第45話 蒼さんの日常ぱーと1
まぁそんなこんなあり、ターシャがイヤリングをもらったのは謎だったが無事(笑)に解決し、ボクらはスーパーに向かうのだった。
「えっと…なにがいいかな…」
何せ三日分の食材を確保しなくてはならないのだ。
そりゃ毎日買い物しに来ればいいが…だるい。今日一日でいっぺんに買ってしまいたい。
となると、使う材料も少なくなおかつ満足感のあるものでなくては…。
「人が悩んでる途中に勝手にプリンを入れるのやめてもらえん?」
ボクが野菜とにらめっこしているなか、微かにカゴの重量感が増した。ちらりそちらを見やるといつの間にかプリンが混入している。
まぁ馬鹿高いやつじゃないのがせめてもの救いなんだけどね?
「よいではないか、今回はわらわはお主の命の恩人じゃぞ?これでも感謝の気持ちが足りんくらいじゃ」
「それ、ボクの命がプリンと同価値って言ってない?ねぇ」
「いや、お主の命は大切じゃ。う~ん大切じゃ」
「なんか毒がありげな言い方だねぇ」
レインが突っ込む。
まあ冷蔵庫の中を漁るほどターシャはプリンが好きみたいだし、今回はお礼もかねて買ってあげるかな…。
「レインは?なんかいる?」
「う~んとねぇ、じゃあこれかな?」
レインがしゅたたた!と駆けていき戻ってきた時に手に持っていたのは…
「め、めざし…?」
なんと言うか…予想とは違った。レインだったら高級サラダとか買いそうなのに…えぇ?めざしぃ?
「あ、いやぁ。私が食べる訳じゃないよ?カイナの大好物だし」
「ぴきゃっ」
カイナが嬉しそうに彼女の頭の上でぴょんぴょんする。好物がめざし…猫じゃん。
にしても見なさいターシャさん!あなたとは違って大親友のために買うんだよ?自分の物はおねだりしないで!ちゃんと見習いなさい!もお!
「じゃあレイン、何か食べたい料理ってある?」
「『あなた』の手料理ならなんでもいいよぉ?」
レインが顔を赤く染めて体をくねらした。
レインに対する好感度が下がった気がする。
「ん~?じゃあもやしっこ炒めオンリーでもいいの?」
「ちょとぉ!?」
三人の高い笑い声が響く中、それを見つめる同じく三つの影。
「あれ…確か『夏波 蒼』先輩…だよな?」
「あぁ…さっきも蒼って呼ばれてたし」
見つめる三つの影の招待は蒼の中学生時代の後輩であった。
「俺の知り合いの先輩からメールで教えてもらってたけど…あれマジで女じゃん」
「女装とは思えないくらいの女顔だしな」
「あれは確実に、100%女だと思うな」
ものの見事に的中しているのだ。受験を控えた受験生はどうしてこんなにも勘が良いのだろう。その力を是非とも受験で生かしていただきたい。
「でもその横見てみろよ、チョ~可愛くね?」
ターシャとレインのことである。レインは縮んでいるしターシャはもとからロリだし…幼女だと思われても仕方ないだろう。
「でも俺は蒼先輩に軽蔑の眼差しを向けられながら蹴飛ばされたい!」
「え…お前そっち系?」
「おいおいマジかよ」
一人のドM発言に二人が若干引く。
「でも、蒼先輩。昔っから女々しかったからな」
「本人は無意識らしいし、それを言われることも嫌ってたしな」
「それを今はポニテにまで髪の毛を束ねて…マジで女になったんちゃう?」
「な・ん・の・は・な・し・で・す・か・?」
背後からかけられたその声を聞きまるで古びた扉のような音をたてながら三人は振り返った。
「一部始終、ばっちり聞かせてもらったよ」
「「「蒼先輩ぃぃぃ!?」」」
障子に目あり…なんとかに耳ありってね。ったく、人の噂話なんてするんじゃないよ。その内の何個かは正解だったけど…。
「先輩なんと言うか…かわいっでべらっしょぁっ!?」
それ以上続けたら、次は頭がなくなっていると思え。いいな?
手から紫色のオーラを出しながら手刀を決めおぞましい笑いをしているボクがそこにいたらしい(ターシャ談)。
「久しぶりだね、幸太に颯斗に……」
「…」
「…えっと…」
「…」
「忘れた…まてまて、思い出せボク!」
「…」
あと一人、名前が出てこない。こちらが間を開ける度に表情が『喜』から『哀』と変化していく後輩の姿がなんだか面白い。
「あ~、太郎か」
「そうですよ!名前の例によく使われる太郎です!」
「いや~、ごめんごめん。すっかり忘れてたよ」
「俺…改名しようかな…」
天井を見上げて目の縁を濡らし始める太郎君、本当にごめんね…。
「『そんなことより』、先輩。どうしたんすか?その格好。あんなに女子女子言われることを嫌ってた先輩が…その髪も…」
一部、太郎君が傷ついているようにも見えたが無視しておこう。
「あぁ、これね?いろいろあって…まぁ家庭の事情ってやつ?」
あの魔の母親と地獄の父親のせいである。こういうことに絡まれたくないから髪切りたかったのに…はぁ。
「そうすか、なんか迷惑かけてすみませんした。それじゃ俺達はここで…」
「んん?あ、うん。じゃあね」
手を振って別れてしばらくたち、かすかに後ろから気配を感じそちらに目をやるとこの三人組はまだ追ってきていた。
面倒くさいので威力を絞った波翔をお見舞いしておいた。




