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第二話 五歳ってこんなに大変なんですね。あ、この世界だけですかね。



シーン3-1 神さまって自己中な人ですか?




 家に頭冷やし中の父を置いていき、現在王国内の王都ヒルベルトにある神殿へ向かっております。

 お久しぶりです。ルミナエル・シルベスターとその専属メイドのホカラナ・リエスタルトです。

 なぜ王都内の神殿へ向かっているかというと、検査。だそうです。

 私もよくは分かりませんが、前世の記憶の検査と言うと、聴診器とかを使ったり、身長測ったり。まあ、きっと異世界にはそんな一般常識など通用しないと思いますけどね。

 なにせ検査だって言ってんのに神殿向かってるんですから!あはは。ウェルカム異世界常識。

 というわけで母は近場の茶屋でゆっくりしているとのことなんで、二人だけで神殿行きです。

 正直言うと不安です。なんなのかが本当に分からなすぎるんです。

 でも、一人じゃないだけマシですよ。隣にはメイドであり私の大事な人のカナに、カナとは反対側の私の隣には、次期国王がいますから!


 ん?次期国王?


「ええぇ!?な、なんでこんな所に!?王子が!?」

「うわぁ!びっくりしたな…リルベスト様が茶屋に入ったあたりからずっと居たんだけどな…僕って影薄い?」

「な、なんかごめんなさい…」

「いや。いいんだけどね?それと、なぜ僕がいるのかっていうのは、君らと同じ理由だよ」

「検査ですか?わふ」

「そうそう。検査だよ!って違うよ?!」

「え?違うんですか?」

「うん。これからやるのは、儀式だよ。魔力とか長けた魔法の属性とかを調べるうえでは検査とも言えなくもないけど・・・本題は神様からのお告げだよ」


 王都の街並みを横目に王子がペラペラと説明をし続けるが、生憎そこらへんの知識は私としてはいらないなという思いとともに意識はあたりの異世界風景へと持っていかれていた。

 それはそうと街を見ていると出店は少なからずあるのだが、重要な客が少なく、ガラッとした印象を受けた。

 客はいるにはいるが王都という名を持っていながらにしては。と考えると少なく見える。

 そしてか道行く人の顔からは心なしか気力が感じれなかった。

 ただの思い過ごしだろうとそのまま通り過ぎることにした。

 王子による今回の検査とはなんなのかを説明をし終わるのと同時に神殿前へついた。

 ハッキリといって。でかい。

 前世で見た教会と基礎的な作りは同じだが、規模が全く違う。

 なによりも。入口らしい入口が見当たらない。


「何してるの?こっちだよ」


 そう言われ王子の方を見ると上へと続く階段の前に立っていた。

 まさかとは思うが、登ることになるのだろうか。


「まさかこの高さを上るですか?わふ」

「え?普通じゃないの?」


 あ、はい。この世界の規格がよく分かりません…だってこの神殿吹き抜けだとしても東京タワー半分ぐらいあるんですよ!?

 ああ、めんどくさいです。ええ。なので私は最短ルートを使いましょう。そうしましょう。


「じゃあ、行こうか」


 そう言って王子は鉄製の階段を上目指し歩き出した。


「る、ルミナ・・・」

「うん?どうしたのカナ」

「壁伝っちゃダメで・・・ダメ?」

「分かる。それならすることは一つ!最短で楽に行くならエレベーターよね!」

「え、エレベーター!!って・・・?」

「つまりは、論より証拠ってね!」


 魔法で高い氷柱を足元に作ってしまえば、自動的に上へあがっていく。結構いい考えなのだけど、これもまたどこかの前世の漫画か小説の情報なのが痛い。

 そんなことはどうでもよく、上へ目指す氷柱を作り出す。


「氷柱」


 短く詠唱し、魔法陣を半径一メートルほどで展開し、神殿最上階分の柱を私とカナを乗せて下から生え始める。生えるといえば語弊があるが、周りの魔力を集めてその魔法陣の上で氷に変換し、柱として順々に作り出していく感じである。

 そしてそんなゆっくりもしていられないので、レッツ加速!と勢いよく柱を高くする。


「す、すごいです!ルミナって・・・」

「え?普通じゃない感じ?これ?」

「うーん。ボクの族長基準で言えば、北北西にある王国の魔術師団団長以上って言うと思います」

「うそぉ…チートは持ちたくなかったんだけど・・・いや。お母さまのせいよね・・・そうよね絶対。そして族長が怖いよ・・・それ」


 カナが早くも敬語というルールを無視しているが、もう何を言っても無駄だろうと気を落としつつ、屋上に降り立ち、作った氷柱を消して扉を開け神殿の中へ入る。

 王子は今どこら辺にいるのだろうか。そんな考えが頭をよぎったが、生憎クソほどどうでもいいと思ってしまう。事実どうでもいい。

 神殿内部は豪華なシャンデリアの照明に始まり、ガラス細工で出来た、この世界においての神の像を写したもの。

 ザ・異世界の神殿という感じに収まっていた。

 二人して辺りを見渡しながら建物の中に氷柱エレベーターをするわけにもいかず、ゆっくりと階段を下りていく。

 地上のホールの中心部で終点となる階段を下り終えると、東西南北に位置する四つの扉の南側の扉が開き、中から神父らしき人が出てくる。


「ん?あなた方は儀式参加の方ですか?」

「あ、はい。ルミナエル・シルベスターとホカラナ・リエスタルトといいます」

「シルベスター家の方でしたか。失礼しました。予定よりお早いご到着で」

「あ、あはは。ま、まあ、早いに越したことはないですよ・・・で。どうすればよろしいのでしょうか?なにも分からず申し訳ないです」


 ご令嬢モード。と私は呼称するこの喋り方や、裾を持ち上げる礼だったりはまさしく前世の英知の結集である神の具現化物といっても過言ではない本というもののおかげである!


「ご安心をご説明致します。この王都立大神殿とは、神の御加護を最も受けれる場所として、離れの村からも祈りに来るほどの最大級の神殿でございます。そして、今日。ルミナエル様にそのメイドのホカラナ様は神の御加護を人生二回目。失礼。ホカラナ様は一回目だと思われますが、受けてもらいます。前回は、安全に五年生きることを望んで祈るものでしたが、今回は人生を左右する、神言という書いて字の如く、お言葉を受けたまわり、それを記録すること。が目的となります。伴って貴殿の人生がより良い発展を遂げることを祈願することが五歳の子供へ行われます。そして、今私は南の扉から出てきましたが、東西南北と別れた扉それぞれに違う神が祀られ、神によって神言も異なります。運命の決断とまではいいませんが、かなり重要な選択です。そして選んで頂いたのち、扉の先にいる神父にそのまま従って頂ければ、今回の儀式は終了となります。以上で説明は終わりますが、ご質問などありましたら何なりとお申し付けください」

「いえ。十分すぎるほどに理解いたしましたわ。仕事に誠実なのが目にみてとれます。母上や父上にも伝えたいと思います」

「ありがたきお言葉」


 ちらっと横を見るとカナは何言ってるの?とでも言うような顔をしていた。

 まあ、どちらにせよ、私には会わなくてはいけない神がいるので!私をこの世界へ送り込んだあの芸人気質が微量にも入っていそうな神様のところへ。


「それで、ルミナエル様にホカラナ様はどの神の方へ?」

「南の扉の先にいる神へ」

「かしこまりました。僭越(せんえつ)ながら南の方ではわたくしが進行共に記録をさせてもらいます」

「はい。かえって安心できますわ。よろしくお願い致します」


 またもやスカートの裾をつまみ上げて礼をする。カナも先ほどは直立であったが、今は両手を体の前で軽く合わせて、静かに礼をしていた。覚えがよすぎる上に、容姿も相成ってメイド感が並ものじゃなくなっていた。恐ろしいわね・・・

 少し準備をすると言い神父も一礼した後に扉の先へと入っていった。

 そして、入ると同時に体を起こしたカナが私の方を向き、口を開けた。


「ご主人様?どうして南なのです?」

「まあ、南の方にいる神様にちょっと野暮用があったから・・・ね。ははは」

「野暮用?ですか。神様と知り合いなんですか?ご主人様は」

「まあ色々とあった上でね。ええ。ええ」

「やっぱりご主人様はすごいですね!」


 カナの瞳はすごいすごいとお世辞に聞こえそうなものが一切聞こえなくなるほどの眼差しで見てくる。それくらい輝きながら見てくる。

 ちなみに尻尾も左右に揺れつつ。


「さあ?私はどっかの貴族に生まれた子供なだけ。きっとお父様とお母様も神様と話したことぐらいあるはずよ」


 きっと。と念を押しつつ話をしてるうちに準備が終わったようで、神父が迎えに来る。


「お待たせ致しました。準備が出来ましたのでこちらへ」



 扉を開け、空いている手で部屋の中へと導かれる。

 中は思いのほか小さめで、前世の記憶では一軒家ほどの広さだった。

 ん?小さめ?あれ?大きい?この世界って規格がズレてるからよく分からなくなる…。でも、一部屋が一軒家分と今一度考え直せば、大きすぎる。

 と同時に疑問がもう一個出てくる。この神殿は円柱状で直径はおおよそ二十メートルぐらい。どこに東西南北にこの一軒家並の部屋が建てられる?それ以前に、階段降りた時も円形のままで、ホールも二十メートル。収縮などしていない。

 うん。異世界だ。考えるのやめよ!そうしましょう!

 レッドカーペットがひかれたその先には、蝋燭などの祭壇に続き、その奥の彫刻で出来た像には私が転生前に会った神そのもの。とは少しズレている(美化気味)が、まさにあの神様であった。


「では、まずルミナエル様から。祭壇前へいき、祭壇の上にある紙へ手をかざしてください」


 神父の言う通り、祭壇まで行き神に手をかざす。

 すると、意識が遠のくような気分に襲われる。まさに死ぬ瞬間から計三回も食らったあの感覚である。

 もうなんか慣れてしまいました。


「久方ぶりだなルミナエル」

「ああ、とは言っても五年ほどですけど?」

「それ、神様が言うべき言葉だと思うんだけど・・・どうなんだろう?」

「気のせいです。それよりも約束の方を」

「き、気のせい…ま、まあ兄のことだったな、安心せい用意してある」


 また、あの時のように頭の中へ映像が流れ出す。

 あれ?お兄ちゃん…社畜じゃないし、なんか顔も活き活きしてる?え?

 それから見続けるごとに驚くべきことが判明していく。

 第一に結婚してるし!そして家も豪華になってる!?なんで!えぇ?あれから五年でどうやったらこうなるの!?

 宝くじにでも当たったかのような変わりよう。そしてその家を隅々まで見てみると、私の遺影のようなものはなく・・・遺品さえもな・・・い?

 え?なんで?これほんとにお兄ちゃん?

 そう思い何度、男性の顔を見るが紛れもなく兄そのものである。

 うん。わけわかめとはまさにこのことであろう。そう思いながら、意識を神と話すために白い空間。現実ではないし、なんだろう。意識空間?とでもしておこう。そっちに移す。

 ゆっくりと口を開き、恐る恐る半目になりつつも声を出す。


「あの…神様?事の顛末を」

「宝くじ。ではないが馬券。それで分かったろう?」

「まさか、最悪な考えなんですけど、私の保険金を賭けた・・・?」

「そのまさかだよ。正解。しかもね?あの死んだ時、兄が走ってた理由はね。心配してじゃないよ。神様もこれは何も言えない」

「は…?」


 意識が一瞬、もう飛んでいるのに意識空間からさらに飛びそうになった。次はいよいよ天国とかそんなところだろうか?


「完璧に保険金目当てだったね。死ぬことが確定した瞬間、兄は保険金を受け取り、全額馬券へと。そして運がいいのか悪いのか、三連単を当ててしまってね。よって大金を得た彼は、お前さんの葬儀にはほぼ金額を当てず、七割方親戚の人のおかげでお主は葬儀をすることが出来た。棺桶は発泡スチロールではないから安心せい。まあ、そんなことはどうでもいいな…きっと。今、墓石を管理しているのはお前さんの祖母で毎年来てくれているよ。わざわざ丁寧に拭いてね。兄のことは・・・なんも言えぬが、お主は前世において十分な功績を残しておった。中学校では生徒会をするなど、みんなから信頼されていた。十分すぎる。葬儀には、本当にたくさんの人が来ていたぞ。兄は結果としていなかったが、小学校時代の旧友に中学生時代、お前さんに助けてもらった人。そして高校で面接時にお主の言葉で感動させられ、全然知らないのにきてしまった面接官の数名。お主は死に方はどうであれ、兄に保険金目当てにされていたが、たくさんの人々へ貢献していた。それは、ちゃんと十分な人に覚えておいてもらえているよ。さぁ。時間だ。また機会があればおいで。第二の人生は、どう生きるかはお主次第だが、またたくさんの人を救える。そんな気がするよ君には・・・わしにはこれくらいしか・・・慰める言葉は用意してやれん。すまぬな」


 意識が現実へ戻される。

 目を開けると、目の前には神様の像。そして、手をかざしていた紙には、文字がたくさんびっしりと書かれていた。

 何が書かれているか読もうと身体を前に倒した時には神父が紙を回収してしまっていた。


「後ほど、この紙に書かれた内容は説明させていただきます。あと、余談ですがかなり長い間、神と話されていたようですが、大丈夫でしたか?」

「い、いえ何ともないです。お時間を取らせてしまい・・・」


 整理が追い付かず、適当なご令嬢の空返事をしてしまう。今も、新しい言葉を生み出してしまうほどに少しばかり混乱が残っている。

 その時、フラッと後ろに倒れこみそうになる。ずっと立っていたせいか足にうまく力が入らない。しかも考え事のせいで体制を整えることもできない。


「ご主人様っ!」


 背中からカナの叫ぶ声が聞こえる。が、もう今日二回目の意識さよならバイバイのフラグが建っている。

 でも・・・床の固い痛みが伝わらない。逆に柔らかく感じる。

 なんで?もう痛覚も感じなくなったのだろうか私は。死ぬ前って気を失えばこんな感じなのだろうか?ああ?意識が・・・飛ぶ・・・


 訳がない!ハッとして目を開けると、目の前には先ほどの神様の像と変わってカナの顔があった。

 しかもだ。顔があるのはいいのだが、口に違和感を感じる。なにかと触れ合っているような圧力を。圧力といっても柔らかな唇なのだが。


 ん?唇?え?一度頭の中をクリーンにすると、状況は分かった。


 ことの顛末はこうだ。(イケボ風に)

 立ったまま小一時間以上話し込んだせいで、現実の私は足がっくがくの生まれたての小鹿よろしく状態。そして、そのままフラッと背中から床へダイビング。合わせて意識もフライアウェイしかける。が、体が床へ行く前に、カナがクッションに入ると。

 そして一瞬意識が飛んだ内になぜか、カナによってはじめてを奪われると。

 うーん。分からないぞ!

 中学生時代学年トップの学力をもってしても解けない、謎の人間心理とはこのことだろう。

 いや。人間ではなく、カナは犬・・・もとい狼だから狼心理?そんなことはどうでもいい!それよりも奪われたことは問わないけど、なぜする必要があったのかという話だ。

 カナにいまだ、口を付けられたままだがそのまま体を起こすと、ハッと喜ぶ顔を見せるとともに、やわらかかった唇も離れる。

 さて、周囲を見渡すと神父はいずこへ?あと、カナの体制的に私は膝枕をされていたのだろう。正座をしたカナの太ももが先ほどまで私の頭部があった位置にドンピシャである。


「・・・ええっと・・・何から聞けばいいんだろ?」

「よかった・・・」

「え?」

「よかったです!急に倒れこんじゃいますし!ぎりぎり頭打つ前に間に合いましたけど!本当に・・・本当に!」


 カナの目には涙がたまり、数滴零れ落ち流れた後の線がくっきりと見えた。


「う、うん。ごめんね。それと、なんでキスしてきたの?」

「き、キスですか?なんですかそれ?」


 涙を軽く、袖で拭ってあげつつカナへ聞くと首をかしげながらキスとは何かと逆に問いかけられた。

 まさかのキスというものがなのでしょうか?この世界は。


「ほ、ほら口付けてきたじゃない」

「そ、それは…人狼の中でもボクがいた魔狼月下という族に昔から伝わる、大事な人が倒れたときとかにやると元気になるっていう・・・あ、あと好きな人にする・・・とか・・・の」


 カナよ。顔を赤らめながら最後の方言わないで。そして元気になるって・・・あれですね!男の人なら下の方に山が出来上がりますね!

 話がずれてしまいましたけど、理由は何となくわかりました。つまりは私のためにしてくれたのだと。それならうれしいことこの上ないですね。

 あと、カナが所属していた族も分かったので何かの縁に調べてみましょうか。カナは一応奴隷商に連れて行かれる前には、裏切られたりとか黒いところがあるようですので。


「でも、ありがとう。私のためにこんなにしてくれて。まだ出会って数時間なのにこんなことされたら・・・」

「そ、そうですね。ふふ。・・・でも数時間だけど・・・初めて会ったわけではないんですけどね・・・」

「ん?何か言った?カナ」

「何でもないです!ご主人様!」


 ほこりを払いつつ、立ち上がりカナに右手を差し出すと、カナはこの世界で何よりも美しく輝く鉱石以上の笑顔で手を掴んで立ち上がる。

 勢いでハグでもしてやろうかと意気込んだ瞬間、神父が現れる。タイミングがいいのか悪いのか・・・ハグはもう少しお預けになるようです。


「えーでは、次にホカラナ様の方をやらせて頂きます。ルミナエル様と同じように、神に手をかざしていてください」


 カナは最後に私に向かって微笑むと、祭壇の方に向き直って儀式をしに行った。

 そして私は、終わるのを待つ間に神のなっがながと話してきた元居た世界の後日談に色々な感情を抱いていた。

 あれが本当に死んだ後の出来事なのか。などと考えてしまうがそれは、一つの現実逃避であろう。あれは嘘偽りなく、本当に起こった死後の前世の世界の姿なのだろう。

 しかし、兄の裏切りにはどうしても納得はいかないし、認めたくない。昔はよく遊んでいたし、喧嘩もほとんどなかった。

 そんな兄がいとも簡単に死ぬ間際の私を放って・・・?考えたくもないが、勝手に頭の中で浮かび上がってしまう。

 そんなナーバスな思いに、ひと段落を着かせてくれる様子が目の前にはある。今は一人ではないし、絶対的な信頼をおいているカナという存在がある。

 カナという存在は私にとって、癒しを超えた大事な存在に少しの時間でなってしまっているのだろう。

 前世でも奪われたことのない初めても奪われてるし!ほんとに柔らかかったなー。と、いまさらながら思ってしまう。頼んだらまたしてくれたり・・・する?


 カナには感謝してもしきれないだろう。それはこれからもずっと。だろう。


 それから、まさかの三十分近く。きっとそれくらい。

 私が何分だったか不明だが、まだ私の方が長かったのだろう。カナ・・・めっちゃ待たせてごめん。

 神様はカナへ何を言っているのだろうか。どうせロクでもないことだと思う私がいるが、それを心の中で押し殺し、一切態度には出さない。外って・・・ちょっと辛い。ずっとご令嬢モードを続けるのは・・・。


「はぁ…」


 神父に聞こえないぐらいの小さい声で息をつく。ため息とかって結構緊張してるときとかにするとすごく落ち着く気がする。

 と同時にカナの尻尾が揺れた。

 さっと紙に一切気を止めず、私の方を振り向いて近寄ってくる。

 また、至近距離まで顔を近づけてくる。きっと私は今すごく顔が赤いだろうなと、頬の温かさを感じていると、小声でカナが話しかけてきた。


(ご主人様。神様からの伝言で、すぐさま行く場所ができました)

(行く場所?神様からって何を言われたの?)

(行きながら話します。とりあえずは、神殿を抜けましょう。長くいるのはまずいようですので。周囲に何故か気づかなかったのですが、敵対意識だったりが渦巻いています)

(・・・。分かった。カナが言うならほんとだと思う。出る用意しておいて)


 神父の元へ駆け寄り、急用があるのですぐにお暇させてもらうと伝える。

 神父もそれには何も問わず、あとでご連絡いたしますと残し扉を出れば外だと残して、一礼したのちに裏へ戻っていった。

 カナの手を取って、扉を開けるとそこ白いゲートのようになっている。

 扉を抜けると、神父の言う通りそこは神殿内部ではなく、神殿の外。まさに氷柱を作り上げた場所へと繋がっていた。

 そんな異世界らしさをよそに、カナはこっちです。と母の待つ茶屋ではなく、一度も通ったことのない繁華街へ入っていく。

 繁華街といっても、やはりあまり人通りは少ない。王国なのになぜここまで閑散としているのか疑問に思いながらも、カナに引きつられ奥へ入っていく。

 身長的に、カナが百十ぐらいに対し、私は百ほど。そんな幼子二人組が繁華街なんか抜けるとなれば、周りからの目は少ないながらも痛々しかった。し、めっちゃ注目浴びてる。なんで!?その点カナは何とも思っていないようですが・・・。というか周りをあまり見ていないようですね。


 そういえばと、あることを思い出しました。私たちが注目される理由はもう一つありました。獣人だということを忘れていましたね。

 周りは普通に人間ばっかり。獣人の幼子二人が走り抜けていれば注目も集まりますねそうですね。

 今さらながら私にも白い耳としっぽがありますからね・・・時々忘れてしまいます。

 そのままカナは一直線に繁華街を抜け、工業地帯へ入った。

 種族も人間に代わって、ドワーフらしき人へと変わり、夕方に入った空は赤い風景として工場の数々がどこかのドラマのワンシーンのように見えてきた。

 鉄や色々と加工するような臭いもする。結構きついんですけど!?獣人補正で嗅覚も上がっているのだろうか?そういえば、料理とかもすごくいい匂いしてたし・・・。

 そんなことはいい!なんで私はカナにこんな「事件?ありますよ」地帯へ連れていかれてるんですか!?合わせて人の顔を見ると「治安?そんなんねぇよ」と言わんばかりのいかつい方々!


「はぁはぁ、着きました」

「走りすぎ…私たちまだ五歳だよ?こんな、走る、もんじゃ、ない・・・」

「とりあえず、ここに行けと神様からの伝言で」


 着いた場所は、工業地帯の中間地点ぐらい。それでも一キロほどにある、適当につぎはぎした鉄鋼板の壁で作られた工場。

 所々は雨によってか、錆びてしまっている。屋根からは黒い煙が排出され、前世では取り締まられるやつだと思う。詳しくは知りませんけど。環境基準法だとかなんとか。


「来たはいいんですけど、その先知らないんですよご主人様~あはは」


 おおう。カナよ。それは俗にいう無計画っていうやつだな。初々しい奴め。かわいいな!

 じゃないよ!この先どうするんですか!?なんで場所だけで要件ないんですか!下駄箱に入れる「体育館裏にきてください」の手紙か!そっちの方が要件分かるわ!神様・・・次会ったら文句言ってやるんだから!




 一方、職務中の神様


「な、なんだか今度会ったら文句をぐちぐち言われる気がしたんだけど…」

「なんですかそれ…誰に言われるっていうんですか」

「あの子」

「あ、やっぱりですか。なんか面白いですよねあの子」


 神様とルミナに転生前、水をぶっかけた張本人の部下は、苦笑いとともに山積みとなっている書類にまた手を付け始めるのだった。




シーン3-2 武器ってこんなもんなんですか?

 



 神様への文句が一個増えつつ、ただ茫然とその工場の間で立ち尽くすこと数分。いや。呆然とではなく、カナをずっと撫でながら。

 ん?奥から人…いやドワーフであろう、低身長な肉質の良い髭の生えた人影が現れる。また間違えた。ドワーフ影。


「ん?白い髪の狐に、黒髪の狼。の幼女…おお!やっと来たか!」


 突然現れたかと思えばやっと来たかと遅いなと言われるが・・・なんなのだろうか。

 カナの方を見ると、ドワーフの男へきょとんとした顔をしている。可愛さに見とれそうになりつつも、意識をドワーフの男性へ移しましょう。

 このまま見続けててもいいんですけどね!あ、撫でるのはやめましたよ?物欲しそうにカナに見つめられましたが。

 そんなことをよそになにやらドワーフの方曰く、また神様が関係していそうですね。


「いやー。神様っていうのはほんとにすごいんだな!」

「え、えっとどういう意味でしょうか?」

「ん?ああ、前にな?祈りを捧げに神殿へ行ったら、神様にお言葉を頂いた時、『汝、ドワーフにして製造の槌と見えたり。汝その力、貸したもうな』って言われてな!はっはっはっは!」


 神様まさかの他の人へはそんな喋り方だったんですか!?

 いやはや本当に神らしい言葉でお言葉を授けていたのですか…喋り方を変えれる人って怖いですね。

 それ言ったら私もですがね。あと作者も、あははは…


「で、変な武器を作らされてな?それを狐と狼が取りに来るって言われてな、そしたらお嬢ちゃんたちが来たってわけだ」

「ぶ、武器ですか?わふ」


 あれ?私の知らぬ間に話は進んでいるようですね。武器がどうたらこうたらって・・・


「まあ、実物見たほうが早いだろ、こっちだ入りな」


 そういってドワーフの男は工場のシャッターを開け、こっちへ来いと手招きする。

 よく分かりませんが、犯罪臭はしないのでついていくことにしました。いざとなれば・・・カナもいるし?

 そんな考えは一瞬にして消え去った。ついていった先には美人な女性が立っていた。

 ドワーフの男性はその女性へ何か伝えると、笑い合い、女性は奥のほうへと入っていった。

 え?何怖いんですけど。陰口とかって目の前でされると中々恐怖ですね。今それを身をもって感じました。あと、いじめダメ絶対。


「うーん。とりあえず行きましょうかね?カナ」

「ご、ご主人様がそういうなら・・・武器って何でしょうかね」

「へ?武器?」

「え?聞いてなかったんですか!?あの人が武器を神様に発注されていて、作られたそうなんですよ!」


 はい。やっと要件が分かりましたね。話を聞かずごめんなさい・・・あと神様には二個目の文句もできました。覚悟していてください。


「忘れてた忘れてた。俺の名前は、ドワーフ建築株式会社総活代表のレギウスってもんだ。さっきのは、俺の最愛の人で今、結婚式を控えてる最中のフィアンセ、ディスだ。今は、お前さんらの武器を取りに行かせている」


 数瞬反応が遅れる。前世のような企業名に先ほどの女性がフィアンセだというドワーフの男性ことレギウス。

 うーん。なるほど。とりあえずめでたいことではあるのよね?結婚っていうんですから。


「おめでとうござます」

「おう。ありがとうな。そろそろ来るからそこのカウンター行っててくれ」


 そう促され、レギウスの指した先には会計とかするようなカウンターが設けられていた。

 カナとともにそこへ行くとレギウスも裏へと入っていった。

 すると、二つの木箱を肩に米俵のように乗せながら、レギウスではなくそのフィアンセのディスが運んでくる。ああ、ドワーフだな。いらっしゃいませファンタジー・・・。

 と、後ろから「重たくないかい?持つよ」とレギウスが駆け足で出てくる。ああ、和むな。

 そのままディスがカウンタの上に長さの異なる長方形型の木箱を乗せる。


「じゃあ、いろいろと紹介しなくちゃな!まずは、狐のお嬢ちゃんのものからだ!ほい!」


 バゴッ、っと木箱のふたを開けると中には、これまた漆黒と言わんばかりの黒い本体に、刃の部分には青色の線が入った見事なまでの大鎌が入っていた。

 いや。なんとなくわかってたよ?箱の大きさが高さに対して横幅と奥行きがおかしいんだもん。

 この中に逆に剣とか入ってたら規格ミスりすぎだよ。


「作る当初は今までいろいろと要望に合わせて作ってきたが、この武器は一段となにこれと思ったな。試作品を使ってみたがコツは必要だけどいい武器だね」

「ええと…これは…」

 

 思わず心無い言葉が漏れる。それもそのはず。神様の意図が分からな過ぎて脳内はもう迷走に走ってしまっているのですからね。


「ふふん!素材など気になるかやはり!素材は王国内ではまず流通しない!しても一瞬にして消え去る金属。コウロロス鉱石の中でも希少な純粋なものを使った特別製で、スキルは空中動作に加速。あとは初めて見たスキルだが、切断だそうだ。まあスキルに関しては俺は詳しくないんだすまないな」

「は、はぁ・・・」


 異世界とはいえど、いままではRPGさの欠片も感じなかったはずなのにスキルですか・・・いらっしゃいませファンタジー。シーズン2。

 やっぱり、スキルとかあってしまうんですね。私はあまりロールプレイングゲームとかしたことなくてよくわからないんですけど・・・まあ、慣れるしかないんでしょうけどね。

 それはさておき、レギオスはテンポよくカナの方へと移る。


「さて!狼の子には聞いた話によると、普通の剣を使っていると神様に言われちゃったからね、特殊なものを作ったよ!ほれ!」


 ん?ちょっと待って。またもや木箱の開く音がするが、言葉の矛盾に思わず体が反応する。体といっても耳としっぽなのだが…

 目線をカナに移せば、まあ・・・分かってましたよ?私がズレてるってことは!

 つまりは、特殊な武器と聞き興奮を抑えきれないカナが勢いよく尻尾を振る姿には眼福しつつも喜ばしいことのようです。

 ええ・・・?武器ってなんかこう変に手を加えられた方がこの世界の人は喜ぶんですか?うーん。ロマンというやつなんでしょうかねこれが。

 開けられた木箱に意識と視線を移すと、中には機械のようにメカメカしく、私の大鎌とは全く構造の違う、四十センチほどの剣が二本あった。モ○ハン!圧倒的モン○ン!!

 思わず心の中で叫ばずにはいられない。


「これは、神様に作った後見てもらったんだが、曰く使用者の力に合わせて本領を発揮する武器らしく、スキルの鬼神がカギだと言っていたな。あと、あれかエクストラスキル?初めて聞く言葉でうまく説明出来ないが、鬼神スキルの限界を超えた際にパッシブ化する、鬼神炎舞こそが本物だ。と、言っていたぞ。その使用者の力を伝える部分が、この溝なんだがな?俺が持ってもそんなに力がないから分かりにくいが液体状のないかが流れるようになっている。これが何なのかは俺でもわからない!」

「わ、わからないんですか!?わふん」

「そう!なぜか構造がわからないこの武器を製作しちまってな。神に操られるがままってことよ!素材も不明、機能も不明。わかるのは、使用者によって結果が違うってことぐらいだ!」


 その説明に、興奮が止まらない様子で先ほど以上に尻尾がブンブンと左右に振れ、目を輝かせていた。まさに餌を前にする犬のようである!かわいいですね。


「それと、お前さんらに妻からのってまだ結婚しないんだがな!重要なプレゼントだ」

「あらあら。妻って公言してくれていいのよ?それはさておき。はいこれ、私からのプレゼント。あなた達見てるとおっかなくてね」


 そういって渡されたのは、ローブのような服と・・・黒と白の・・・あっ(既視感)

 ローブはファンタジーっぽいいたってシンプルなものだが、白と黒のは・・・まあ、もはやこれ以外の例えが見つからに程のメイド服です。なんだろうか。定番ともいえる展開・・・しかし!今、カナが着ている服よりフリルは少なめだが、着てる姿は想像するだけでご飯五杯はいける。いや。それ以上に!メイド服はやっぱり至高である。特に異世界ともなると!


 その後、工場の奥にある居住スペースへと案内してもらい、服を着替えることになりました。そして、なぜこの服を渡したかの理由が分かりました。鏡の前にカナと二人で立った時、耳としっぽが消えていました。

 いや。正確には不可視化しているようで、いつものように耳は動かせるし、尻尾も変化がないのだ。そう。ただただ見えなくなっているだけ。

 そして、なぜ不可視化させる服を渡したかの理由はきっと、あれですね。狙われるんですね。ありがちで獣人定番ですね。高値で売られるとかそんなもんでしょう。すぐ横にその被害者いますもんね!いやー、ラノベたくさん読んどいてよかったなー。こんなところで役に立つなんて―。アホデスカ?


「終わったかしら―?」


 ディスさんの声に、急いでカナの服を整えて工場の方へ戻る。もう少しカナのメイド服姿をゆっくりと二人だけの空間で見ていたかった・・・


「あら。やっぱりかわいいわね。そう思わない?」

「ああ、サイコーだな。耳とかを隠しながらも魅力は残す。いいと思うぞ!」


 そういって二人は笑い始める。それはそれはとても幸せそうに笑うものだから、カナと私も顔を見合わせて笑い合う。


「そうそう、不可視化はしてるけど、スキルとかを使っちゃうと、隠蔽系のスキルの応用だから、上書きされちゃって、不可視化が切れちゃうから気を付けてね。一定の時間空ければまた機能するから安心して」


 と、忠告を受け、武器を持ってドワーフの工業地帯を抜ける帰路へと着いた。カナはすでに短剣をメイド服のスカートの下に入れていた。そこらへんは元巨狼騎士だと思う。

 カナ曰く、巨狼騎士の中でも暗殺寄りだとレギオスの工場へ行くまでの道のりで言っていたので、そういう武器を隠すことは慣れているのだろう。

 頼りになるけど、ちょっとその双剣を取り出すときが見てみたい。パンツが見たいわけじゃないです断じて。絶対。





シーン3-3 稽古相手…は、メイドだけ?


 お久しぶりです。あの神様と夫婦のドワーフの一件から一年が経ち、ルミナエル・シルベスターとメイド以上の存在へとなったホカラナ・リエスタルト共に六歳です。


 あれから、母と父へ色々。特に父への説得がめんどくさかったのですが、説明を終え、今となっては毎日持ち歩くという周囲からすれば危険極まりない状態となっています。

 でも、私もカナも武器持っていると落ち着いてしまうんですよね。戦闘狂じゃないですよ!?でも何でしょうかね?カナとは共感できるのですが、体の一部みたいなものなんですよ。はい。


 それはそうと今は、カナとそろって美容院にて髪を切っています。

 理由は今年!とうとう学校という大人への階段を踏みしめるからです!いやはや二回目の小学校となるわけですが!ファンタジー世界の学生人生は大きく変わってくると思うので。楽しみで仕方ががないです。

 とはいっても、季節は冬。真っ盛りの今から準備とは気が早すぎる気がしないでもないのですが、ランドセルの発売とか宣伝コマーシャルよりは遅いので!問題ないです。あれ、早すぎませんかね?新入生は入学の時にランドセル買ってもらってその数か月後には新種が発売されるとは・・・恐ろしい前世の小学生時代。


 私は髪を切られながら何を言っているのでしょうか。




 切り終えた後、鏡のように反射する平らな石を壁に埋め込んだものを通して髪を見渡す。

 母譲りの白銀の髪にひとふさの空色の髪は、綺麗に切り揃えられシャンプーをしたこともあり、髪はさらさらの清潔感あふれる状態になっていた。前世ではなかったうれしい思いでいっぱいです。

 これには思わず異世界最高と言ってしまいますね。

 五歳から一年間カナとともに生活し、異世界生活を満喫した結果。適応してしまいましたよ!この世界にこの環境に。異世界ライフ、マジやば谷園!住みやすさで言えば・・・なんも例えられませんでした。

 髪の後はまたあのレギオンさんの工場へ出向き、装備のメンテナンスです!一年経って二人は結婚式の予定が立ったようで、前回以上に幸せムードがあふれていました。

 なぜメンテナンスをするかというと今日、後々同級生で幼馴染となる方と会うそうでして、それに合わせカナも私も準備しているというわけです。装備を整えるってなんか怖いんですがね?


 それから移動しまして、現在屋敷の屋外練習場にきております。ここの気候上、冬と言いつつも温暖で練習場も草が生え、とても感触がいいです!まだ例のお方は来ないそうなので、少しだけカナと寝っ転がります!ああ、いらっしゃいませファンタジー!


 さてさて、練習相手さんは遅刻のようです。

 遅刻はどうかと思いますよ!予定よりももう、三十分は経っています。寝っ転がっているのもいいのですが、せっかく整備してくれたので、絶賛今はカナと軽いシェイクダウン中です。

 初めてから数分が経過したのですが、中々きついです。

 一応カナが守りで私が攻めとして始めたのですが、未だに一撃も入りません。しかもカナ自身はほぼ疲労ゼロ。

 双剣の扱いと身のこなしが並のものじゃなさすぎるんです。バク転なんかなんのその。最終的に剣を一本犠牲にしながらの回避などお手の物。

 強すぎます。あ、犠牲にしてる剣はフルスイングの鎌でも傷一つつきません。逆に鎌の遠心力を吸収してしまっています。

 レギオンさん・・・化け物武器をかわいい化け物に渡しましたね・・・

 それと、神殿にて行われたあの儀式の結果が届いたのですが、面白いことになっていました。

 まず私の結果。というか儀式で神によって書かれた文字はこのようになっていました。


『ルミナエル・シルベスター

適性魔法


   水(氷)


適性値


 氷95826


運動能力


   平均以上(獣人基準)


神より


 使用武器に偏りがある。しかし、それを補えるほどの頭の良さと、柔軟さ。合わせて桁外れの氷魔法適性値。性格的にも今後の生活に支障はきたさないと見える。

 しかし、油断するべからず。お主を狙うものはたくさんいる。それは時に周りの人にも及ぼす。気を張り生活せよ。』


 と、こんな感じで細かくは書かれていませんでした。

 しかしながら、改めて考えるとなんだ九万って・・・これは、最悪チート問題な気がしないでもない。チート基準法なんかがあれば即告発もんだろう。

 そしてカナの結果はというと。


『ホカラナ・リエスタルト


適性魔法


   炎・闇


適性値


 炎7390


 闇21090


運動能力


   事実、常軌を逸している。


神より


 武器は使いこなせそうか?この紙を読むとき、もう武器は手にわたっているだろう。それを使いこなし、また、巨狼騎士へ戻り、主人を守れるよう頑張れ。あと、闇魔法は古のもの。扱おうもんなら、何も指南書もない。手探りスタート。それも活用すれば君は、きっといい意味で化け物級だろうな。そして、神から重要な任務を渡す。主人をしっかりと守り、共に生きてくれ。ルミナを頼んだ。』


 おうおう。何度思い返しても、神よりの欄は突っかかるな。

 いや。いつもね?一緒にいてくれはするし、何よりもかわいいからほんとに感謝してるんですけども、頼んだって…ねぇ?神様は私の保護者ですか?

 やっぱり次会った時は抗議の話題しかなさそうな気がする。


 覚えてろ。神様め…


 そして、これは後日談ですが、あの後練習場に幼馴染となる人は来ませんでした。

 理由は、遅刻しつつも立ち寄ったはいいものの、私とカナの殴り合いに恐れおののき逃げ帰ったと。

 まあ、私は当の本人でもありますし、精神的には十五歳・・・あれ?六年経ってるとしたら?二十一?ですし、カナも私と長くいますから、怖がる要素はないわけですが他人から見れば危険人物のぶつかり合いに混ざるなんてできませんよね。心境お察しいたします。なにせ相手は六歳なので、致し方ないことにしましょう。

 それに混ざろうとして母に気絶させられる父とは違いますもんね!

 そんなわけで六歳へとなり、身長も地味に伸び現在一一三。カナはあまり伸びずに一一八。と、カナのほうがまだ大きいです。

 いつかは抜かさなくてはいけませんね…あと胸囲も・・・


 時間は少したってカナが朝食をと、母とともに気絶中の父を引き吊りながら訓練場を後にして数分。

 私は一人である特訓をしていました。

 氷魔法をうまく活用しながら、技が作れないものかと。コンボ技でもできればいいなと思いながら、空中で鎌をふるいつづけていました。

 と、氷魔法で結晶を作って自身の周囲に漂わせていると体の芯から何かがこみあげてくる感覚になりました。

 分からないまま周囲に氷の結晶を漂わせていると、突然脳内に声が響いてきました。それは、神の声でもない別の声で「白狐寡黙を習得」と。

 直感的にスキルができたと思いました。

 その思いも正解のようで、体に違和感が発生しました。


「耳・・・大きくなってる?あと、尻尾輝いてない?ていううか神々しくなってない!?」


 思わず声を出してまでして独り言を叫ぶ。それも仕方がない。耳はいつも以上に大きく二等辺三角形のようになり、神々しく。尻尾も分裂したのではなく本当に二本に増え、それもまた神々しさを持っていた。

 そして何より氷の結晶に代わって火の玉のような青白い炎が四つ、私の周りを漂っていた。


「できちゃったよ。スキル!!やった!成功した!ファンタジーいらっしゃいませ!ウェルカム異世界事象!」


 大声で訓練場いっぱいに広がる声で、神々しいまま叫ぶ。まさか本当にスキルを作ってしまうなんて思ってもいなかった。

 両手を上げ、一瞬目を閉じる。瞬間、強い光が突き抜けました。

 瞬間的には何もわからずに、あたふたしましたがこれがスキルフラッシュであることは、カナとの練習のおかげか、すぐ判別はついたのですが・・・まあ目が治るまでにはそれなりに時間が・・・ね?

 暗い所から急に明るくされたとき以上の真っ白な世界が続くこと十数秒。やっと視界が回復してきました。

 にしても瞼を突き抜けるほどの光ってどんだけ強いんですか・・・。


 そして、その光が神様から与えられた能力の一つだなんて思ってもいませんでした。

 一度ぐらい状況整理というものをするべきですね・・・。






 そして、私は神さまさえ忘れていたことを思い出した。


 そう。あの能力とともに選んだ「アレ」の存在を。






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