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第54話 多くねぇか!?マヂで!






「ふぃ…」

「お湯加減は大丈夫ですか?」

「んん?うん、全然大丈夫。丁度いいよ」


まあ、戦闘後だったのも合わせてボクはオブラートん家のお風呂を借りている。当初、ボクが想像していたのは一般的なバスタブだったがその予想を大きく裏切りまさかの大浴場と来やがった。

オブラート曰く、重力魔法で空間をねじ曲げて造ってあるからな。ほんの少しのスペースにもこんな巨大な風呂が造れる。らしい。


くそう…あいつ毎日こんないい風呂に入ってやがるのかぁ!!


そんなこんなで、トゥナと一緒に入浴中なのである。この銭湯なみにあるスペースでたった二人。どんな贅沢だよ、全く。


「お背中をお流ししましょうか?」

「…う~ん、トゥナが構わないのなら」


正直、身内でも無い人にこんなことをしてもらえる機会はない。それに今回は本職のメイドだ。ありがたく流してもらうとしよう。





「えっと…この翼…どうしますか?」

「…どうって…」


そう言えば服の中に入れて隠しっぱなしだったこの翼。洗っていいものやら。



この翼って、飛べたりするんかな?今は足から魔力を放出して飛んでいる訳だけど…もしこれで飛べたなら飛行中の魔力の減りがなくなる。…まあ、その内UMA判定下されそうだけどね。


「では洗ってしまいますね?私の角も洗っているので」

「…お願いします」


ということで洗っていただくことにした。なんともくすぐったい感じもするが、痛かったり凍みたりという感覚はない。





「蒼様と私のご主人様は幼い頃からのお知り合いなのですか?」

「…らしい…」


まだ記憶が定かになった分けでもないし、あの二人が確実にボクらであるという保証もない。


「だとしたら…ふふっ…蒼様はさぞ可愛かったのでしょうね」

「えぇっ」

「だってそうじゃないですか。今でさえとても美しいに…、そこも大きいし」


トゥナはボクの胸を指差す。びっくりしたので触られる前に隠す。


「私には…友人と呼べる人がいないので…。そのちょっと憧れていて…」

「…」


トゥナはどこだか寂しそうに呟いた。

そういえばそうだったな。この子は羊頭族だ。ただでさえ、人間以外の種族が生きにくいこのご時世でトゥナが友達を作ることはとても難しいことだろう。


…だとしたら、その気持ちを汲んであげるべきなのかもしれないな。


「ボクじゃだめかな?」

「えっ?」


彼女は一瞬何を言われたのかわからないといった様子で困惑していた。


「ですが…やはりご主人様のご友人は…」

「別にいいんじゃないの?オブラートだって友達を作っちゃいけないだなんて言ってないだろうし。オブラートの友達だから友達になっちゃいけないなんて、決められてないだろ?」

「ま、まあ…」

「じゃあいいじゃん、魔人族と羊頭族の友達なんてね!」

「友達…」


トゥナはその言葉を噛み締めるようにして呟いた。


「そう、友達。ボク達は友達だよ」

「…なんというか…その…ありがとうございます…蒼様」

「友達相手に敬語とか、様付けで話す人なんていないよ。タメでいいし、様なんてつけなくていい」

「そう…あ、ありがとう」


よほど敬語になれているらしい。タメ口で話すことに少しながら抵抗を感じているようだ。


「…ちょっと待って…」


トゥナに微笑み返そうとしたとき、何かの気配を感じた。と、いうのも実はその能力性を高めるために微弱ながらも『察知』を常時発動している。魔力の消費を抑えるために能力に制限をかけているから、気配の持ち主がどんな形でどんな者か、そこまではわからないが大体の場所までなら把握できる。


しかし、この駄々漏れな闇の気配はっ!!


――ガラララッ!


風呂場の扉が開かれたタイミングで洗面器をそちらに向かって投げつける。


「覗こうとしてんじゃねえぇぇぇ!変態野郎おお!」

「ほぅぐぁっ!」


手から離れた洗面器は弧を描くようにして進み、オブラートの顔面に吸い込まれていった。







「ったく、よくあんな変態の下につかえていられるよな」

「…ま、まぁ、それ以外はいい人だから…」

「そんなもんかねぇ」


顔を湯船のお湯の中に沈める。やばいな、あいつがあんなに変態だと…ボクたちの過去はなんだかヤバいような気がした。


なんとなく、どこか悟った自分がいた。




『…おほん、ちょっといいかの?』

「…なんすか?ターシャ様」


突然、どっからともなく頭に流れる脳内通信。

せっかくの入浴タイムのいい気分を阻害されて腹が立ったので、ふてくれたように適当に返答する。


『こほんこほん…、えっとのんびりしているところ悪いのじゃが…、ちと出発してくれんかの?』

「えー、なんで?」


『この町全体に避難指示が出されたらしいのじゃ。それも、原因不明の。そこでレインのが魔力感知をしたところ上空に…無数の反応があったらしいのじゃ』


「…どれくらい?」

『…数えきれんくらいじゃな。じゃが、まだ何か行動を起こしているわけでもない。じゃからお主に様子を見てきて欲しいのじゃ』

「えぇ…、ってかなんでボクやねん、この国にだってヘリとかジェット機とかあるでしょ?」

『その国もなかなか行動を起こさんのじゃ。変に刺激して、魔力の持ち主達を活性化させぬようにかはたまたその他の理由か…。そんな訳で、お主に様子を見てきて欲しいのじゃ』

「いつ?」




『もちろん決まっておろう。今じゃ』





「はぁ…なんでボクが…」


せっかくの大浴場でのお風呂タイムが邪魔されてしまったではないか。様子を見に行ったら速効で戻ってやる!


てきぱきと着替え、魔力を足に纏わせ宙に舞う。ちらり、空に目を向けるとそこには確かにおびただしいほどの黒い点があった。あれがターシャの言っていた『魔力の発生源』だろう。


「…なして…襲ってこないんや」


エセ秋田弁とエセ大阪弁で思わず突っ込む。


おいおい、こんなに近づいてんのに攻撃されないのは初めてだぞ?もしかしたら友好的な魔物かもしれないな。



はるか上空で群れをなして待機していた数えきれないほどの魔物。それも、一種族から構成されていると思いきやまさかの他種族構成でした。はい。


「…誰だ…お前は…」

「それはこっちが聞きたいんだけどなぁ?」


さらに距離を縮めると、ようやく気がついて頂けたようだ。よかったよかった、ちょっと存在が薄いのかと思ったじゃん。心配させやがって。


「ふむ、そうだな。わさわざそちらから出向いてもらっていると言うのに…これは失礼。しかし、これだけの人数だ。とりあえず自己紹介はお預けにさせていただくとしようか」

「まあ、こちらとしてもこんな量覚えたら頭が破裂するしね」


ぬっと一つ、集団から抜けた一つの影。逆光で詳しく顔を見ることはできないが、その声の図太さと影の大きさからして化け物がさらに化け物にランクアップしたということ位はわかる。


「実は要求があるのだ…夏波蒼と呼ばれている者はいるか?」


「へ?」


まさか自分のことが出てくるとは思わず、すっとんきょうな声を出してしまう。


「むむぅ…やつなら我らの望みを叶えてくれると思ったのだが…」

「…あいにくボクはサンタクロースでも神様でもないんでね。何でもかんでも願いを叶えるなんてことは不可能です。はい」

「…ん?…もしや…お前が…夏波…いやいやいやいや!そんな訳なかろう。奴ほどの者がこんな我らの前にひょこひょこと…!」

「あの、かなり傷つくんで。やめてもらっていいですか?」


ああ?さりげなくけなしやがってこの野郎。ビーフシチューにすんぞ?


「…では、やっぱり…お前が…」




「ああそうだよ、悪いか?魔物の目の前にしゃあしゃあ現れる蒼さんで」

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