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第34話 闇に堕ちる

「紅華、早く医務室に!」


美久がぴょんぴょんして催促するも、医務室に行って全ては完結しないしそんなことで傷は治らない。ボクの活動エネルギーは魔力だ。しかし、肝心の魔力は椎名に根こそぎ持っていかれたし。完全に補充しようにも、おそらく相当時間がかかる。このクラスの者からもらうのもいいが、全く足りないだろうしそもそも彼ら彼女らの命が危ない。


はい、詰んでおります。


「お~まぃが~」


死にそうな人が絶対に言わなそうなセリフを吐き捨て、解決策を試みる。


椎名の目的は何かわからない。ボクの魔力を使って世界侵略でもするのか。圧倒的力を見せつけ社会的地位を手に入れるのか。まぁそんなこと知ったことではない。

とりあえず、椎名は敵だ。殺すか本殺しにするか。考えておこう。


「ぐぅぁぁ!!!」


何とか杖を支えに渾身の力で立ち上がる。そのまま、杖をミカナ・ライルに変形させ火属性魔法でその刃を熱する。

この位のことなら今、すこしクールダウンを入れた間にたまった魔力で簡単にこなすことができる。

アニメや漫画の世界でしか見たことのない異様な光景にクラス中が感心したようにこちらを見つめていた。


「あまり見つめないで、手元がくるうから」


そして、刃が赤く染まった剣をためらいもなく鎖が貫通した場所に押し当てる。


「っ!!が…ぅあ…っっ!!!」


熱い熱い!熱いっつの!漫画とかでやってるようにやってみたけど、実際はものすごい地獄。気絶しそう。


じゅうじゅうと皮膚の焦げる匂いが十万し、息を飲むもの。悲鳴をあげるもの。発狂するデブなどと沢山のバリエーションのリアクションを傍目に、焼き止血した場所に保護魔法を展開しておく。


「止める!」


杖を魔剣に変形させて、教室を後にする。


「ちょっと!紅華ぁ?」


美久が引き止めようと試みたが、あたかも聞こえなかった風を装いまっすぐに歩く。


「っ…」


そんな中、1人舌打ちをして共に教室を出た者がいた。そう、自称伝説の闇魔法使いで厨2病なオブラートである。


「ちょっ?オブラート?」

「いいから来い!」


そのまま、腕をがしりと掴まれ皆の目が行き届かない場所へと連れていかれる。


「蒼、貴様そのまま戦闘を挑めば確実に死ぬぞ。幸い、数刻前には止めを刺されなかったからいいが、次に会えば確実に殺される」

「わかってるよ」

「ならなぜ己の魂を大切にしない、限られた命だ。一度しか使えないのだぞ?」


オブラートが血相を変えて睨み付けてきた。


「わかってるって言ってるだろ?確かにボクは次戦えば確実に死ぬよ。だけど、ボクの魔力を使ってやつが世界侵略でも企んだら?死ぬのはボク1人じゃ済まない。世界中の人が絶望を味わい、死を目の当たりにする。それならば、ボク1人の命で…」

「蒼、我らはなそれを逃げと言う」


発言はオブラートによって切られてしまう。


「自分が皆が苦しむのを見たくないからそういうことが言えるのだ」

「ち、違っ」

「兎に角、今戦っても貴様に勝算はない。一度魔力を回復させろ」

「…」


オブラートははぁ…とため息をつき、ボクを睨み付けた。


「貴様に覚悟があるのなら、我の魔力を分けてやってもよい」

「オブラートの魔力?」


魔法には誰もが知っているように属性というものがある。火、水、土、風、氷などのことをいう。それぞれの魔法の相性などは割愛しよう。

だが、火や水などに分ける前にもう二種類属性は存在する。そう光と闇だ。一般的に光は闇に打ち勝ち、闇は光に打ち勝つと某pocket怪物とかいうものなどからすっかり定着しているようだが実際は違う。

まあ考えていただきたい。真っ暗の中に道具なしで光を生み出すなどまず不可能にひとしい。しかし、光の中に闇を生み出すのはごくごく簡単なことだ。たとえ少しでも地面に小石でも転がっていたらそれだけで影という闇は生まれる。

ようするに闇は光に打ち勝ち、光は闇に打ち勝てないということだ。


そして光属性魔法から火、水、土、風、氷といったように別れていくのだが、闇魔法はそれだけ。闇魔法は闇魔法単体なのだ。


そして、闇魔法を使うのにはよほどの鍛練が必要らしい(ターシャ談)。その闇に心が飲み込まれぬように精神、肉体とともに強靭でなくてはいけないらしい(レイン談)。つまり、オブラートは一歩間違えていれば闇に飲み込まれていたのかもしれない。




さて本題に戻ろう。


オブラートは今なんといった? 若干決め顔で「我の魔力を分けてやってもよい」っつたよな?

馬鹿か!まるきゅーかお前は!ボクには闇魔法の適性がない(らしい:ターシャ談)んだぞ?そんなボクが!闇魔法を使ったらあかんやろ!ぜーったいあかんやろ!それこそ死ぬわ!


「まてまてまてまて!!ボクが闇魔法を使えるはずがないだろ!ボクは光属性魔法しか使えないっつーの!」

「誰が決めた?」

「はい?」

「貴様に闇魔法の適性がないなどと誰が決めた。まだ一度も使っていないだろ」


正論である。ボクに闇魔法の適性がないと言ったのはターシャでボクが試してみたことは一度もない。


「確かに…」

「もしも貴様に闇魔法の適性があるのなら貴様は新たな力を得ることになるだろう。光属性の魔法の使い手であり闇魔法の使い手であるなど、どこを探してもそうそう………」

「そうそう?」


オブラートがそうそう言って黙りこくってしまった。


「…いや、いたな。あいつか。まぁいい。…覚悟はできたか?」

「なんか勝手に話進んでんだけど?」


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