第37話 燃える鎖、揺れる炎
「…ふぅ…なかなかいい運動させてくれるじゃない」
椎名は空中で膝をつきながら、肩で息をしている。
「いいな…そっちは撃たれないで…」
悪さをしている椎名は撃たれないのにそれを止めさせようとしている私が撃たれるなんて…理不尽である。
そのお陰でどれだけ魔力を消費したのか!わかってんのか!
「ま、そろそろけりをつけさせてもらおうか。私も本気でいかせてもらう」
椎名はその二本の鎖をうねらせ、天に放り投げた。
それは地球の引力を無視してその場にとどまり、やがて円を描くようにして周り始めた。
「な…」
そして、バチバチと紫色の稲光を放ち初めそれは炎を纏った。
「鎖が…」
今まではただの鎖だったのに…それが燃えているのだ。しかも、それを椎名はゆうゆうと掴んでいる。
「そんな意味不明な魔法使ってる癖にこの程度で驚いているの?」
「やかまし!」
こちとら魔法使い初めて何か月だとおもってんだ!そういうセリフは熟練の魔法使いにいいなさい!
「でえは行かせていただくとしますか」
椎名は軽く舌なめずりして瞬く間に距離をつめてきた。
「あっつ!」
繰り出された鎖を紙一重で避けるが、もちろん燃えている鎖。攻撃範囲が広く、直接触れなくても熱気が襲ってくる。鎖が一本なら避けるのも容易だったのだろうが、二本とも燃えているあげく、避けた先に先にと攻撃を仕掛けてくる。
「まだまだ行くわよ!」
椎名はぶんぶんと鎖を振り回し、貫こうとしてくる。マジで鎖が生きているミミズにしか見えなくなってきた。
「ミミズ成敗!らぁっ!」
鎖をミミズだと思い込んだら謎な力が湧いてきた。その謎の力を糧に鎖を蹴飛ばし、鎖の攻撃範囲外に間合いを開く。
「隊長ぉ!弾切れですぅ!」
「リロードしろ!リロードもしらんのか!」
「知ってます!弾切れです!」
「弾がなければリロードすればいいのに」
何か下でマリー・アントワネットみたいな台詞を吐いている特殊部隊隊長がいるのだが…気にしないでおこう。
「間合いの取り方が上手いのよね。絶対訓練積んでるでしょ」
「2ヶ月…」
間合いの取り方、それは数々のゲームから学んだ。特にFPSだ。まずショッ…(割愛!)
「2ヶ月でそれって、化け物?」
「化け物を退治するのが私の役目でして…」
杖をくるくると回す。端から見ればただのルーティーンのようだろうが案外違ったりする。
魔方陣展開式最上級魔法第三式『業火』。
多大な魔力を消費する反面、恐ろしい威力を持つ最上級魔法だ。
「宿りし闇の力よ、私の杖に共鳴し力を与えん!『業火』!」
軽い厨二病チックな呪文を唱えつつ、杖で描いた巨大な魔方陣に魔力を注ぐ。
するとその紫色に見える魔方陣はぼんやりとした光を放ったかと思うとその中心から、溢れ変えるような炎が吹き出した。
「最上級魔法『業火』…比喩なしでヤバいけど…」
椎名は二本の鎖を掴み、2つ円を描くようにして回転させた。
「私には効かない」
『業火』が鎖と激突した瞬間、それはまるでブラックホールが光を飲み込んでいるかと錯覚してしまうように見えた。
「それを…待ってた!反闇底!」
椎名が『業火』を鎖で吸収している隙に別の魔法を展開する。
反闇底…それは闇底で飲み込み、保管しておいた物を放出する。というもの。
さっき飲み込んだのは…銃弾の嵐だ。
「っ!」
椎名の息を飲む声が聞こえた気がするが、銃弾が飛び出す銃声で掻き消されてしまっていた。
「特殊部隊員…どんだけ撃ったんだよ…」
銃弾の嵐が放出され続けること約十分。ようやく弾が切れた。さすがの椎名もこれだけ撃たれれば致命傷を負っていてもおかしくはない。
「さてさて…」
銃弾の煙の中を掻き分けているとふと、手になにかが当たった。
それに目をやると体のあちこちから出血をし、死人のような顔の色をした椎名の姿があった。
「どうするかなぁ…」
私、殺人罪にならないよね?そう心の中で呟いた時だった。
「苦しみを…味わえ!」
いきなり目をかっと開いた椎名はどこからか取り出したのか手のひら位のサイズの注射器を持って私の首に突き刺した。
「あぅっ!?ああぁぁぁ…」
抵抗する間もなく注射器の中身を注射されてしまった。
「これで…私の用は…すんだ…」
椎名が再び目を瞑ると二本の燃える鎖が彼女の体を包み込みやがて小さくなり消滅した。
「がふっ!?」
そんな死に際の芸術に見とれていたら、いきなり口から血が吹き出した。
「あぐ…」
そして視界が歪んだ。直線など存在させないと言わんばかりに世界が曲がる。
「ぅぅ…」
さらに襲う倦怠感。膝から力が抜け自由落下を始める。
「…て、ん…そ…ぅ」
残りの魔力と意識を集中させ、転移魔法を使用する。




