表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様とスローライフ  作者: 二ノ宮明季
PR
16/30

16

 家に戻って直ぐにするのは、収穫した野菜を軽く洗い、上にザルをかぶせておく事。それからお湯を沸かす事だ。

 新鮮な野菜はよく動くので、脱走防止のザルが不可欠なのである。

 もし脱走されると、勝手に日の光で成長し、やがて蔓状の手足をつけ、「ケケケ」と笑いながら走る存在になってしまうので、脱走には十分な注意が必要だ。

 お湯が沸くのを待つ内に、少し硬くなったパンを焼き、昨日勇者に出した残りのベエコンも焼く。

 お湯が沸騰すると、レイラが野菜達をドサドサとお湯の中に入れ、野菜の動きが鈍ったらザルにあけて水で冷やした。

 俺が朝食を作っている間に、ドナベの下準備をしてくれる。何も言わなくても必要な事をしてくれるあたり、非常によく出来たドラゴンだ。

 いつでもお嫁に行ける。嘘。行かないで欲しい。


「はっはっは、儚い命だったな」


 お嫁に……やるのは問題がありそうだ。野菜が動かなくなった事に対して、つっつきながら勝ち誇っているんだから。

 あー、でも、レイラはウチに永久就職するらしいし、俺が気にしないなら問題ないか。


 ちらりと冷えた野菜を見ると、ピーマンの一部が削れていた。収穫した後、どれかのピーマンに食べられたらしい。

 弱肉強食だしなー。仕方がない。

 それに、ちょっと食べられたくらい、そんなにデメリットがあるわけでもない。齧られた方はちょっと削れて、齧った方は野菜の味が濃くなるのだ。

 つまり当たり。強い野菜は味も濃くて美味しい。

 問題は軽くでも茹でてしまえば、どれが食べたピーマンか分からなくなってしまうところくらい。


「魔王様、ちょっと思ったんだがいいか?」

「ん? 何だ?」


 さっきまで野菜に対して勝ち誇っていたレイラが、唐突にこちらの手元を覗きながら問う。

 俺の手元にあるのは、フライパンと、その上で油をじゅわじゅわ出しながら焼けているベエコンだ。


「このベエコン? に、昨日のシャバシャバの、えーっと」

「ショーユ?」

「そう、その、ショーユをかけて、パンに乗せたら美味しそうじゃないか?」


 ふむ。確かに美味しそうだ。元々塩味の強いベエコンだが、これにあの香ばしい香りがプラスされるとなると、悪い組み合わせには思えない。

 俺は戸棚から、昨日絞った後に使いやすい容器に入れたショーユを取り出し、スプーン一杯分だけ、回し入れた。

 ジュワーっと大きな音を立て、大きなあぶくも立てるショーユはベエコンによく絡み、ベエコン自体の色をも染める。


「美味しそうだな」

「ああ、美味しそうだ」


 俺とレイラのお腹から、きゅー、と音が鳴る。お腹が空いた。

 俺は焼いたパンの上に味付けしたベエコンを乗せ、それから梅の漬物をドライアドの樽から出して、少しだけ添えた。物凄く酸っぱいのだが、これが悪くないのだ。

 使う物も至って簡単。梅と塩とシソ。後は食べられないカビが生えないように酒と、作る過程の根気さえあれば出来上がる。


「ご飯だご飯だー」


 レイラが嬉しそうに声を上げ、直ぐにお茶を淹れた。俺はその間に作った物を食卓に運び、フォークを準備する。

 お茶が食卓に置かれると、俺とレイラは二人で声を合わせて挨拶してから食事を始めた。


「レイラが言うとおり、ショーユと相性がいいな。美味しい」

「そうだろう! しかし、これでパンはおしまいか」


 もぐもぐと咀嚼しながらも、これから必要になりそうな物を呟く。


「今日はパンを作ろうか。さっきの野菜も一回ドナベして、ちょっと時間を置いてからスープにしたいし」

「と、なれば、先にドナベしておいて、その間にパンを作る感じになりそうだな」

「そうだなー」


 昼間は野菜に水を掛けなくてもいい。昼になると土の温度が上昇し、水をやる事とでかえって熱くなってしまうのだ。

 そうなれば、折角の野菜がぐったりしてしまう。ピーマンだって他を齧る気力を失ってしまうだろう。


「ベエコンはまだあるし、ミソもショーユも出来た。塩もまだあるから海水を取りに行かなくてもよさそうだ。でも薪はそろそろ欲しいかな」

「ふむ。後で薪も割ろうか」

「ついでに炭も作っておくか?」

「ああ、それはいい」


 今は二人暮らしになったから、やる事が結構多い。

 それでも俺達は、それなりにこの生活を満喫していた。


「ごちそうさまでした!」


 朝食を終え、二人揃って手を合わせる。


「今日も一日頑張るぞ!」

「おー!」


 俺達に休みは無い。だが、毎日楽しく生きている。


   ***


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ