第43話 アババババっ!
「はぅ…が…」
そのリーダーらしき男を見つめたとたんに両目に激痛が走った。まるでどぶとい何かで目を突き刺されているような痛みだった。
「ほぅ…今ので発狂しなかったやつは久しぶりだな。相当戦いの場を踏んできているな…」
「そっちこそ…こっちを見て驚きも感じないことが不思議だったよ」
目から涙が滲み出た。めっちゃ痛い。
この男は子分が次々とやられていくのを見て顔色一つ変えなかったのだ。あたかもそれが当たり前のように。
「ん?回復魔法を使わないのか。珍しいな」
「うるさい!」
目をごしごしとこすり、足を引っ掻けて杖を手に取る。
「あ゛…がっ…」
しかし激痛が再び走った。次は目ではなく胸の辺りに。スコップか何かでえぐられているような痛み。
「どうした?持病が悪化したのか?ははっ!」
「雷空!」
「どわっ!…ぐわっ」
嫌みな煽りにムカついた為、極限状態での魔法を発動。上級魔法『雷空』。
派翔をレベルアップさせたものが雷翔。雷翔を更にレベルアップさせたものが雷空だ。
雷空は衝撃波で相手を吹き飛ばした後、近くの壁や床などのオブジェクトに雷の電撃で叩きつけるという電気鰻でもびびりそうな技である。
「ふん、なかなかやるじゃねえか」
男は床に叩きつけられた時にでも口の中を切ったようで口の端から血を流していた。
不思議なことに男をぶっ飛ばした後からはあの激痛は生じなかった。
「まさか…その手の能力者?」
今までにも様々な能力者と戦ってきている。レインは天候を一時的に操ることができたし、麗奈は霊力を思うがままに使える。オブラートは闇の力を。
そういったように、またこの男も何かしらの能力者である可能性が高い。
「ふん、気がついたか。なかなか勘のいいやつだ。種明かしをしよう、俺は『痛苦魔法』の使い手だ」
「『痛苦魔法』…」
前にターシャから聞いたことがあるぞ、この魔法は闇魔法の一種。その名の通り痛『くて』苦『しい』魔法だ。
「ただ単に殺すよりもこちらの方がより自分のやったことを後悔する。だが政府は死刑を廃止して俺を雇ったりはしねぇんだな」
「だってそれ拷問だもん」
確か中三の公民の授業で習った気がする。憲法か法律か忘れたけど今は拷問は駄目なんだよね。
「まあいい、目的の物は見つけたからな。まさかこんな廃れた場所に置いてあるなど思いもよらなかったが…」
「…」
そうか…さっきおじいさんが「私のところにもきた」って言ってたよな…。もしかするとその目的の物を探しにここら周辺の宝石店を探し回ってたのか?
「くっ!」
ならば…ここで止めるしかない。これ以上の被害を防ぐためにこいつはここで…っ
「バーン・アリソマリス!」
上級火炎魔法、バーン・アリソマリスで巨大な下級を作り出しそれを空中で蹴り飛ばす。
「なにっ…ぐほぉあっ!」
火炎はそれを避けきれなかった男にクリーンヒット。男を吹き飛ばし壁に叩きつける。
「ここでっ!」
一気に距離を摘めようとした時乾いた銃声が響き渡った。
辺りの空気が一部を覗いて氷のように冷え静まった。
「あぐぅ…」
油断した、ついついリーダーらしき男が魔法を使っているから優先的に攻撃してしまったが、隙をついてあと一人の少女を拘束している男に撃たれた。
「らっ!」
「あぐほぉぼっ!?」
体を回転させた勢いで杖を投げつけ華麗なコントロールで男の顔面だけにクリーンヒットさせる。少女を拘束していた男は吹き飛び意識を失った。
「本当に回復魔法を使わねぇんだな」
「く…」
額に脂汗が滲む。弾は右胸を貫通したようで呼吸するたびに血液が逆流して口から吐血する。服もだんだん赤に染まってきている。
「…っ」
「立っているだけがやっとってところか?まぁ普通はそれだけで意識がなくなるもんだがな。化け物か?」
男はこちらに歩みよりさっそうと殴りかかってきた。回避も間に合わずなす術なく床に横たわってしまう。
「最高の殺しをご覧入れよう」
それを聞いて周りの人達は止めようとするがいつの間にか復活していた三人によって阻まれてしまう。
リーダーらしき男はショーケースの宝石のライトアップに使われている電球のコードを引きちぎった。
「おい、誰が水持ってこい!」
「はいっ」
一人がどたばたとその場を離れしばらくするとあふれそうな位水の入ったバケツを持ってきた。
「よし、かけろ。ばか!俺じゃねぇ!あいつにだ!」
「あぅっ」
正面から思いっきり水をかけられ思わずバランスを崩したところに男の蹴りが入り完全に倒れた。できた水溜まりの中で寝そべるようにして。
「ふふ…せいぜい苦しんで死ね」
男の不適な笑い声が聞こえたかと思うと一瞬のうちに全身に激痛が走った。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
そう、感電させたのだ。水溜まりに電気が漏電するコードをつけて。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
全身の臓器が腹を突き破って飛び出して来そうだ。まずい…意識が。
初めはとてつもない痛みが襲ってきていたが、今は眠くなるような、気を抜いたらうたた寝をしてしまう時の状況によくにていた。
意識を失ったら死ぬ、それまで耐え続ければ…
刹那、店の中にいく筋まの雷が閃光を放った。




