んで?貴女様は何者??」

 蒼く発光していた。楓の眼が。何時もの戯けた様な軽い口調だが、その眼は羽村海里を睨みつけていた。 

 「……………っ。」

海里は楓を見つつ、ピコン、ピコン。と、右手で音を鳴らすウォッチに軽く視線を向ける。

 (“あやかし探知”はまだ作動してる……、さっきのはまだ居る。それにこの周辺にはまだ他のあやかしも居る。)

 海里はちらっと現存してる部隊の面々に目を向けた。彼等は皆、マシンガンを降ろしその場に立ち尽くし青褪めた表情だった。仲間が殺された……、その現実に戸惑ってるそんな様子だった。海里は、ぎゅっ。と、リボルバーを下げそしてそれを握り締めた。

 (ムリね、今の部隊に覇気は無い、と言うか……完全に心を折られてる。ここは……この鬼娘、それと………。)

 海里はモグラのフンバ、そしてお菊、水竜、水月、夕羅に視線を向けた。

 (……彼女たちに力を貸して貰わないと全滅する。きっと。)

“あやかし特殊部隊本部長 羽村海里”の結論は出た。部下が死んで彼女の脳内はクリア化された。

 リボルバーを下げ楓を見て彼女は言う。

 「協力して欲しい、貴女たちに。私は……“来栖宗介(くるすそうすけ)”の上司であり、同じ部隊なの。ここにあやかしが居ると知って乗り込んだのよ。」

 すると、夕羅がボーガンを握ったまま言う。既に彼女を標的にはしておらずきちんと下げている。

 「は?さっき楓を殺すみたいなこと言ってたよね?つか、貴女の部下を殺した奴はなんなの?」

 夕羅は見ていたが……一瞬の事で手も出せず驚くばかりであった。だからこそ聞いた。

 「それはあやかしだとしか言えないわ。」

海里が言うと、ピコン、ピコン。と、右手のウォッチが音をけたたましく鳴らし始めた。最初は、リズム刻むピコン、ピコンだったが、今はピコンピコンピコン……と、警戒音の様に鳴らす。海里は振り返った。後ろを。

 「!?」

そして彼女は目を見開く。

 (え?さっき……ここを通って消えたのよね?あの黒い巨大な腕は。何で……穴1つ開いてないの??)

 背後にある硬そうなコンクリートの壁面は傷1つなく崩れてもなく綺麗な形状でそこにある。だが、この壁の中にあの黒い巨大な腕は消えたのだ。

 (どーゆうこと!?)

海里は次から次へと起きる奇想天外な現状に混乱が勝り、頭を抑えた。項垂れる。

 (………あやかし。只の“妖怪”では無い?伝承も昔語も何の意味も無い?解らない事ばかりだわ。)

 すると、楓が同じ様に壁を見据えて言った。

 「この壁から出て来たと?お菊、フンバ。」

楓はそう言ってから傍に居るモグラ、そして座敷わらしに似たお菊を見て言った。

 「お前らどー思うよ?」

すると、“お助け隊”の鉢巻してるフンバが言う。

 「瘴気がさっきからすげぇんですわ、、、あの、“政宗”、“紫鳳(しほう)”が来た事でここは瘴気で充満してます、えと……さっきのはこの現世に居るあやかしの塊。怨念が集まってカタチになった。つまり、集合体でやんす。」

 フンバは御用提灯を握り締め楓を見上げた。彼の紫の眼は揺らぐ。

 「フンバ?」

 楓はちょっと落ちてる様な彼に心配そうな目を向けた。フンバは、人間で言う所の陽キャだ。お祭り男と言っても過言では無い、常に仲間達を盛り上げる、陽気なモグラだ。だが、今の彼は目を伏せ塞ぎ込んでいた。

 「……目に見えて狂気放つ連中より地の底で待ってる奴らの方がおっかねぇんです。そう言う奴等は感情を持ってねぇので、、、何も届かない………。」

 ん?と、楓はフンバを見て言う。

 「どしたよ?何か思い出したか?幻世(うつせ)に居た時の事とか?」

心配そうに聞く楓にお菊が言う。

 「違うよ、楓。あたしもフンバもさっきの奴、知ってるんだ。」

 え?と、楓はお菊を見て目を見開く。お菊はフンバが俯くのを見ながら言った。

 「フンバの親を殺した“暗蛇(あんじゃ)”……。アイツは人間、あやかしの“闇の心”を喰らって強くなる面倒臭いあやかしなんだよ。喰った奴の闇が膨大ならその姿も力も強大になる。幻世でも現世(げんせ)でも有名なあやかしなんだ。」

 お菊が言うと、楓は目を丸くするが俯き悄気げてるフンバを見つめる。お菊は更に言う。

 「だからフンバは……逃げて来た。この現世に。」

え?と、楓が聞き返すと水月が言う。

 「どうゆうこと?」

フンバは、はぁ。と、溜息ついて俯いたまま言った。

 「その通りでやんすよ………、アッシは両親殺されて自分は喰われて可怪しくならない様にする為に、この現世に逃げて来たでやんす。その時に彷徨いてるお菊に会って……おいら……この娘を護ろうって思った……。」

 楓はフンバとそして……彼をとても優しげに見るお菊を眺めた。

 (……なるほどな。だったら。)

楓は夜叉丸を右肩から降ろし握り締めた。

 「フンバ、お菊、オレがこれからは護る。勿論、葉霧(はぎり)の次だけど。」

 「楓っ。」

瞬時に嬉しそうな顔をしたのはお菊であり、そして……それも束の間であった。

 ズガァァン!!

今度は壁をブチ破り黒い巨大な腕が突き抜けて来たのである。

 わっ!と、警察官達は怯む。

「怯むなっ!構えっ!!」

海里の声が響く。

 そして、楓は夜叉丸を握り締め真っ黒な腕を見据えた。

 (暗蛇!色々とお返ししねぇとなんねーな!)

彼女はーー刀握り駆け出していた。             

              

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