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第193話 戦いの先に……。

闇鬼(やみおに)と化した東雲の身体は白き光で消滅した。


「………!」

(かえで)はそれを見つめていた。が、横に居た葉霧(はぎり)から荒い息が聞こえたのだ。


はぁ……

はぁ……


それを知り振り向くと彼はぐらり。と、フラついた、床に膝をつき倒れそうになると剣をアスファルトに突き刺した、それを支えにしながら疲労困憊の身体を支えた。


「葉霧!!」

楓は直ぐにしゃがみ込み彼の身体を支えた。背中を抱き倒れそうな前屈みの身体を支えたのだ。さらりと流れる紅み掛かった茶髪がその表情を隠す。けれどもその頭は上がる、蒼白い顔をして苦しそうな息を吐きつつも葉霧は楓を見て微笑んだ。


美しく凛々しい顔をした少年だが今は病弱で消えてしまいそうな顔に見えた。


「大丈夫だ……。」

健気なその優しげな微笑みに楓の顔は歪む。ぎりっと唇噛み締めると八重歯の様に生えた白い牙が唇の両端に刺さった。

「大丈夫じゃねーだろ……。」

楓にはそれが彼なりのやせ我慢であり心配させない様にとの配慮だと感じたからだ。床に突き刺した剣の柄を両手で握り締め支えにしていた葉霧の右手がそっ。と、楓に伸びる。少しだけ震えているその右手は楓の口元に伸びたのだ。親指で唇の端に垂れた血を軽く拭った。何も言わないがそれだけすると剣を掴んだ。


はぁ……はぁ……


荒く苦しそうに息を吐き頭が項垂れる。


「葉霧!」


楓は背中を必死に擦った。


楓は ハッとする。背後に気配を感じたからだ、振り向くと少し離れた所に黒髪靡かせた美しい男がいた。薄紫色の装束を身に纏った気高い男である。白き光が彼をぼんやりと包んでいた。

「……皇子(みこ)……。」

闇鬼を倒すまで葉霧の後ろに居た“螢火(ほたるび)皇子(みこ)”であった。楓は声を掛けたが彼は楓を見つめ少しだけ微笑むと、消えてしまった。


だが、楓は葉霧の胸元の真紅の勾玉。それを見つめた。一瞬だけキラッと煌き、皇子の姿が無くなると光は消えたのだ。


(……“同調(シンクロ)”したってことか? わかんねー。)


楓の視線は流れる様に前を向く、葉霧の持つ“破邪の刀”から放たれた白き光に包まれ消えた闇鬼の方に顔を向けた。


「え……?」


楓の蒼き眼は見開く。


闇鬼が消滅した辺りにドス黒い靄が渦巻いていたのだ。その黒い靄はやがて人型になる。靄が薄まると姿を現したのは“東雲(しののめ)”だった。


黒い着物を纏った青年だ。床に彼は倒れ附していた。ぴくり。とも動かず俯せのままで楓からはその顔は見えない、ただ黒い髪をした頭だけがハッキリと視覚に入った。


「……東雲……?」


楓の声に葉霧はその顔を上げた。自身の力で“闇鬼”は消え去れたが、東雲自身の身体が地に附していた。


「生きて……るのか……?」

呼吸が荒いからか声が掠れ言葉も途切れ途切れだった。楓はそんな葉霧の声に

「解んね、ココからじゃ良く見えねー。」

そう応えると彼の背中をしっかり抱いて支えた。


ガシャン……っ!!


と、背後で窓ガラスが割れた音が響いた。はっ。とした楓が振り向くが既に“その者”はタワーの中に居た。飛び込んで来たのかアスファルトの地面に片膝ついて着地した様な体制でそこに居たのだ。割られたガラスの破片がその者の背後で地面に落ちていく。


背面はガラス張りだ、外は真っ暗闇でぼんやりとした蒼白い光がこのタワー内を照らしている、まるで月の灯りの様に窓から射し込みこの光のお陰で視界が開けているのだ。


それでも着地したその者の姿をハッキリと捉えられなかったのは、直ぐに ダンッ! と、地面踏みつけ飛び上がったからだ。


「誰だ!? てめぇ!」


楓はその者を視線で追った、2人の頭上を軽々と飛び越えたのだ。黒い影にしか見えなかった。その者は倒れ附してる東雲の元に着地した。黒いフードのついた布マントの様な物を被っており大柄の者である事しか解らない。


「本日は“ここまで”。」


響く低い声音でそう言いながら倒れた東雲を持ち上げた。更に右肩に180近い男である東雲の身体を担ぎ上げたのだ、軽々と。


「“あやかし”か? つか誰だっ!?」


今にも倒れそうな葉霧を支える楓はその者に向かい怒鳴るだけであった。くるり。と、その者は振り返るがフードでその顔、全景は隠れていた。姿が見えない、かろうじて見えるのは口元だ。只、身長180越えの男を右肩に軽々と担いでしまうだけありかなりの大柄である事だけは解ったのだ。


何も言わず……東雲を担いだまままたもや軽々と飛び上がる。楓は頭上を飛び越えたその者を目で追うが たんっ。と、窓の側に着地するや否や割れた窓から外に向かって飛び出してしまった。


「………何モンだ……?」


楓がそう呟いた時だった。支えていた葉霧の身体が横にぐらり。と、揺れそのまま地面に倒れてしまったのだ。カラン……と、支えにしていた破邪の刀が地面に落ちた音がした。


「葉霧っ!」

楓は直ぐに葉霧に声を掛けその顔を覗き込むが、彼は目を閉じていた。直ぐ様その口元に耳を近づける楓は、僅かに聞こえる息の音に ほっ。と、したのだ。


「良かった……生きてる……。」


ポウっ。と、楓の大きく成長した胸元で“深蒼の勾玉(まがたま)”が蒼白く光る、同時に葉霧がぶら下げている“深紅の勾玉”も紅白い光を放っていた。楓の身体が蒼白い光に包まれたのは直後であった。


(え? 何だ??)


自身の長い爪の生えた手を見つめた、蒼白い光に包まれていたのだから。だが暫くするとその光は消える。やがてさっきよりも少し小さ目の両手が視界に入った、更に爪も短くなっていた。楓は直ぐに窓ガラスに目を向けた。そこに映り込んでいたのは、美しく成長した鬼姫の姿ではなく見慣れた姿であった。


蒼く長い角も短くなり、170越えはあったであろう背丈は平常の155程度まで縮んだ。長く腰元まであったさらさらロング髪もセミロングになっていた。更に豊満だった胸元も通常サイズに戻っていた。さっきまで白い着物姿であったが黒のフード付きジャケット、黒のTシャツ、黒のデニム姿に戻っていたのだ。


「戻ったのか?」


窓ガラスを見つめていると深蒼の勾玉の光と共に、自身の身体を包む光も消えてゆく。


(どーなってんだ??)


楓自身にも全く解らない現象であった。彼女は直ぐに葉霧の元にしゃがむと、彼の胸元の深紅の勾玉の光は消えていた。更に地面に落ちている破邪の刀もいつの間にか消えていたのだ。


(??? え?? 何?? どーなってんの??)


楓の頭の中は疑問符だらけであった。


その直ぐ後だった。窓ガラスの向こうの空が真っ青な晴天に変わったのだった。


「は??」


楓は直ぐに窓ガラスに駆け寄った。ココは65階の展望室だ、窓の外には都心の景色が広がっていた、さっきまで暗闇しか見えなかった世界が消え街並みが眼下に広がっていたのだ。


(……ダメだ……全く以て解んねー、何がどーなってんだ?? つかさっきの奴は何だったんだ?)


だが、楓は直ぐに はっ。として葉霧の元に駆けつけた。


(そんな事より葉霧だ、お菊のとこに連れて行かねーと。)


楓は倒れてしまった葉霧の頬を撫でた。暖かさに安堵した。

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