表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/63

第8話 何が魔法だよぉぉ(涙)

「それでは蒼の女体化を祝ってっ!!」

「「「かんぱ~い!!」」」

「乾杯すなぁぁぁ!!!」


父、博也が音頭をとり母、裕美。沙与。ターシャがコップを持って乾杯する。

なんでだよぉ…ボクは男の子として生きてはならないのかぁ…


「でも、その一人称何とかしないとね」


と、沙与。


「いやぁ?良いんじゃないかしら?一人称がボクでも良いんじゃないかしら?」


と母。


「その根拠は?」

「私のこ・の・み。全国の一人称がボクの女の子は私が纏めて抱き締めてあげるわっ!」


まてまてまてまて、今全国の99.9%の一人称がボクの女の子が引いたぞ!!??そこらでやめとけ!!


「にしてもようやく俺たちも女の子を授かれたか…うっ!嬉しすぎて涙が!」

「悲しすぎて涙が!」


父子ともに目に涙を浮かばせた。



その時だった。



「キャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


鋭く高い悲鳴が家の外に響き渡った。


「なっ!?」

「な、なんじゃ!?」


さすがのターシャもこの不意討ちには驚きを隠せない。

ってかそんなこと言ってる場合じゃねぇ!!


「え~と杖は~」


何が外で起きているかどうかはわからない。だが、杖と魔導書は持っていって損はしないだろう。


「二階だっ」

リビングのドアをあわてて開き、さっきまで寝ていた寝室に向かう。


「せわしない子ね」

「いいじゃないか…それより蒼の様子を見に行くぞ!」

「わかったわ!」

「…はは…」


リビングは盛り上がっているらしい。その内容は…聞かなかったことにしよう。


「あった!」


右手に杖、左手に魔導書をつかみとり窓から顔を出す。


「あれは…?」


そこにはさっきの悲鳴の持ち主と思われる、黒いスーツに身を包み、何やら重そうな鞄を手にした女性が走り回っていた。そしてそれを追いかける獣のような化け物。


その化け物は女性の腕をわしづかみにし、腕を振り上げた。


「キャァァァァ!?」

「まずいっ!!」

今から玄関に行っても間に合わない。

そう思い窓から飛び出す。


「メテオ、インパクト!!」


蛇の化け物の時、落下死を防いでくれたこの魔法。

杖を振り上げて化け物の頭にヒットさせる。


「うぎゃぉぉぉ!?」


ぼぐっ!と鈍い音がし化け物は頭を抱えて座り込んだ。


「このガキ!!何しやがる!!」

「誰がガキだ!!」


ガキは禁句だこのやろー!!

急いで魔導書を開く。


「モンテ・スエズ!!!」


女性が正面にいないことを確認し唱える。


すると魔導書に黄色い魔方陣が描かれ、そこからとてつもない速さで風が巻き起こった。


「うおっ!?」


化け物の驚きの声が聞こえる。


さらに、その風に乗って石や砂が化け物に飛んで行く。

砂嵐の進化系的な?


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


化け物の断末魔が聞こえた。


砂嵐が晴れるとそこに化け物の姿はなかった。


「ふう……………、モンテ・スエズって…思いっきり地名じゃんか。モンテ・グラッパとスエズでしょ?」


ここが舞台のゲームやってたからよくわかるぞ。


「と…それよかそれよか…」


ボクは後ろに体を向ける。そこにはへたりと座り込んだ女性がいた。

女性は震えていた。

まぁ…無理ないでしょ。いきなり化け物に襲われるなんて考えもしないし。


「えっと…ボクはあなたを襲いません。安心して下さい」

「…っ」


女性は体から力を抜いた。どうやらこちらに敵意がないとわかってくれたらしい。


「あなたは…私を…助けてくれたんですか?」

「え?えっと…まぁ…はぃ…」


しまった!こんなときこそ!「はい(どやっ)」てやれば格好いいのに!!(?)


「あなたの名前を…教えていただけますか?」

「え?」


ぎくり、ここで「冬山 紅華で~す、きゃはっ」とか言えない!あかん!もぎゃぁ!どうする!?


「えっと…ティナです」


適当に言っちゃったよ…、持ってる本の主人公の名前にしちゃったよ…。


「ティナさんですか?…綺麗なお名前ですね。助けてくださってありがとうございました」

「いえ…」「これ…せめてものお礼です。よかったら受け取ってください」


そう透き通った声で女性は礼を言い、持っている黒い鞄から一つの小さなリボンを取りだし、ボクの手に握らせた。


「それでは…」


そう言って女性は重そうな鞄を肩からかけ、歩いていった。


リボンの柔らかな感触と、女性の肌の暖かさが手に残っていた。






―――翌朝…






「ん~!よく寝たっ!!!」


太陽の光が部屋のカーテンの隙間から差し込んでいた。


あのあと、疲れてベッドに飛び込んだらしい。あんまり記憶に残ってないけどね。


「いしょっと」


体は元のボク、「夏波 蒼」の姿に戻っていた。今日は女体化しなくてすみますように。


そんなことを思いながら、ベッドから体を起こしリビングに向かった。




「おはよ」

「おお、目覚めたか」


朝イチでこいつの声を聞くことになるとは。なんかしゃくだぞ。


「またターシャいるし…」

「ヨイデハナイカ!わらわはこの家がきにいったのじゃ!」


食べ物に釣られてるだろ。


「あら~、そういっていただけて嬉しいですわ~、ターシャ様~」

「うむ!苦しゅうない!」


お前は戦国大名か!母さん!あんたキモいしゃべり方すんな!


「まぁそうカリカリするではない。朝からいらいらするのは体によくないぞ」

「ターシャのせいだぁぁ!」




だが、そんな風にボクが喋ることができたのはここまでだった。



『さて、次のニュースです』


そうテレビに写っている女性が喋った。



あれ?この人…どっかで…



『昨晩、都内で女性が正体不明の生物に襲われるということがありました。ですが、突如現れた少女によって女性の命に別状はありませんでした』


おい…まさか…


『その少女がこちら。この少女は謎の力によって正体不明の生物を追い払いました。私達はこれからこの少女について、調べていきたいと思います。…さて、次のニュースです…』





まじ…か…




このニュースキャスター…昨日の人だよ…

重そうな鞄にはカメラでも入ってたのか?


「あれあれ、テレビに出てるじゃない!蒼もついにテレビに出るようになったのね!」







ちくしょう…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ