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第33話 ?何で知ってんの?

「はっ!」


そんな風にミミズばーじょんに拒絶反応を起こしていると、椎名が手に持っている二本の鎖をこちらに投げつけてきた。


「くっ、ミカサ・ライル!」


瞬時に魔方陣から魔剣を取り出し、迫り来る鎖を弾き返す。

しかし、その隙にミミズもどきの鎖が地をはって距離を詰めてきたので、その場でジャンプして宙を舞う二本の鎖にターゲットを定めた。


「早いっ!」


だが、その二本の鎖は先ほどよりも速度を増していて鎖を叩ききることはおろか、攻撃を防ぐことまでもが危うくなっていた。


「それだけじゃ終わらないよ!」


そんな防戦一方なボクに更なる追い討ちをかける椎名。地面から顔を出しているミミズもどきの鎖がそのキモい体を伸ばして追撃を始めたのだ。


「さすがに四対一はきついって!スパリアム!」


転移魔法の初級編のこの魔法はボクが使った人生初の魔法でもある。


「消えた…、転移魔法か。だが、気配は消えてない、もろに見えてる!」


そして、見事に読まれていた。鎖から距離をとり、椎名一本に目標《ターゲット》を絞ろうと試みたのだが、案の定その場所には楔型に変形した鎖が配置されていた。


「が…」


考えが、甘かったようだ。


「ふふふっ、油断したでしょ?」


鎖で腹部を貫かれたボクの顔を椎名は撫で回す。


「ぐぬぅ…」

「そんなに無理しないの、体によくないわよ~」

「あぐぅぅ!」


その言葉とは裏腹に椎名は鎖を回転させ更なる苦痛を与えてくる。


(やべ…意識が…)


徐々に視界が狭まり、明るくなったり、暗くなったりしていた。



「この力が…私のものに!」


そんな椎名の声を聞きながら、意識を手離した。










「沙与~、蒼君しらない?」

「え?さっきまでいなかったけ…」

「いや…それがいないのよ。お昼休みになってから」


手作りであろうお弁当を頬張りながら沙与は美久の質問に答える。美久は腕を組み、なにかを必死に考えているようだった。


「やっぱり心配だわ、探しにいか…


――――ガァァァァン!


「っ!?」


しかし、美久の言葉は沙与に届く前に教室に響き渡った爆音によって消されてしまった。

クラスの全員が音のした方に目を向ける。だが、そこにはものすごい砂ぼこりが舞っていて何が起きたのか理解することができたものはいなかった。


「ふぅ…、ややこしい構造だな。まったく…」


クラスの中が静まり返っているなか、低く冷徹な声とともに鎖の擦れるじゃらじゃらとした音が聞こえてきた。


「これに用はない。お前らにくれてやる」


その言葉とともにずざざざと音をたて、砂ぼこりの中から教室の床を滑り現れたのは…


「ティナちゃん!!!」

「っ!!」


今や誰もが知る少女、ティナだったのだ。

しかも、ただのティナではない。腹部を血で染め上げ、額に脂汗をかき、出血のせいか顔を蒼白にしたティナだった。


「そいつの魔力は全てもらった。後の処理はお前らに任せるぞ」

「だ、だれだ!」


皆、声の主に罵声を浴びせる。誰一人とそれに参加せぬものがいないのが不思議なものだ。


「し……い…なぁぁぁ!」


そんな中、突如雄叫びを上げて立ち上がったティナ。木製の杖を床に立て辛うじて立っているといったところだ。


「おやおや、まだ魔力が残っていたか。厄介だね」

「だまれ!波翔!」

「やだね、雷翔」


カッ!と辺りに閃光が飛び散り、次の瞬間に宙を舞い教室の壁に叩きつけられる少女。


「どぉ?自分の魔法で殺られる気分は。…その少しの魔力も、頂いておくよ?」


砂ぼこりの中から華奢な腕が飛び出し、それは壁に背中をつけ肩で息をするティナに向けられた。


「…ぐぅ…ぁ゛…ぅ…」

「いただき、ありがとねー。こんないいものくれちゃって!感謝するよ!」


そう嘲笑うようにして再び爆音を発生させながら声の主は消えていった。








『蒼!起きるのじゃ!蒼!死ぬ出ない!』

「…」

『……仕方ない、お主にはちと悪いが荒療治をさせてもらおう。壊変』


ターシャがそう唱えると、ボクの体はうっすらと光を放ち始め、やがて光は消えていった。


「…ティナちゃんが…」

「紅華に…」

「なんだこれ…なにが?」

「紅華って…あの?」



(っ…ターシャ?)

『おぉ!生き返ったか!』

(なにしたの…さっき一瞬おっきな川が見えて…)

『魔法をかけた、お主が使う魔力が最小限で済むようにな』



…なんだか嫌な予感がする。でも、ターシャが魔法をかけてくれたおかげでだいぶ楽になったんだけど…やべえ予感しかしない。目、開けていい?


「ん…皆…?」


近いわ!特に男子!近いわ!鼻息荒いわ!キモいわ!


「やっぱり紅華だ…、新聞部!号外書け!号外!」

「もう書いてる!『号外!皆のアイドルティナちゃんは我が学校のお姉様!紅華さんだった!』ってな!」

「ちょっ…それは…だめっげほっげほっ!」


新聞部に制止を求めようとするも血が気管に周り、上手く呼吸できない。


「紅華!」


そして現れる救世主、美久が男を掻き分けてボクを抱き締めた。


「いだ!美久!いだぃ…」


重症持ちを…抱き締めないで…。


「新聞部!号外は書かないで!このことは、このクラスの秘密!」

「は?何で?」


コロッと態度の変わる新聞部。学級委員は大変だね…


「このことがバレたら紅華は国に連れていかれて実験動物にされるわ。そしてしまいにはホルマリン漬けにだってされるかもしれない!それでもいいの!」


声を張り上げる美久。



…何故…そんなに知っている…?

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