第52話 蒼vsオブラート ぱーとつー
「くっ!」
刃と刃がぶつかり合い、甲高い金属音が虚空を駆け抜ける。
「ドレニアル・トゥエニスタ!」
「ミカイル・ラーミシェル!」
お互いの切っ先から放たれた魔法がぶつかり合い、爆発する。
「らああぁぁぁぁぁ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉ!」
それぞれ刃が交錯し、火花が散る。
「っ!」
「がふっ」
相手の剣を下にはらい、その腹に蹴りを決める。
うめき声を出しながら、オブラートは体勢を整える。
…まさか…ボクとオブラートは昔、知り合いだったのか?…いや…でも、なら互いに互いの事を知らなかった?
少なくともボクの記憶にはオブラートの姿はない。
それに、魔力移植?魔力を移すことだとは思うけど、少年時代オブラートから出た魔力は確かに光魔力だった。
それをボクに移植した?何の目的があって?
あ~、だめだ、まったく訳がわからない。
斬撃を受け止めながら、空中で体を回転させて切り下ろす。一回だけではなく、その勢いを利用して二、三回ほど。
その全てを無駄のない動きでオブラートはかわしてしまう。
まじで…決着つかんよ。こんなの。
にしてもあの王様っぽい人は誰だったんだろう。ボクのことを抱えてたみたいだけど…いや…ウチの親とあんな上流階級の人に関係があるとは思えないし…。
それに側近のあのおっちゃんだってめっちゃ慌ててたし…、ねぇ。なにか急ぎのことだったのだろうか。オブラートの魔力をボクに移植することが。
でも魔力がなくなったら生き物は死ぬんじゃなかったっけ?あの感じだとオブラートの魔力は全部抜き取られているだろうし。
ならなぜ、オブラートは生きているんだ?
そういや、オブラート。どっかわからない建物の中で泣いてたよな。「僕の大切なものをとられた」って。多分それは魔力のことだと思うけど…やっぱり何でオブラートは生きて…。
「っと危ない!」
物思いに耽っていたら危うく両断されそうだった。危なし危なし。
それに今、オブラートが持っているのは闇魔力だ。光魔力を持っていたオブラートが、いつどこで闇魔力を?
それに、闇魔力は人間には扱うのが難しいって前にターシャが言ってたよな…。
「ガナミアクリ・ダークネス!」
「…ぁっ!?」
オブラートが魔法を行使した次の瞬間、辺りが闇に飲み込まれた。当然、視界が開ける訳もなく、手がぼんやりとしか見えない。
「くそっ」
思わず悪態をついた。闇の中なんてオブラートの独断場じゃないか!罷業や!せや!罷業や!
「しかし!ゲームで鍛えたこの聴覚をなめるな!」
かすかに音がたった場所に向けて剣を振るとキンっと手応えがあった。この感じはおそらくオブラートの剣だろう。
ゲームをしていると耳が悪くなる。
子供がゲームばかりしているそこの奥さん。そう思っているでしょう。しかし!ゲームによって聴覚が鍛えられる場合も存在するのです!
イヤホンやヘッドホンを通して、周囲の足音や気配を感じとる。これを日常的にやっていると現実でも大いに役立ちます。頭の片隅にでも置いといてくださいませ。
「これが目隠ししてゲームして、世界ランク50000位に入った実力じゃて!」
後方から物音&気配を察知!剣を後ろに回すとやはり手応え。それを横に払って一歩前に進み、踵を返す。
「…っち、気配を消した」
さすがのオブラートさんでもこうまで攻撃を防がれてしまったら攻撃方法を変えるだろう。しかし、ボクが予想していたのは立ち回りや魔法の行使。まさかオブラートが気配を消してくるとは思わなかった。
「カベ○ラかよ、『察知』」
足音を消せる、ランクマでのピック率の高いキャラを思い浮かべながら魔法を使う。
察知…感じと読み方が対して変わらない魔法。その名の通り、周囲に一時的に魔力の波を放出しその魔力の跳ね返り具合から物体や人などを見つけ出す初歩的な魔法。
原理はコウモリの出す超音波によく似ている。
「横か!」
少しだけ、魔力が横にそれていた。つまりそこに何かがあるということ。
普通なら電柱や草などにも反応してしまい使えぬ魔法だがここは大気しか存在せぬ場所。この空間で察知に引っ掛かるとすれば…オブラートしか考えられない。
「っん?」
だが、そこには何の手応えもなかった。確かに察知に引っ掛かったはずなのに!
「ドウェイニア」
正面からかかる冷ややかで残忍な、しかしどこだかなにかを噛み締めるような声。
「がぁっ!!」
全身にとてつもない圧力がかかる。おそらくこれは重力魔法だ。対象の周りの重力を操り、地面に向かうはずのそれを押し潰すような形に変える。
まずいって!このままだと!…炸裂する!潰れる!
「おぁぁぁぁぁ!」
それに逆らうようにして内から力を込める。そうしてある程度時間を稼いだら…。
「ドウェイニアぁ!」
同じ魔法を行使。オブラートは外から内へと圧がかかるようにしたがその反対、内から外に圧をかけ魔法を相殺させる。
はぁん!と風船が破裂するような音と共に辺りを覆っていた闇も消滅する。どうやら効果が切れたようだ。
…
「…手加減した?」
「…だから?」
「あんな無防備の状態のボクをお前が殺し損ねることなんてないはずだ!それこそ、その剣でやった方が確実で早かっただろうし!」
「…」
オブラートは目を背けた。しかし、蒼はその視線の先に移動する。
「本当に…殺す気が…あったの?」
「…」
「オブラートこそ…思い出しかけてるんじゃない?ボクが記憶に干渉したことで、鮮明に」
「何を言って…むぐっ」
「んっ」
オブラートからすれば予期せぬ攻撃だったのだろう。その口を、蒼自身の唇で塞がれるなど。
「ボクだって、すべてを思い出した訳じゃない。君に何があってボクに何があったのかだって。でも、君の戦い方をみて…思った。昔、実際に会って。一緒に手を繋いで歩いたんだって。」
「…やっぱり、そうなのか?お前が…あの時の…」
「そう…だと思う。確証は無いけどね」
しばらく、二人は息のかかる距離で見つめあった。
ヤヴァイヤヴァイ、何か展開がおかしい気がする…




