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番外編 そうだ!冬だからスキーに行こう!!①

「ひゃっはぁぁぁっ!!!やっぱり冬は最高だぜぇぇぇ!!!」


ザシュッ!ザシュッ!と音を立てながら真っ白な斜面を猛SPEEDで滑り降りる一つの影があった。


「いやっはっぁぁぁぁ!!」


ほんの少しの段差を利用し、空中に飛び上がったそれはくるくると空中で何回転も周り、数秒後に着地し再び斜面を下り始める。


「いゃっはあぁぁぁっ!!」





先ほどから奇声をあげながら斜面を下る影の正体は『夏波 蒼』。スノーボードを足に取り付け、プロ顔負けの技を披露しまくっていた…。



――時は遡ること二日前…



「スキーに行きたいぃ?」

「そう!」


スマホを片手に、紅茶の注がれたティーカップを反対の手に持ち『あふた~ぬぅ~んてぃ~』を満喫していた蒼…ではなくその母親である『夏波 博美』がバン!と机を叩いた。

まちろん、これまでの数々の戦闘で感覚が異常なまでに強化されている蒼は彼女が机をスマッシュする寸前で紅茶を机から離していたりする。


「…でもなんで急にスキーなんかに」


蒼は紅茶を一口すすって再びスマホに目を戻した。

今は彼(中身は男)は無料動画サイト『Hertube』で彼の好きなゲームの大会の映像を見ているのだ。なお日本大会である。


さすが蒼氏。戦闘中にもゲームの話題を振っているだけあって家にいる時はほとんどゲーム関係のことしか考えていない!


皆さん!これが普段、魔物を度々かかと下ろしで粉砕してきた人の日常です!


「…それが町内会のおばさんたちが『そろそろ雪の季節ねぇ、買い物とか大変だわうふふふふ』って話題を振ってきたから『私、スキーで買い物行くんですよっ!』って言っちゃってさぁ。そしたらおばさんたちが『じゃあ今度教えてちょうだい!スキーうふふふふ』って…」


「…」


蒼は頭を抱えた。

小学生の意地の張り合い並みに下らない会話と、町内会のおばさんたちのしゃべり方の恐ろしさに蒼さんのsun値は一気に低下したのである。


「ねぇ~。だからお願ぃ~。私にスキー教えてちょうだぃ~」


「いやだわ!ってかそもそもボクはスノボーなんだから!スキーは教えられません!」

「そんなぁ~」


博美はおよよよよ、と膝を崩して四つん這いになった。

しかし、彼はそれを一瞬だけ目に入れただけで再び動画鑑賞たいむを続行させたのだった。


「蒼の意地悪ぅ~」

「無理なもんは無理だから!」

「…。そういうこと言うなら…」


博美は蒼よりも薄い青色の髪の毛をばっ!と広げながら立ち上がりずかずかとリビングを出ていった。


「またパソコンスレイヤーする気かな?」


それを見送って再び紅茶を一口する蒼。


蒼の母親を、彼は時々『パソコンスレイヤー』と呼ぶ。というのも、彼の父親である『夏波 博也』の愛用のゲーミングパソコンは、博也が家族で温泉旅行に行きたい!と駄々をこねた彼女の願いを断った翌日に逝ってしまったのだ。

博也がそれを見て絶叫している中、犯行現場に残された木製バッドをこっそりと隠そうとした博美を蒼さんが発見!博美さんはこぴっどく怒られました。


その際に博也がゲーミングパソコン同盟を結んでいる蒼に向かって言ったセリフ…


いいか、我が息子よ。よく聞け…

――彼女は世界を救わない。ただパソコンを殺すだけだ…


と泣き顔で言ったことから彼女には『パソコンスレイヤー』の称号が与えられたのだった。



ちなみにパソコンスレイヤーの攻撃の次の日、新たなゲーミングパソコンをげっちゅしてきた博也のセーブデータ復興作業に無理矢理手伝わされた蒼さんであった。



「ま、そう簡単にスレイヤーさせると思ったら大間違いだね。」


そして無言で動画にコメントを送る。




蒼さんが余裕なのには理由がある。二度とパソコンスレイヤーされないために、パソコンに魔方陣を刻み強力なシールドを展開しているのだ。木製バッドで殴ったくらいじゃそう簡単に破壊できる代物ではない。


「ムキー!!なんなのよぉぉ!!なんでバッドの打撃が無効化されるのよぉぉぉ!」


彼の部屋からは、裕美の声が響いていた。


「…父さんのパソコンにもつけといてあげるか」


そんな中、蒼さんはにんまりとほぐそ笑んでいた。


「ならばぁぁぁ!!水をぶっかけてぇぇ!!」

「う゛ぇっ!?」


だが、スレイヤーの奇想天外な発言を耳にし今までの余裕は失われた。ティーカップとスマホをテーブルに置き、ガマガエルのような声を出しながら彼は己の部屋に飛んでいった。


「おらぁぁぁ!!!」


だが、彼が部屋に入った時水色のバケツに入った水をパソコンにぶっかけている裕美がいた。


「させるかぁぁ!!『アイシクルフォール』!!」

「う゛ぇっ!?」


だから、瞬時に初級冷凍魔法を発動。パソコンに向かって滝のように向かっていった水はそれにあたる寸前で凍ったのであった。


「…そこまでするか…パソコンスレイヤー…」


蒼はその場で四つん這いになった。たかがスキーに行きたくないがためにパソコンが危うい目に会うのだ。


「…パソコンスレイヤーの力を目に焼き付けろ( ̄ー+ ̄)!しょ~たいむだ!!」


まさかの二杯目を用意していた裕美がそれを掲げて『某段ボール大好きな傭兵ゲーム』の主人公の必殺技の時に発する台詞を言った。


「やめろぉぉぉ!!わかった!行くから!スキー!行くから!」


四つん這いになった状態で手を伸ばし、ついに観念した蒼さん。裕美はそれを見るとバケツを掲げるのをやめて彼に向かっていった。


「わかればよろしい」


そうして二個のバケツを両手に持って弾む足で部屋を出ていく裕美。


「…スキーのために…いくら無駄にするきだ…パソコンスレイヤー…」


部屋の中では再びうなだれている蒼がいた。彼は心の中で復讐を誓うのだった。




「ただいま~」


スーツの上からダウンを着て、首にマフラーを巻き付けて帰ってきた『夏波 博也』。なぜかその手には大量の紙袋が握られていた。


「おかえりってあなた!なんなのよ!それ!」


玄関からひょこっと顔を覗かせた裕美が驚愕を露にする。


「ちょっと仕事の帰りにアキバ行ってきたんだよ。そしたらついつい買いまくっちまって…」


「いや…なにそのちょっとコンビニ行ってきたみたいなノリ」


続いて顔を出した蒼がツッコム。

夏波家から秋葉原まで、少なくとも電車で一時間程かかる。博也が勤めている会社は家からそう遠くないがら、そんな軽いノリで行くことなどそう簡単にはできない。


「…。で、なにを買ってきたわけ?」

「ふっふっふ。今日はなぁ!」


バッ!と紙袋の中から一つ。直方体の箱を勢いよく取り出した。


「限定フィギアだっ!!!」

「えぇぇぇぇっ!?あの1ヶ月で製造終了になったフィギアァァァァ!!」


それを見たとたん、彼女は目の色を変えて彼…ではなくフィギアに飛び付き、引ったくった。


「すごいわ!よくこんなフィギア残ってたわね!!」

「はっはははっははー!」


博也は腰に手を当てて、まるで大魔人のような笑いをかました。




そう、この二人はオタクだ。オタクの血だけで形成されているのだ。二人が出会ったのは実はオタクの聖地、秋葉原だ。


裕美が中々取れずに苦戦していたユーフォーキャッチャーの景品を博也がどや顔でげっちゅし、それをどや顔で裕美にプレゼントしたのが事の始まりだったのだ。


「…オタクモードの二人は危ない…逃げよう…『転移』」


それを見て顔を真っ青に染めていた蒼さんが空間魔法を使ってその場から離脱したのだ。


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