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第58話 パンパカパーン!

そこからは視界に写るもの全てがスローになって見えた。いわゆるゾーンというやつだろうか。


ボクの目の前には迫り来る拳がある。防御なしの状態でくらったらとてつもない威力なのは間違いない。

だからといって今から回避行動をとっても遅い。

剣っ弾くか?いや、それも間に合わない。なら魔導書で…、それも無理か。それを持っていた義手はたった今、目の前で破壊されてしまった。




どうする?




そしてゾーンが切れる。



「っ」


覚悟を決める。目を固く瞑って衝撃に備える。


「…?」


しかし、いくらたってもそれの衝撃は感じることができなかった。


もしかしたらまだゾーンが続いているのかもしれない。そう思って恐る恐る目を開ける。


「…わぉ」


思わず声が漏れた。放たれた拳は突然現れたアビスコールによって受け止められていたのだ。

「アビスコールゥゥ!?」


カッコいい前振りもなく、いきなりどこからか参上したアビスコールっち。彼は受け止めた影の拳をがっしりと握りしめ、放り投げた。


「う゛ぉっ!?」


影が意外にも驚いた声をあげる。なんかクールなタイプだと思ってたからそんな風な声をあげられると一瞬ビビる。


「一度結んだ約束は必ず果たすのが我らの掟ですから。条約相手…いや。友のピンチに駆けつけない友などいないでしょう」


いや、いるな。どっかの神とか神とか神とか神とか。今日もどうせプリン食べて寝てんでしょ?あの神。


「って言ってるけど、そっちは大丈夫なの?これがまだ四体はいたでしょ?」

「それは我の部隊が必死になって戦っています。壊滅の危機にあったときは不意討ちでしたから危うかったのですが今は正面からの正々堂々とした戦いですから。そう簡単には負けませぬ!」


なんだ、結構強いんだね。あんたさんの部隊。ってさ?正々堂々って言ってるけど完全なまでに数の暴力だからね?何対何だと思ってんの?


「おいおい、何か飛び入りで参加してきやがったなぁ」


ぶっ飛ばされた影がカッコつけながら立ち上がる。どうしたん?頭でも打ったん?あーゆーおーけー?


「蒼殿は我が守る。蒼殿には指一本触れさせはせぬ!」


うわぁ、言っちゃったよ。圧倒的すぎるフラグ発言。

それにさ、ボク自分から触れにいくからね?



なんかさ、



ごめんね!?




「モンテ・スエズ!」


土属性中級魔法…長らくご無沙汰だったけどまあ腕は落ちていないだろう。(実質、片方ないが)


剣先から金色の魔方陣が描かれ、そこから巨大な岩石と極上の粒の砂が放たれる。


「っふ、そんな遅い攻撃。当たるものか」


ちょびイケメンゼリフを吐きながら影は優雅に岩石をかわし砂を吹き飛ばした。

まぁ、囮なんですけどね。

「ミカナ・フェリアル!」


ミカナ・ライルに素の状態でも僅かに使うことのできる闇の魔力をまとわせる。


「縛光!!」


そしてその切っ先から闇の衝撃波をいくつも作り出し影に使って放つ。


影がそれを攻撃して相殺させていることを確認して地面に魔方陣を描く。


「魔方陣展開式魔法【時断】!」


すると影の動きがピタリと止まった。

と、次の瞬間。影は腰から亀裂が入りずるりとその上半身が崩れ落ちた。


「…これがあと何体も…」


一つ一つ倒すのに毎回【時断】を使っていては魔力の消費が凄まじい。というか、今ので次から使う魔方陣展開式魔法の威力は半分に落ちてしまう。そうなればこいつらを倒せるかどうかも不安になってくる。


「蒼殿、大丈夫でしょうか?」


「ん?あぁうん。何とかね…けどこれを後何回もやらないといけないと思うと…気が滅入るよ…」


苦笑を浮かべて答えた。正直のところ今気を抜いてしまえば地面に倒れてしまう。それほどの戦いだったのだ。

ちゃんと焦点が合わず、世界が二重になって見える。


一体でこれだけなのだ。これ以上戦ったらボク死んじゃうよぉ!


「あ…」


そして世界が90度回転した。ボクの馬鹿ぁぁ!こんなところでバランスを崩すなんてっ!

しかし、地面の固い感触はなかなか現れず何かにふわりと支えられた。


「っと…大丈夫ですかな?蒼殿よ」

「アビスコール…?」

「?なんでしょうか?」


「アビっちって呼んでいい?」


「…」


感謝の言葉を期待していたであろうアビスコールの体が硬直した。


はやく日常に戻したい…

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