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第30話 お姉さまはやめて!

しかし、悲劇はここからだった。


翌日からボクが3対1男に襲われ、さらにそれを撃退したことが広まってしまいさらに人が集まり始めた。


しかも、今日の朝に化け物が当たり前のように現れ、当たり前のように女体化して倒したので本日は紅華としての投稿なのだ。


「おはよう!昨日は変態三人囚を倒したらしいね?」

「へ、変態三人【囚】?」


なにやら、前科が10を越えていそうなあだ名だね。


「あの三人、ケンカめちゃくちゃ強いんだよ?よく1人でやっつけたね!」


朝からハイテンションな美久がぴょんぴょんしながら楽しそうに話す。


ケンカが強い変態でも達筆って…なんか不思議な感じするのってボクだけ?


「う、うん。まあ…運がよかったのかな?」

「運だけじゃ、三人もやっつけられないよ!実力だよ!実力!」


美久がボクの紅い髪の毛をわしゃわしゃとしてきた。なんだか嬉しかったのでボクもわしゃわしゃしかえす。


その時だった。


「いたわ!お姉さまよ!」

「え!?どこどこ!?」

「本当!あれがお姉さま!?なんと美しいの!?」

「きゃー!すてきー!」


廊下から溢れんばかりの悲鳴が聞こえてきた。そして、その音源は口々に言うのだ。お姉さま!と。


「お、お姉さま?」


その中には同級生だけでなく、二年生の先輩までいた。


「きゃ!お姉さまがこっちをご覧になったわ!!」


…周りからの視線が熱い。やけどしそうな位に。


「…なにがあったし」


そんな皆の様子を見て、はぁ…とため息をつくのだった。








「視線が熱い…」

「…」

「…」

「…」


授業中も周りからの視線が気になってしまい、まともに集中できない。

ただ変態を撃退しただけでここまで人気はでるのか?それが不思議でしょうがない。むしろ怖いレベル。


「…山…冬山?」

「…」

「冬山!?」

「へ?あ!はい!」


そんな風に自分の思考に飛び込んでいたが、先生の呼び掛ける声に我を取り戻しすっとんきょうな声を出してしまう。

なんだか、男子列から「むふふ…」と言う声が聞こえてきたような気がするが無視しておこう。


「どうした?ぼーっとして…?お前らしくないな」

「そそそうですか?」


バグった。喉がバグった。


「あれか?昨日のことでなんか悩んどんのか?」

「いえいえいえいえ!何でもありませんって!」

「そうか?なら悪かった」


そう言って先生はペコリと頭を下げた。別に頭を下げられるようなことした記憶は無いんだよなぁ。










「お姉さまぁ!!」

「…」


昼休み、ご飯を食べに行こうと食堂に向かおうとしたとき背後から何かが聞こえてきた。

だがお腹も空いているので、とりあえず自分じゃないですアピールをしてみる。


「お姉さま!お姉さま!…紅華お姉さま!」

「…はい?」


名前を出されてしまっては、もう無視はできない。というわけでいやいやそちらに振り替える。


お姉さま!と呼んできていたのは全くの見ず知らずの女子生徒。いわゆる初見さんである。


「お昼!おごらせてください!」

「…えぇ?」


なんども言うようにボクは彼女とは初対面である。


普通、新入社員の人が見ず知らずの別の課の人に「お昼おごらせてください!」と頼むだろうか?…頼む人もいるのかもしれないけど。


「べ、別にお金はあるし…そんな大丈夫ですけど…」

「お願いしますぅぅぅ!」


さりげなく、断ろうとしたが案の定ダメだった。さらにものすごい血相で睨まれ若干引いてしまった。今にも血涙を流しそうな勢いである。


「…」


ボグッ!


なにやら鈍すぎる音が響く。


「…がくっ」


互いに見つめ会うこと数秒間、ついにいろんな意味で折れた。特に足なんてまるで三角定規の90度のところ位にきれいに折れ曲がった。


「こらぁ!なにお姉さまを独占しようとしてんのよ!」

「ふてーやろぉだな!」


というのも、この二人に膝カックンをされたのが原因のようだ。倒れかた+不意討ちと言うのもあるから、そうとうこたえただろう。感謝感激。


「あ、ありがとう」

「いいのいいの、お姉さま。…それより…私達にお昼おごらせてもらえない?」

「お願い~」

「…」


結局、目的は同じだったのか…、女が女を取り合うって…こっちの精神《メンタル》にもくるから…


「お姉さま!」

「お姉さま!」

「お姉さま!」

「お姉さま!」





「もう勘弁してくれぇ~!!」



そんな叫びが、学校を飛び越え空の彼方まで響き渡った。






「…」

「…なんで死んでるのよ」


その日の夕方、部活でテニスコートにいるのだが麗奈曰く魂が飛びかけていて顔面蒼白らしい。

先輩達には蒼のいとこと言う設定で、沙与に無理矢理入らされた。なお、その時は再び先輩達は涙していた。


「…皆からぁ…注目されるって…もういやぁ…」

「…日本語おかしくなってるわよ?」


中学時代もボクは当たり障りなく、静かに過ごしていた。何か話しかけられたりしたら返答したりするけど、基本的には話すことはなかった。それ以前に、どうやって皆とコミュニケーションをとればいいのかわからなかった。


だから、今注目されるようになって死にかけているのだ。

陰キャの鉄則第9条、人の目につかぬようモブとして暮らす。に、反してしまっているのだ。


「はぁ…、もう駄目かもしれん…」

「…お~い、冬山さ~ん、生きてますか~?」


麗奈がこちらの目の前で手をブンブンと振っている。










「紅華ちゃん聞いたわよ!また楽しい【人気者JKらいふ】を送っているらしいじゃない!それも周りから『お姉さま』って呼ばれてるらしいじゃない!」


「ストップ、鳥肌が立つ」


母親、もとい本名「夏波 弘美」が手を胸の前であわせてにやにやしている。これが親じゃなかったら多分ぶっ飛ばしてる。うん。


「ってか誰から聞いたの?ボクの家を知ってる人なんてそういないし…」

「あ~、ターシャちゃんよ。なにやらあお…紅華がおもろいことになってるのじゃっ!って言って一日中監視してたらしいわよ」

「人のプライバシーを侵害すな!」


覗き見じゃねぇか!つかまんぞ!


「まぁいいじゃない、いいじゃない。そんなぷりぷりしないの」

「む…ぐ、ぐぅ…」


妙に反論しずらい。具体的に指図されないとどう反応すればいいのかわからない。陰キャ代表の特徴だ。











「やっぱりそうだったみたいね…」


少女は両手に持った写真を互い違いに見比べていた。


「笑い方、歩き方、口調、癖。そのほとんどが一致した。協力ありがとう」

「いえいえ、私は当然のことをしたまでです」


その隣にいた男は深く頭を下げた。


「さて…彼女のことはわかったし…次は彼ね」


少女は写真にナイフを突き刺した。

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