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第9話 悲劇のティナブーム、ゾンビと共に到来す

昼休みのこと…


「ねぇねぇ!今日のニュース見た!?」

「みたみた!」

「すごいよね!あんなに可愛い女の子が大人の人助けるなんて!」

「ね~」


なぜだ!なぜ女の子と化したボクの方が人気でるんだよ!ちくしょぉぉ!


「初日から元気がないではないか!まさか魔界から来た精霊に魂を蝕み続けられているのではないか!?」


すこしズレた厨二病、オブラート氏の発言。


「精霊じゃなくて神…(ボソッ」

「何か言ったか?」

「いや…?」

「ではやはり精霊にとりつかれているのだ!喋った記憶がない!これはすなわち精霊が喋っているのだ」


意味わからんわ!





そうそう、昨日は紅華として1日を過ごしたから今日が『蒼』として初めての登校なんだ!


でもオブラートのこといきなりオブラートって言っちゃったんだよ…。まだ向こうが自己紹介してないのに。


だからとりつかれた扱いされてるんだよね…はぁ…


ふと、女子達の話に耳を傾ける。



「私達の前にも来てくれないかな?」

「まぁ無理でしょ~」

「でも結構ここから近いみたいだよ?」

「そうなの?」

「ここから十五分位のところらしいよ」

「ほんと!?」


三秒位のところにいるんだけどね。


やっぱりボクは女の子として産まれて女の子として生活した方が良かったのかな…?








刹那、






「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


汚い男の絶叫が学校中に響いた。


「な!?」

「な、なんだ!?もしや、暗闇の魔獣《ダークネス・モンスター》が現れたか?」


ボクとオブラートは慌てて席を立った。


『おい!蒼!聞こえておるか!?』

「聞こえる!!」


珍しくターシャの声が裏返っていた。


『今、お主の学校とやらで未知の生態エネルギーが発生しておる!向かうのじゃ!』

「わ、わかった」


まさか…また化け物が?

な、なぜ?


「くっ!」

「お、おい!」


ボクは急いで声のした方に駆け出した。



――――――――――――――



「こ、これは…?」


廊下の奥の方でしりもちをついて、座り込んでいる男子。そしてその視線の先には…。


「ぞ、ゾンビ?」


ゆっくりと座り込んでいる男子に歩を進める、辛うじて形は人間としての姿を保っているがその姿は見るに耐えない。


「わぁぁぁ!助けてくれ!」

「っ!!」


頭よりも体が先には動いていた。


「ファシアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


冬山 紅華に姿を変える。


「シネリアル、シスト!!」


魔導書を開いて当てずっぽうに目に入った魔法を唱える。


すると、杖が蒼白く光出しボクを引っ張りながらもの凄いスピードで飛び始めた。


「うわっ!?」


その速さのあまり、足が地面から離れ宙を舞った。


「い!いっけぇぇぇぇ!」


杖の進行方向はゾンビらしき者。ボクは杖を傾け、先端がゾンビの顔に来るように調整する。


ゾンビゲームはいっぱいやってるからね。大抵は頭を撃ったり壊したりすればいいもん。


「やっ!!」


ガツッ!という固い感触が杖を伝わってきた。


その勢いのまま、男子の制服をむんずとつかみゾンビから離れた場所に避難させる。


「早く逃げて!」


そう叫んで男子があたふたと走っていくのを見届けるとゾンビに再び向き直る。


「ウーーーーー」

「っ?効いてない?」


ゾンビはなんとも無いかのようにこちらにゆっくりと歩いてきていた。


まぁ、ゾンビは死体っていうのが基本だから痛みを感じないのかな?物理攻撃が効かないなら魔法で何とかするしかないか…。


魔導書をペラペラとめくる。


「ミサカイナ・ライトニング!」


唱えながら杖をゾンビに向ける。するとゆっくりと回る黄色の魔方陣が発生し、その中心部分から魔方陣と同じ色のレーザーが放たれる。


「ウ~?」


しかしゾンビに命中はしたものの、多少怯んだだけでたいした効果は無さそうだ。


「くっ、ならば……っ!」


魔法を探そうとすると不意な脱力感に襲われた。膝に力が入らずガクリと座り込んでしまった。


「ま、まずいっ」


立ち上がろうにも、立ち上がることができない。だが、ゾンビはなおも動きを止めない。


「し…死ぬのか?」


正直いって、復活してから『死』というものに対しての恐怖が薄れていた気がする。


でもやっぱり、こう『死』を間近にすると恐怖で涙が出てきそう。


「せめて…男の姿で死にたかった」






………ささやかな願いである。




そう、諦めた時だった。死を受け入れた時だった。




「諦めることは全ての終焉を意味するぞ」

「え…?」


この声は…まさか…

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