第192夜 打ち砕かれる野望
「退魔師!!」
闇鬼と化した東雲は、巨大な体でその大きな刀を持ち、向かってくる。
葉霧は自身の右手に持つ白き光を放つ刀。
“破邪の刀”を握り締めた。
「楓……、俺を庇うな。生きろ。頼むから。」
そう言った葉霧の刀は、更に神々しく白い光を放つ。葉霧の身体までも白い光は包む。太陽の光を全身に浴びてるかの様に眩いものだった。
楓は隣の葉霧のその姿を見て……目を丸くした。
(……皇子……。)
かつて……、闇を滅ぼす為に生きた“螢火の皇子”。退魔師の祖先。それに葉霧が被ったのだ。
葉霧は刀を握り振り下ろした。
「“破邪制裁”!!」
それは、まるで天から降り注ぐ檻。
闇鬼の頭上から白い光の箱の檻は降り注いだ。
闇鬼の身体を囲ったその正方形の光の檻。更に四方八方から串刺しにする白い光の刃が、闇鬼を貫いた。
彼らに殴りかかろうとしていた闇鬼は、一瞬で身体を拘束され、光の刃に串刺しにされた。それも、無数の太い刃だ。
白き炎を纏ったその刃は巨体の闇鬼の腕、腹、太腿、ありとあらゆる箇所を串刺しにした。
「うぎゃあっあっ!!」
雄叫びが檻の中から響く。
葉霧は破邪の刀を向けた。白き炎に纏うその刀を、檻の中にいる闇鬼に向けたのだ。
フワッと、その背後に黒髪の青年が浮かび上がる。楓は目を見開く。
「……“皇子……”。」
薄紫の装束を着た黒髪の美しい青年。皇子は葉霧の後ろに現れた。
更に彼と共にその右手を翳した。
葉霧は刀を天に向けた。
「「“破邪天犀”!!」」
その言葉と共に皇子と葉霧は刀を、手を……闇鬼に振り下ろした。
それは白き光の刃が闇鬼を頭上から突き刺す稲光を落としたのだ。
カッ!!と、辺り一面を光が覆う。
檻の中の闇鬼が呻く声が響く。
「ぎゃあっ!!」
脳天から白き炎の矢を突き刺され一気に身体は燃やされたのだ。それも光熱。全身を焼き尽くされた。
葉霧と皇子はそれを見ていたが、直ぐに構えた。葉霧は刀を胸に。
皇子は右手を胸に置き印を結ぶ。
投影されるかのようなその2人を、楓は見ていた。
「「“破邪戴天'“!!」」
檻の中にいる闇鬼の身体を更に無数の光の炎の刃は、串刺しにした。
それらは彼を爆発させのだ。
爆風と光。
楓はそれを受けながら、闇鬼が消滅するのを見つめていた。
(な……なんて力だ……。)
跡形もなく……闇鬼は消えたのだ。




