第29話 慣れたあっか~ん!
「づがれだぁ…」
家のドアを開け、玄関にバタリと倒れ込む。
すると、奥の方からステテテーと颯爽と現れたちっさなレイン。
「蒼ぃ?大丈夫ぅ?」
「大丈夫じゃないから、こうしてんの…」
「そぉ、カイナぁ?」
「ピー」
また新しい鳴き声を覚えたカイナがレインの頭の上からぴょこんと飛び降りこちらにとことこと近寄ってきた。
ほっ…、そういえばカイナは治癒魔法を使えるんだっけ。それならこの疲れも…
「がぷっ」
「…」
…指先にものすごい激痛が走った。
「あびそたはた!?っつ?なあみ!(びっくりしすぎておかしくなった)」
「あぁ!レインん?何してるのぉ?」
「いただだだだだだ!!離してくれえ゛!」
親指を噛むカイナをなんとか引きはなそうとするも、スッポンのように噛みついてしまって離さない。
「むぎゃぁ!!」
あまりの痛みに整体が爆発して、変な声が出まくる。
「カイナぁ、それご飯じゃないよぉ」
「ピ?」
あわててレインがカイナにボクの手が魚肉ソーセージじゃないことを伝えると、カイナは驚いたように親指から口を離した。
「カイナ…お前…実はラスボスだろぉ…」
「ピ!」
涙目でそんなことを言っていると、カイナはあせあせと治癒魔法をかけてくれた。親指とともに全身のだるけが抜けていく。
「あんがと…ってかこれで指を噛んだことはチャラにしてやろう」
「ピィ…」
カイナはうつ向いて、しゅんとしていた。それは反則技である。
「…」
「ピィ…」
「わあった!わあったから!もう落ち込まないで!すみません!」
なんでこっちが謝ってんだろ…。なんか悲しくなってきたんだけど。
「おぉ、お帰りなのじゃ。お風呂沸いておるぞ」
「あれ?ターシャが親に見えてきた…まだ、調子悪いんかな…」
頭がくらくらしているような気がして頭を押さえながらお風呂に向かう。後ろからレインがついてきていることについては…触れないでおこう。
「…はぁ」
体を流して、髪の毛を後ろで結わえ湯船のお湯に身を沈める。
夕方の戦闘で麗奈は最初、あの麗奈Bと戦っていたらしい。そして麗奈Bが逃げた(正しくは少年を助けに行った)のを見て追いかけたのだが、途中で姿を見失ってしまったらしい。そんな中、銃声の鳴り響く場所に行ってみればボロボロのボクがいたということらしい。
「ボクはいつまで戦ってればいいの?」
最近、不安になっていることの一つだ。命を懸けた戦いはいつまで続くのだろうか、と。
「まぁ、がんばりなよぉ」
「他人事だねえ」
と、他人事発言をしたのは他の誰でもないレインである。
前々から一緒にお風呂に入りたい!!と駄々をこねていたのだが、さすがに混浴は気が引けるのでボクが女体か化した時だけゆるしている。
レイン曰く、蒼は女の子の方があっている!、らしい。確かに最近しぐさが女の子っぽいと言われてしまう悲しみがあるのだが…なんともなんとも…。
「蒼?背中流そうかぁ?」
「あぁ…うん、ありがと」
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「は?」
翌日の朝、学校で手紙がたまっていないかと蒼の机と紅華の机の中を確認したのだが…
「冬山 紅華さんへ?」
嫌に達筆な文字で宛先を書いた封筒があった。
「やな予感が…」
恐る恐る恐る恐る超恐る恐る封を開ける。
封の中に入っていたのは、一枚の手紙。それを引き出して、パラパラと開く。そこに同じく達筆で書かれていたのは…
『冬山 紅華さん
単刀直入に言います。僕はあなたの事が好きです。
どこが好きだと聞かれたら、その数の多さに迷ってしまいますが、やはりその笑顔です。
素直な笑いを浮かべるその笑顔。誰とも打ち解けるその性格。その美しく整った顔つき。全てが完璧です。
もしこの手紙を読んでいただけたなら今日の放課後、屋上に来てください。待っています
あなたを世界一愛する者より』
「きんも!とりまきんも!おぇぇぇ!」
これはヤバい。なに?男子が女子に告る時、こんなこと書くん?
しかも、なんだよ!あなたを世界一愛する者って!絶対会いに行きたくねぇ!
「でも…」
まぁ…せっかくだし行くか?さっさと行って終わらせよう。
苦笑を浮かべ、周りに誰もいないことを確認して紅華へと姿を変える。
――キーンコーンカーンコーンキーンコーンカンコーン…
「さて…終わった終わった」
やはり、授業は疲れる。疲れをう~んと背伸びして飛ばす。
「あ、そっか。屋上にいかないと」
机の中の手紙の主がそこに待っているはずだ。待たせる訳にはいかないし。もう行こっか。沙与には先に帰っていて貰おう。
ボクはすぐ近くにいた沙与に用事があると伝えて、1人屋上に向かった。
「ふぅ…ようやくついた。やっぱり階段は嫌いだよぉ」
学校の階段を全てエスカレーターにせる革命でも起こそうかな?
ふぅ、と額の汗を拭いながらガチャリと屋上への扉を開ける。
差し込む光に一瞬目が眩むも、はっきり見えたのはその先に空を見上げる男子高校生の姿だった。彼はこちらの存在に気が付いたようでさわやかな笑顔をつくって振り返った。
「冬山紅華さんですね?」
「え、えぇ。そうですけど…」
「お手紙ご覧になりましたか?」
あー。あのキモイ文書が無駄な達筆で書かれたあれね。
「ええ、見ました」
「なら話ははやい。 僕と…付き合ってください!!!」
男はその場で深々と頭を下げた。しかし、そこに下るのは
「いやです」
南極の氷のように冷たい言葉だった。
「なっ!?ど、どうして!?」
彼は予想外の返答に勢いよく顔を振り上げた。
単刀直入に言おう。馬鹿か、こちとら初対面だぞ?初対面で早速お付き合いって…大阪のひっかけばしか何かか?おまけにボクは半分男だ。ボクはホモじゃない‼
「別にボク」じゃなくてもいいでしょ?さっきから見てるとあなたは人の心をつかみたいっていうか、体目当てみたいだけど?」
「ギック!!」
どうやら図星のようだ。道理でさっきから人のやらしいところばかり見つめてた訳だ。
「じゃあ、ボクは失礼しますね」
そう言ってドアノブに手をかけた時だった。
「小野!小塚!プランBだ!」
男がそう喉を張り上げるといつの間にか現れた二人の男に腕をつかまれ身動きが取れない状況になった。
「っく、は、はなせ!!」
もちろんがっしりとつかまれているので、そう簡単に振りほどけない。
「せっかく平和的にやろうと思ったのに…こうなったら力ずくにでも俺の女になってもらうぞ」
そう言って彼はボクの顎をクイと持ち上げて、その手を別の場所に移動させた。
そこは、男が許可なしに触ってはいけない場所。
「くっ!ちょっ!どこ触って!!」
こいつ、がちの変態だ。こういうやつにはお仕置きをしなくては!
「波翔」
「「「うおおおおおおおおお!?」」」
対、スナイパー戦に使った魔法を唱え、男どもを吹き飛ばす。運よく彼らは近くの壁に頭をぶつけて意識を失った。
「変態はばぜろ」
そう言い残して取れかかった制服のボタンをつけながら屋上を後にした。




